12人の怒れる男

言わずと知れた古典的名作。

順序が逆だが、だいぶまえに中原俊監督の、本作をモチーフとしている『12人の優しい日本人』を見ていたこともあり、ストーリー展開の予想はついた。

当然ながらバッググラウンドがバラバラな12人の陪審員。それぞれの意見は食い違う。

最初は11対1で有罪(=死刑)が圧倒的に有利。しかし、全会一致じゃないと判決はくだせない。
唯一、確証はないながらも有罪に反対する、理知的なヘンリー・フォンダ(Juror 8)が、証人の疑わしい証言を少しずつ覆していく。

やる気がない陪審員らは、この件は有罪に決まってるのに、この男は何を言っているんだ、まいったまいったという態度。

しかし、そもそもは疑わしきは罰せずが鉄則だから、証言に対して合理的な疑いがあれば、無罪にするに足りるわけだ。

以下、ネタバレあり。

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無罪派(厳密には「有罪と確証が持てない」派)に異を唱えてくる奴らは、口先で喚き散らすばかり。大声を出したり、他人を貶める発言をしたり、時間の無駄だと根拠なく言い募ったり。

ただ、自分がその場にいたら、何てこいつらは馬鹿なんだと思って見下すような態度をとるか、もしくは相手の発言にカチンと来てケンカ腰になり、冷静な議論ができなくなるか。

ヘンリー・フォンダは熱くなり過ぎずに、冷静に議論を進める。
これはやはり、議論に慣れている国、アメリカの話だというのもあるだろう。
時代は、昭和でいうと20年代。日本とアメリカの当時の差を感じる。

一番強い証拠となっていたのが、事件現場から高架の線路を挟んだ向かい側に住む女性の、殺人現場が見えたという証言。

それを覆したのは、ヘンリー・フォンダの勇気を買って、最初に無罪側に移った老人(ジョセフ・スウィーニー)の観察力と視力の良さだった。

タイトルに「怒れる」とある通り、冷静な議論がテーマではなく、感情的な陪審員たちを少しずつ動かしていく過程に面白みがある映画。

ただし、有罪派の最後の三人のうち二人はただ喚くだけで、敵としては力不足。残りの一人は冷静に有罪を支持し、弁も立つ男だったが、もうちょっと議論を闘わせられる流れのほうが良かった。前半は緊張感があったが、後半はどどっと流れが無罪側に来て、やや物足りなさを感じた。

とはいえ、ヘンリー・フォンダ以外で一番印象に残った登場人物は、最後まで残った男(リー・J・コッブ)。観ながら、もっと頑張って盛り上げてくれと祈ったが叶わず。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・パッケージデザイン。
12人の怒れる男
これは、かなりシンプル。

原題: 12 angry men
製作: ヘンリー・フォンダ / レジナルド・ローズ
監督: シドニー・ルメット(Sidney Lumet)
脚本: レジナルド・ローズ
原作: レジナルド・ローズ
撮影: ボリス・カウフマン
音楽: ケニヨン・ホプキンス
出演: ヘンリー・フォンダ / リー・J・コッブ(最後まで残った有罪派) / エド・ベグリー(喚く老人) / マーティン・バルサム(議長) / E・G・マーシャル(理知的な有罪派) / ジャック・クラグマン / ジョン・フィードラー / ジョージ・ヴォスコヴェック(移民) / ロバート・ウェバー(広告屋) / エドワード・ビンズ / ジョセフ・スウィーニー(視力の良い老人) / ジャック・ウォーデン(野球観戦に行きたい)
 
【世間の評価】 ※2016.3.4時点
CinemaScape: 4.2/5.0 (625人)  
Yahoo! 映画: 4.55/5.00 (419人)
IMDb: 8.9/10 (424,673人)
 
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