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旬の女優、黒木華が主演ということも注目され、公開当時話題になっていた岩井俊二監督作。
岩井監督の作品を観るのは、『花とアリス』以来だろうか。

『打ち上げ花火、下から見るか 横から見るか』、『スワロウテイル』、『Love Letter』など、昔は率先して観ていた監督だが、『リリイ・シュシュのすべて』の重さにやられ、ちょっと遠ざかっていた。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」のあらすじ

派遣教員の皆川七海は内気で仕事がなかなか続かない。そんな七海はネットで出会った鶴岡鉄也と、あっけないほど簡単に結婚することになる。親族の少ない七海は、結婚式の代理出席を「なんでも屋」の安室に依頼。無事に結婚式は終えたものの、結婚早々、鉄也の浮気が発覚。ところが七海が浮気をしたと義母に責められ、逆に七海が家を追い出されてしまう。途方にくれた七海だったが、安室から紹介されたバイト先で里中真白と知り合い、意気投合し癒される。そんな七海に、安室が法外な報酬の仕事話をもちかけてきたのだった。

180分の長尺。ここ最近、偶然にも長い話が続いている。

前半、ボロボロになる黒木華演じる七海。まさに『リリィ・シュシュ~』で感じた、”痛さ”をここでも感じることになる。
後半は七海とCocco演じる真白との関わりが中心。

Coccoの繊細さは、真白の役柄にも生きている。
真白の吐き出す言葉に、リアリティをもたらしている。
しかし、私自身がCoccoの結構なファンということもあるからか、彼女の里中真白へのキャスティングには違和感を感じた。

また、このキャスティングの違和感にひきずられて、七海と真白の関係性にもピンと来ない部分が残った。

何でも屋の安室を演じる綾野剛や、Coccoの母親を演じるりりィなど、魅力的な役者も多く登場し、長尺を苦には感じさせない力があるし、楽しめる映画ではあったが、根本の部分で共感できず高い点数とはならなかった。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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黒木華には、蒼井優に似た匂いを感じる。今回の役柄もあると思うが、黒木華のほうが脆い印象ではあるが。岩井俊二監督作でいうと、『リリィ・シュシュ~』や『花とアリス』に蒼井優が出ているように、監督自身も二人に似たものを感じているのだろうか。
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冒頭。オンラインのマッチングサービスで鉄也と初めて会う、待ち合わせの時の七海。
この後、話はとんとん拍子に進み、七海は「ネットで買い物をするように彼氏を手に入れた」「あっさり手に入ってしまった彼氏だけど、彼にとってもあたしはあっさり手に入ってしまった女、ってことになるのかな」とSNSに投稿するが、この待ち合わせ時の、おどおどとしていた表情とのギャップが激しく感じられた。

前半部でボロボロになる七海だが、その要因の多くは彼女にある。男の選び方も危ういし、仕事にも自信なさげだし。結婚式当日の旦那との雰囲気も既に危うい。きわめつけは、旦那の浮気相手の彼氏とかいうやつをほいほい家にあげてしまうところ。

義母に責められても、たいして反論もできぬまま、実家から追い出される。
それも問題だが、翌日旦那と電話で話した際も、一方的に言われっぱなしで、それで家からも出て行くというひどい有様。「そんなもんなのか? みっともなかろうともっと粘れよ!」と言いたくてうずうずする。
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スーツケース2つを引きずりながら街をさまよい、安室から電話がかかってくるが、自分がどこにいるかも、これから自分がどこに行けばいいのかもわからず、見知らぬ場所で号泣する。

そして、雨降る中、傘もささずに宿を探す。
もうボロボロもいいところ。
これを見てるときは、こちらもつらかった。

その後、真白と出会い、生活は変わる。
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メイド姿の七海。似合う!が、ベタすぎないかという気もしてしまう。

オンライン家庭教師先の生徒への対応状況で、観客も七海の現在の状態がわかり、成長のあともうかがえるという構図は面白い。

後半は基本的に安心して見れるのだが、七海がひどい目にあったのは、義母が首謀者だとしても、その依頼を受けて七海を陥れた安室も、もちろん仕事だということはわかっていても、信用できなさが残った。
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綾野剛、良い役者ではある。
が、彼が演じる安室への猜疑心は、結局最後まで消えず。

上でも書いたが、Coccoのキャスティングには違和感あり。
それはAV女優という役柄がだ。
アーティストとしての彼女のことを自分が好きだからかもしれないが、彼女の雰囲気はどう見てもAV女優向きではない。
葬式に来ていた同業の女優仲間は自然ではあった。

真白が七海に語る話は、彼女の素朴な語り口も手伝って、観る者の心を掴む内容だった。
「この世界は本当は幸せだらけ、優しい人たちだらけ、私にはその幸せが耐えられない。だからお金を払う。お金ってそのためにあると思う」「私にはね幸せの限界があるの。もうこれ以上無理っていう限界。たぶんそこいらの誰よりもその限界がくるのが早いの。ありんこより早いんだ、その限界が」。
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タイトルにもつながる、二人でウエディングドレスを着るシーン。
美しくはあるのだが、現実性に欠ける設定では…と無意識にちょっと引いてしまう自分がいた。
中島ひろ子がちょい役で出ていたのが嬉しかった。

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金田明夫が演じる七海の父(右)。
妻(真ん中)が男を作って駆け落ちされるというつらい体験を持つ。
その妻とは少しでも一緒にいたくないと思いながら、娘には幸せになってほしい様子はステキだった。

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裸になって「恥ずかしいじゃないか」と泣きながら、一升瓶をかかえるりりぃ。インパクト大。
ここに、安室も乗っていくのには違和感があった。

水槽の部屋のクラゲ等のビジュアルだったり、真白と七海がベッドで抱き合っている様子を上からとらえているシーンだったり、映像は全般的に美しい。
良い面と、そぐわない面と、どちらもたくさん併せ持つ、出入りの激しい作品だ。

製作総指揮: 杉田成道
製作: 紀伊宗之
監督: 岩井俊二
脚本: 岩井俊二
原作: 岩井俊二
撮影: 神戸千木
美術: 部谷京子
音楽: 桑原まこ
出演: 黒木華(皆川七海)、綾野剛(安室行舛)、Cocco(里中真白)、原日出子(鶴岡カヤ子)、地曵豪(鶴岡鉄也、夫)、金田明夫(皆川博徳、父)、毬谷友子(皆川晴海、母)、りりィ(里中珠代、真白の母)、和田聰宏(高嶋優人、鉄也の浮気相手の彼氏と名乗る男)、佐生有語(滑、真白邸のクラゲ等の世話人)、夏目ナナ(恒吉冴子、真白のマネージャー)、野間口徹(七海の派遣元会社の担当)、野口雅弘(牛腸和明、偽家族、父)、黒木辰哉(偽家族、兄)、 森下くるみ(りん、AV女優仲間)、中島ひろ子(ウェディングドレス店の店員)、堀内正美(ウェディングドレス店、カメラマン)、玄理(似鳥真美、友人)、(橘川勝代、偽物家族の母親)、希崎ジェシカ(AV女優仲間)、芹澤興人(葬儀屋)、軽部真一(結婚式司会)、桜井美南、郭智博、堀潤、紀里谷和明(重婚カップルの男)、中村ゆり(紀里谷の嫁)、野田洋次郎(カラオケ店のピアニスト)
編集: 岩井俊二
制作会社: ロックウェルアイズ
製作会社: RVWフィルムパートナーズ
配給: 東映
公開: 2016年3月26日(日)
上映時間: 180分
興行収入: 1億1500万円
 
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