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あらためて考えてみると、中東の映画というとアッバス・キアロスタミの監督作ぐらいしか見たことがない。それも10年以上前に観て以来だ。

「別離」のあらすじ

テヘラン。11歳の娘テルメーの教育はイラン国外で行いたいとして、シミンは家族で国外への移住を目論むも、夫ナデルの父親がアルツハイマーを患っており、介護が必要な父をおいて国外には行けないとナデルは聞き入れない。これを機に二人は別居するようになり、ナデルは家政婦としてラジエを雇うことに。だがある日、ラジエの父への仕打ちに激昂したナデルは彼女を手荒く追い出す。その晩、事態は急展開を告げ……

 
女性は基本的にチャドルやヒジャブを着用しているし、宗教の生活への入り方も日本とは全く違うのは当然なうえ、欧米のキリスト教・ユダヤ教への信仰の形態とも異なる。ここが非常に新鮮で、スパイスとして効いていた。

夫婦間の諍い、そして流産させたことによる争い。ちょっとしたボタンのかけ違いで、非常にリアルな悲劇が起きてしまう様が、見事に表されている。

以下、ネタバレあり。

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作中にもその言葉が出て来たが、「子はかすがい」と言うとおり、話の大事な役割を果たすのは娘のテルマー(サリナ・ファルハディ)。両親が離婚しないことを願って、敢えて父親のナデル(ペイマン・モアディ)側に残ったり、母親のシミン(レイラ・ハタミ)へ歩み寄るよう父を諭したり(結局うまくはいかないが…)。

父親が証言で嘘をついていることを疑い、それを知ると、法廷で真実を言うように父から約束の言葉をとる。しかし父は自分の身(それが娘を筆頭とする家族の身につながるわけだが)を守ろうと、嘘に嘘を重ね、結果、証言を求められた娘は父を気づかって自ら嘘をついてしまい、それに傷つく。

ナデルは、娘とは約束するものの、なかなかそれを実践できない、弱さを持つ。それが観ている側を苛々もさせるし、人間らしくもある。

ラスト、テルマーがどちらの親と一緒に住むかを、裁判所で担当官に言うシーンも印象的。
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両親の前では言いにくくて、二人は席を外して、外で手持ちぶさたに待つ。扉の先と手前に分かれて。
そこに静かに音楽が挿入され、エンドクレジットが流れる。答えがどちらかはわからないが、この幕引きは悪くない。

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娘のテルマーは終始感情を抑えている。だからこそ担当官に嘘をついた後、そして、両親のどちらと住むかを告げようとする時に見せる涙が心をうつ。

 
二人の離婚のきっかけは、親の介護と子どもの教育。
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アルツハイマーを患うナデルの父親(Ali-Asghar Shahbazi)も重要な役。リアルに感じた。

 
メイドのラジエ(サレー・バヤト)。前半、粗相をしてしまった爺さんの下の世話をしてもいいものか思い悩み、宗教電話相談所のようなところに電話して、判断を仰ぐシーンがある。これ単体でも興味深かったが、後半、自分の流産の原因が突き飛ばされたことによるものと確信が持てず、その状態で示談金を受け取っていいのか悩む。はっきりと相談所に電話するシーンはなかったが、それを思わせる作り。そして、旦那に、流産したのは自分に突き飛ばされたからだとコーランに誓ってくれと言われ拒む。この流れも見事。
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ラジエは、けだるそうな、どことなく後ろ向きな雰囲気を常に纏っている。

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ラジエの旦那である短気なホジャット(シャハブ・ホセイニ)。作品全体に刺激を与えていた。

ラジエとホジャットの小さい娘ソマエ(Kimia Hosseini)は、良い表情をする。哀しげだったり、憎々しげだったり。
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目が強いソマエ。

 
一度生じた夫婦間の溝はなかなか埋まらない。妊婦を流産させた問題が解決しても、愛する娘がどんなに頑張っても結局二人は戻らないのだから。

何度も見たい題材ではないが、人間模様を静かに味わうには最適な映画の一つだろう。

中東の映画にはこれからも期待したい。

 
最後に、バージョン違いのDVDパッケージデザインを。
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「Nader and Simin」と主人公夫婦二人の名前がタイトルに入っている。

製作総指揮: ネガル・エスカンダルファル
製作: アスガー・ファルハディ
監督: アスガー・ファルハディ
脚本: アスガー・ファルハディ
撮影: マームード・カラリ
美術: ケイヴァン・モグハッダム
音楽: サタール・オラキ
出演: レイラ・ハタミ(Simin) / ペイマン・モアディ(Nader) / サリナ・ファルハディ(Termeh) / シャハブ・ホセイニ(Hojjat) / サレー・バヤト(Razieh) / ババク・カリミ(Interrogator) / メリッラ・ザレイ(Miss Ghahraii) / Ali-Asghar Shahbazi(Nader’s Father) / Kimia Hosseini(Somayeh)
 
【世間の評価】 ※2016.9.21時点
CinemaScape: 4.2/5.0 (21人)  
Yahoo! 映画: 4.26/5.00 (225人)
IMDb: 8.4/10.0 (153,712人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.9/10.0 (153人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.3/5.0 (22,056人)
 
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