straits

3時間を超す大作にして、決して長くは感じさせない濃い内容。
最後の最後まで風情があり、驚きがある。

脚色して現代を舞台に撮り直してもきっと面白い作品。そのぐらい脚本がユニーク。

恐山を出すことでのおどろおどろしさ。青函海峡の荒々しさ。戦後すぐの東京の混乱っぷり、慌ただしさ。
それらがあいまって、観ているこちら側の気持ちも揺さぶられる。

主人公の犬飼を演じる三國連太郎の魅力が、本作をさらに輝かしている。
前半の、無精髭の三國連太郎も味があってよかったが、10年経ち事業家として油が乗った三國連太郎は佐藤浩市も顔負けな男前だ。

さらに、犬飼を追う函館の刑事弓坂(伴淳三郎)。そして犬飼に恋い焦がれる八重(左幸子)の主要キャスト3名が、ともに悪くない出来。
特に、犬飼と八重の二人については、作品自体の時間が長いということもあるが、二人の育ってきた環境や、想いなどに気を寄せてしまう。

「飢餓海峡」のあらすじ

昭和22年9月、まだ終戦直後の混乱の時期、折から近づいていた大型台風の10号によって青函連絡船・層雲丸が沈没する事故があり、船客530名の命が奪われた。遺体収容にあたった函館署の刑事弓坂は、引取り手のない二つの死体に疑惑を感じ、また、犠牲者の遺体を数えてみると、乗船者名簿の数よりも2体多かった。弓坂は、同時期に起きた北海道岩内町の強盗放火事件との関連を疑う。その頃、対岸の青森県大湊では、犬飼多吉と名乗る男が、一夜を共にした娼婦の杉戸八重の身の上話にほだされて、大金を渡していた。結局事件は未解決のまま年月が流れるが、八重は犬飼の好意をいつまでも忘れずにいた。十年後、八重は犬飼にそっくりな篤志家・樽見京一郎のことを新聞で知る。

最後の最後まで飽きさせない見事な脚本だが、原作自体が水上勉の小説ということで納得がいく。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

 - ad -

映画のスタートは北海道から。
straits_02
犬飼と、強盗犯の2人。三國連太郎の若さ、素朴っぽさが伝わってくる。

そして、犬飼は津軽海峡をボートで渡り、青森県へたどり着く。
straits_01
恐山。このシーンが話の流れ上必須だとも思えなかったが、おどろおどろしさは確実に増している。作品全体でお金をかなり使ったことは想像がつく。

大湊へ向かう鉄道の中で八重と出会う。
straits_04
犬飼の訪問を、心から喜んでいる節の笑顔の八重(左幸子)。
この後、自分が切った犬飼の親指の爪を後生大事に保管し、時々眺めては話しかける。顔に当てては、その日の逢瀬を思い出しているかの声を出す。この時代にして攻めている内容。

なお、”花や”とのれんにあるのが店名かと思いきや、それは売春宿を現す隠語だとのこと。
作品全般的に、女郎、娼妓、赤線、青線などの当時の風俗模様の描かれ方も興味深い。

straits_05
八重と、その父(加藤嘉)。親子で風呂に入るのが不自然ではない時代だったのだろうか。
加藤嘉は撮影当時52歳前後のはずだが、もっと歳をとっているように見える。

犬飼は京都の東舞鶴へと移り住み、樽見として生きる。
straits_06
樽見を訪ねて来た八重。樽見の、「あなたのことは知りません」、「興味ありません」、という演技が面白い。
straits_09
捜査をうまく交わす樽見。ラグビーの平尾誠二のようなハンサム顔。
straits_03
樽見にボロを出させようと奮闘する捜査本部。最初は手こずるが…
この東舞鶴での尋問シーン、高倉健演じる味村刑事よりも、その上司である署長を演じる藤田進が印象に残る。
署長自らが陣頭指揮をとるというのも考えてみれば今はなさそう。

昭和30年代後半においてはこれが普通だったということもあるのだろうが、特に刑事の人々の喋り方に古臭さが残る。

ラスト近くなり、三國連太郎が犯人扱いされるあたりからの、三國の抗戦っぷりが見事。

straits_07
ラスト、花を手向け、お経を読む弓坂刑事(伴淳三郎)。冒頭で、住職に「あなたのお経を聞いていると本職顔負け」の趣旨のことを言われていたが、確かにその通りで心落ち着く読経なのである。
そして、樽見は花を投げ入れると同時に自らも飛び込み、ジ・エンド。

こう振り返っても、最後の最後まで楽しませてくれる映画だったことがよくわかる。

英題(日本): Straits of Hunger
英題(グローバル): A Fugitive from the Past
製作総指揮: 辻野公博、矢部恒
製作: 大川博
監督: 内田吐夢
脚本: 鈴木尚之
原作: 水上勉
撮影: 仲沢半次郎
美術: 森幹男
音楽: 冨田勲
出演: 三國連太郎(樽見京一郎/犬飼多吉)、左幸子(杉戸八重/千鶴)、伴淳三郎(弓坂吉太郎刑事、函館)、高倉健(味村時雄刑事、東舞鶴)、加藤嘉(杉戸長左衛門、八重の父)、三井弘次(本島進市、亀戸の女郎屋「梨花」の主人)、沢村貞子(本島妙子)、藤田進(東舞鶴警察署長、味村の上司)、風見章子(樽見敏子、樽見の妻)、山本麟一(和尚、弓坂の読経を褒める)、最上逸馬(沼田八郎、岩内の強盗犯)、安藤三男(木島忠吉、岩内の強盗犯)、沢彰謙(来間末吉)、関山耕司(堀口刑事、東舞鶴)、亀石征一郎(小川、チンピラ)、八名信夫(町田、チンピラ)、菅沼正(佐藤刑事、函館)、曽根秀介(八重が大湊で働いていた娼館、”花や”の主人)、牧野内とみ子(朝日館女中)、志摩栄(岩内署長)、岡野耕作(戸波刑事、函館)、鈴木昭生(唐木刑事、東舞鶴)、八木貞男(岩田刑事、東舞鶴)、外山高士(田島清之助、岩内署巡査部長)、安城百合子(葛城時子、八重が東京で訪ねる)、河村久子(煙草屋のおかみ)、高須準之助(竹中誠一、樽見家の書生)、河合絃司(巣本虎次郎、網走刑務所所長)、加藤忠(刈田治助)、須賀良(鉄、チンピラ)、大久保正信(漁師の辰次)、西村淳二(下北の巡査)、田村錦人(大湊の巡査)、遠藤慎子(巫子)、荒木玉枝(一杯呑み屋のおかみ) 、進藤幸(弓坂織江、弓坂の妻)、松平峯夫(弓坂の長男)、松川清(弓坂の次男)、山之内修(記者)、室田日出男(記者)
編集: 長沢嘉樹
製作会社: 東映東京
配給: 東映
公開: 1965年1月15日
上映時間: 183分(完全版)、167分(カット版)
 
@Amazon Prime Video