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増村保造監督作品を観るのはこれが初めて。

主演の若尾文子は、2か月ほど前に観た『しとやかな獣』以来の二作目。

 
オープニング。地裁へつけられた車から被告人の彩子(若尾文子)と弁護士(根上淳)が降り、法廷へ向かうところにマスコミが群がる。
法廷シーンがスタートするまでも、さほど時間が空かず、スピーディな展開。

そこから、それまでの経緯を振り返る形で話は進む。

死亡した、彩子の歳が離れた夫(小沢栄太郎)は、野卑で見るからに臭そうで、ムカムカしてくる。ある意味、良い演出&演技。

「しとやかな獣」でもそうだったが、若尾文子は和服が似合う。20代後半の役だが、もうちょっと上に見える。下着シーンになると猛烈に時代を感じる。

夫のザイルを切ったのが、自分が苦しくて仕方なかったことによる緊急避難なのか、夫を意識的に殺そうと思った殺人なのかが、裁判の争点。

以下、ネタバレあり。

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判決が出るまでの間、彩子と、彩子の愛する男・幸田(川口浩)の二人は旅に出る。
浜辺に寝そべって戯れ合ったり、観覧車に乗ったり。
二人の関係の不安定さ、背徳感、どんな判決が出るのかわからない不安、等々から、この旅はより楽しいだろうし、観ているこちらにとっても印象強く感じられた。

彩子は、幸田から「現場で何があったのか自分には教えてくれ」と何度言われても、わたしを信じられないのと言い、殺意を一貫して否定する。

そして、判決が出る。彩子側の勝訴。

保険金500万円が入ると、彩子はすぐに高級なアパート(CHIYODA APARTMENT)に引っ越すが、幸田はその無神経さに引く。

彩子はしばらくは何がいけないの、あなたが臆病なんだと責め立てるが、しばらくして冷静になると、すべてあなたに従うと言う。ザイルを切ったのも、血を流し苦しそうだったあなたを助けるためだったと告白する。

ザイルを切ったのは意識的に彩子がやったであろうこと、それでも証拠不十分で勝訴になるだろうことは、大方の人が予想していただろう。

ただ、勝訴後の彩子の豹変ぶり、幸田を愛するがゆえの強烈な行動・言動は予想以上。幸田だけでなく、多くの男性は引くだろう。いつもは忘れているが(一部の?)女性にはこういうところがあるよなと思い返すのだ。
この描き方が、この映画の真骨頂だろう。

自分でもきっとそうするだろうと思うが、幸田は彩子に分かれを告げる。傷心の彩子は、幸田が勤める製薬会社のビルの1階のトイレで服毒自殺をはかる。

幸田の元婚約者である理恵(馬淵晴子)は、彩子を殺したのは幸田だと責めて立ち去る。男目線だと、幸田はさほど悪くないように思えるが、この二人のやりとりにより、幸田の印象は一気に悪くなり、もしかすると女性はみんな、彩子の行動を支持するのではないかと、怖くなる。きっとそんなことはないはずなのだが。

なお、理恵を演じる馬淵晴子は、理知的で美しい。この映画に関してだけ言えば、若尾より好印象。

検事を演じる高松英郎は、「しとやかな獣」にも出演していたが、さすがの安定感。

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自殺後に横たわらせられている彩子の姿が映り、その空間の明かりが消え、隣室の明かりで彩子の影が浮かびあがる。ここに「終」のマークが現れる。なかなか辛辣なエンディング。

この時期の映画は、本作もそうだが、人の心に静かに入りこんで来るような、余韻・雰囲気を持った演出が見事だなと感心させられる作品がいくつもある。

メリハリの効いた脚本、演出は観客の心を動かすが、観ていて気持ちの良い映画ではない。良作だとは思うが、そこはかとない、居心地の悪さゆえ、高い評価がつけずらい作品である。

 
<<追記>>
本筋とは関係ないが、若尾文子は「わかおふみこ」ではなく「わかおあやこ」と読むのが正解。失礼しました。

監督:増村保造
脚本:井手雅人
原作:円山雅也
撮影:小林節雄
美術:渡辺竹三郎
音楽:真鍋理一郎
出演:若尾文子 / 川口浩 / 小沢栄太郎 / 馬淵晴子 / 根上淳 / 高松英郎 / 大山健二 / 小山内淳 / 村田扶実子
配給:大映
公開:1961年10月29日
上映時間:1時間31分
 
【世間の評価】
CinemaScape: 4.0/5.0(73人)  ※2016.1.25時点
Yahoo! 映画: 4.17/5.00(12人) ※2016.1.25時点
IMDb: 7.5/10(221人) ※2016.1.25時点

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