とかいのありす

ヴェンダースの監督作を観るのは相当久しぶりだ。

あらためて調べてみると、そもそも彼の作品は「ベルリン・天使の詩」「パリ、テキサス」の二作しか観たことがないことに気づく。

本作は74年の作品、全編モノクロ。不思議なテイストのロードムービー。

 
ストーリーをまったく知らずに観たこともあり、冒頭の舞台がアメリカであることに意表をつかれた。西海岸っぽい浜辺や桟橋、いかにもアメリカっぽい寂れた田舎のダイナーやモーテルなどが郷愁を誘う。
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例えばこのSkyWay Motel。寂れた70年代の感じがたまらない。

ポラロイドで出会う景色を撮る主人公フィリップ(リュディガー・フォグラー)。
自分の本国ではないということもあってか、アメリカが舞台となる前半はセリフも少ない。

ニューヨークまで車で移動するが、途中カーラジオだったり、滞在するモーテルのテレビ番組に大きな不満を持ち、爆発させる。

てっきり彼は写真家なのかと思っていたら、ニューヨークで出版社を訪れ、そこでの編集者との会話から彼が物書きであることがわかる。

ドイツへ帰国しようとするが、ドイツの空港(もしくは航空会社)がストで、飛行機が飛ばない。フィリップは成り行きで、ニューヨークの空港のカウンターで知り合った、9歳の女の子アリス(イエラ・ロットレンダー)を連れた女性(リサ・クロイツァー)と行動を共にすることに。

ここから物語が少しだけ動き出す。
(とは言っても、大きな事件は起こらない。)

以下、ネタバレ(ってほどの大げさなものはないが一応)あり。

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ドイツには行けないにしても、とりあえず一旦アムステルダムまで飛ぶという朝、リサは姿を消す。
置き手紙の指示により、フィリップはアリスを連れて二人でアムステルダムへ。
何日間か待てどリサは現れず、仕方なく二人でアリスの曖昧な記憶を元に、アリスの祖母を探すことに。

その最中もたいした出来事は起きない。
事件性という意味ではおよそ映画らしくはない。

二人のやりとり、表情、二人が醸し出す空気感が見るべきもの。また、ヴェンダースの真骨頂、絵になる映像はそこかしこに見つけることができる。

アリスの気持ちはコロコロ変わり、二人の距離感も変わる。
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甘えている時のアリス。ベンチシートだからできる体制。

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どこのシーンだかの記憶はないが(アムステルダムの運河クルーズか、ドイツのフェリー)、好きなカット。

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証明写真機で二人で撮った写真。後になってアリスがこの写真を見てほほ笑むシーンがあるが、二人の親密さが伝わってきてこちらも自然と笑顔になってしまう。

 
ゆったりとしたBGMが流れ、眠くなる部分もあるが、穏やかな気持ちで観れる映画であることに間違いはない。フィリップもアリスも魅力的ではあるが、観ている側に緊張感を強いるタイプではないのも、ゆるさを醸し出していることにつながっている気がした。

 
最後に、上とは別バージョンのチラシ・DVDパッケージのデザインを。
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アリスが歯ブラシを使っていいかと尋ねるシーンのカット。「あなたが気にしないなら」というフィリップの答えがよかった。

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ロードムービー三作特集のデザイン。警察のシーンのカットだろうか。

 
ところで、なぜタイトルに、”都会の”をつけたのだろう。ニューヨーク、アムステルダム、ドイツの数都市が、アリスが過ごした舞台だが、さほど都会感は感じられず仕舞いだった。

原題: Alice in den Städten
英題: Alice in the cities
製作: ヨアヒム・フォン・メンゲルスハウゼン / ペーター・ゲネー
監督: ヴィム・ヴェンダース
脚本: ファイト・フォン・フュルステンベルク / ヴィム・ヴェンダース
撮影: ロビー・ミューラー
音楽: CAN
出演: リュディガー・フォグラー(Philip) / イエラ・ロットレンダー(Alice) / リサ・クロイツァー(Lisa – Alice’s Mother) / エッダ・ケッヘル(Angela – Friend in New York) / Ernest Boehm(Publisher) / Sam Presti(Car dealer)
編集: ペーター・プルツィゴッダ
配給: フランス映画社
公開: 1974年5月17日(西独)、1988年11月19日(日)
 
【世間の評価】 ※2016.9.20時点
CinemaScape: 4.0/5.0 (140人)  
Yahoo! 映画: 4.24/5.00 (49人)
IMDb: 8.0/10.0 (6,257人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.4/10.0 (16人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.2/5.0 (1,754人)
 
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