3iron

春夏秋冬そして春』以来のキム・ギドク作品。男友達の勧めで本作をチョイス。

何よりも、格式高さに圧倒される
脚本もキム・ギドク氏自身が手掛けているが、その発想、構成力に脱帽&嫉妬。

毎度の事ながら、韓国映画には嫉妬させられる。
日本と近い感覚でありながら、今までに体験したことのないものを出してくる。
(もちろん、逆もしかりだとは思うが)

空き巣に入りながら、とくに金目のものは盗まず、普通にその家で生活する、主人公のテソク(ジェヒ)。
オモチャの拳銃や、体重計や時計などその家にある壊れているものは直す。汚れ物は風呂場で手で洗濯する。飾ってあるその家庭の写真と一緒に自撮りで写真をとる。

この特異な設定にまず、やられる。
家の人が帰ってくるんじゃないかという緊張感もありつつ、テソクの想像のつかない行動による新鮮さも味わえる。

そして、もう一つの肝となっている設定が、テスクとソンファ(イ・スンヨン)の主人公の二人が、一言も言葉を交わさないということ。

以下、ネタバレあり。

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二人が障害等で喋れないという役柄だったら何も驚かない。
しかし、二人は喋れないわけではないのに、喋らないのだ。

ソンファはラスト近くになってようやく、「サランヘヨ」「ご飯ができました」というセリフをようやく喋る。

男は最後まで一言も喋らない。

しかし喋るシーンはなくとも、警察の取り調べに答えた形跡はあるから、彼は決して喋れないわけではないのだ。

この二つの際立った設定だけで、今までにない映画になっていた。

それに加え、刑務所で彼は気配を消す訓練を一人で行い、出所する頃には体得しているという味つけ。
荒唐無稽といえばそれまでだが、映像には説得力もある。

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ソンファがテソクを思いながら、二人で忍び込んだ屋敷を一人で訪ね、二人で愛し合ったソファの上で昼寝をするこのシーンは穏やかで美しい。
屋敷の住人がそれを許すのも、そこが寺院っぽいので、自然な気もしてくる。

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忍び込んだ屋敷で、飾ってあるソンファの写真と撮影するテソク。この写真のソンファは美しい。

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二人で忍び込んだアトリエのようなマンションのような部屋に飾ってある、ソンファの写真。この、パズルのように切って並べてある写真の中に感じるソンファの眼差しの強さにゾクッとくる。

韓国語の原題は빈집(Bin-jip)で「空き家」という意味。それは悪くないが、問題は英題の「3-Iron」。本作ではゴルフがなぜかキーとなっている。しかし、ゴルフをやる人はわかるだろうが、硬い地面にボールを直接置いて、3番アイアンで、しかも寝転がっているターゲットにきれいに当てるのは相当難しいだろう。そこに一番の無理を感じ、やや減点。

ラスト、二人で(以前、テソクが直した)体重計に乗って、重さがちょうど0を指している映像が流れる。
刑務所に入る前は、テソクは60kgを超えていたから、二人の体重を足しても0(つまり100kg)にはならないはず。おそらく、刑務所にいる間に痩せたことも示しているのだろう。

いずれにせよ、キム・ギドクワールドをたっぷりと堪能させてもらえて、満足度高し。

最後に英語版のDVDパッケージを。
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(テソクが裸なのはおかしいが)上のバージョンのほうが自分は好み。

原題: 빈집(Bin-jip / 空き家)
英題: 3-Iron
製作総指揮: 鈴木径男 / チェ・ヨンベ
製作: キム・ギドク
監督: キム・ギドク
脚本: キム・ギドク
撮影: チャン・ソンベク
美術: キム・ヒョンジュ
音楽: SLVIAN
衣装: ク・ヘホン
出演: イ・スンヨン(ソンファ) / ジェヒ(テソク) / クォン・ヒョゴ(ミンギュ、ソンファの夫) / パク・トンジン(チョ刑事) / チェ・ジョンホ(看守) / イ・ジュソク(老人の息子) / イ・ミスク(老人の息子の嫁) / キム・ハン(アトリエ風アパートの男) / パク・セジン(アトリエ風アパートを訪ねてくる女) / ムン・ソンヒョク / パク・チア / チャン・ジェヨン / リ・ダヘ
製作: キム・ギドク フィルム / シネクリック アジア
配給: ハピネット・ピクチャーズ / 角川ヘラルド・ピクチャーズ
公開: 2004年10月15日(韓)、2006年3月4日(日)
上映時間: 88分
 
【世間の評価】 ※2016.6.8時点
CinemaScape: 3.6/5.0 (73人)  
Yahoo! 映画: 3.97/5.00 (112人)
IMDb: 8.1/10 (38,179人)
 
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