A2
『FAKE』はまだ未見だが、ここ最近ドキュメンタリー映画にハマっていることもあり、森達也監督にも大きな興味を抱いていた。

しかし、TSUTAYA DISCUSでオウム真理教をテーマにした『A』や『A2』を借りようと試みていたものの、在庫枚数が少ないからかいつになっても借りれる目途が立たない。
そんな折、2001年に上映された『A2』が、カットされたシーンを追加した完全版としてユーロスペースで上映されると。まさに渡りに船。

 
期待に違わず、いろいろ考えさせてくれる作品だった。
大きな事件がないからと言えばそれまでかもしれないが、話は比較的淡々と進む。
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オウム(もしくはアレフ)が引っ越してくると、地下鉄サリン事件のイメージを持つ近隣住民は、話し合いをしようとか理解しようとかせずに、ただ闇雲に「オウム出ていけ」というアクションをとる。

この作品を観ていると、どちらかというとおかしいのはオウム側ではなく、近隣住民側なのではないかとつい思ってしまう。そういう作りになっている。

しかし、冷静に考えれば、住民の反応はいたって自然。
オウム信者がどんな人たちなのかは一般には知られておらず、話し合いができる人たちなのかもわからない。
気味が悪い、怖い、だから拒否反応を起こす。

その拒否反応はいたってまっとうではある。しかし、それがオウム信者が暮らすいくつもの町々で繰り広げられている映像を観ていると、暗澹たる気持ちにもなる。その中で、その反応がかえってくることに慣れ、なかば諦めているオウム信者側が穏やで、時に笑いもあるのが救いなのだ。
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横浜黄金町で右翼のおっちゃんが警察につっかかるシーン。
本筋とはズレる気もしたが、右翼関連に結構時間を割いており、印象にも残った。
右翼の本当の意図はどこにあるんだろう。単純にそこに興味も沸いた。

 
監督が追っているオウムの人々は、総じて純粋で、良い人そう。
ある意味、そういう人が拠り所として宗教を求めるのだから、オウム真理教は存在意義を立派に果たしている。
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地域住民も警察官も、長くオウムの人々と接している人は皆、オウムの人々の害のなさを理解し、笑顔で談笑している。
ほっこりさせられるシーンがいくつもあった。
しかし、メディアは決してそんな映像は流さない。

これはなぜなのだろう。
そんな映像を流して、後々オウムが問題を起こした際に責任を問われるのが嫌なのだろうか。

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松本サリン事件の被害者である河野義行氏。彼のもとに報道陣を引き連れ訪ねていくオウムのメンバー二人。河野氏はこの二人に謝罪されたいわけではないが、報道陣もいるのだからデモンストレーションとしてでも謝罪したほうがいいのではないかと提案する。それにまごつく二人。

この二人のまごつき方がまるで子どものようで、少なくとも、報道陣に囲まれて記者会見等を何度もこなしてきた人たちと同じ人のようには到底見えなかった。要は、彼らはまだまだ成熟していないのだ。そんな彼らが、地下鉄サリン以後、浅原をはじめとした幹部連中がいなくなったなかで、なんとか教団を存続させて生き抜いてきている道のりの険しさに胸が痛んだ。
純粋な彼らは信仰心も厚く、こんな騒動の収拾に関わっているよりも、修行につとめたいだろうし。

ムースのつけ方も知らない荒木氏。「SPEEDって知ってますか?」と問われて「ドラッグですか?」と答える村岡達子。
俗世への関心の薄さはポーズではないことが伝わってくる。

 
今回の完全版で追加されたのは、浅原の三女であるアーチャリーこと松本麗華が登場するシーン。当時まだ彼女が未成年だったためカットされたとか。
彼女の無邪気さ、そして彼女が、施設近くにある警官の詰め所で話す警察官の無邪気さに救われる。

監督に、今言いたい名前で英語で自己紹介をしてといわれると、「マイネームイズ・リカ・マツモト」と答える。
「なぜアーチャリーじゃないのか」と問われると、「字も綺麗で好きだし、お父さんがつけてくれた名前だから」と。
世間からしたらあんな男と思われる人物であっても、彼女からしたらかけがえのないお父さんなんだなと思ったら、ちょっと泣けてきた。

 
もう一つ、ハッとさせられたのは、監督がある信者に、「あなたが地下鉄サリン事件当時の教団の幹部で、事件の一端を担ってくれと言われていたらあなたはやっていましたか」と尋ねるシーン。

信者の答えはYes。

そう。それが彼らの信仰なのだ。
だからこそ危うい。

その意味で、近隣住民が安心できないのもむべなるかなとも思える。

わかりやすい、スッキリした解決策が出せる話ではないんだなということが、納得感を持って腹落ちした。

製作: 安岡卓治
監督: 森達也
撮影: 森達也 / 安岡卓治
 
【世間の評価】 ※2016.7.15時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (29人)  
Yahoo! 映画: 3.80/5.00 (15人)
IMDb: 7.6/10.0 (58人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (0人)
Rotten Tomatoes(Audience): -/5.0 (32人)
 
@渋谷ユーロスペース