amoresperros

バードマン』のイニャリトゥ監督作。舞台はてっきりスペインかと思っていたが、どうやらメキシコだったようだ。

『パルク・フィクション』のように、いくつかのストーリーに別れていながら、個々の話がそれぞれ薄く繋がっており、最後まで観ることでそれぞれのストーリーが厚みを持つ。とはいえ、がっつり関連しているわけでもない。そのつながり具合の塩梅が面白い。

闘犬、カーチェイス、交通事故、殺人依頼、不倫、離婚、足の切断、銀行強盗、射殺…etc と危ない話のオンパレード。
それでいて変な落ち着きのある、演出、映像。

それぞれの登場人物の身になって考えてしまう構成。気持ちがそれなりに強い力であちらこちらに揺さぶられる。

2時間半を長く感じさせない、見事な作品。『バードマン』より断然本作が好みだった。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

 - ad -

一番身につまされたのは、不倫の結果、元妻と別居し一緒に暮らし始めた雑誌編集者(?)ダニエル(アルバロ・ゲレロ)とモデルのヴァレリア(ゴヤ・トレド)のカップル。幸せ絶頂なところから、事故に巻き込まれ、健康も仕事も失い関係性は悪化、片足まで切断するはめに。どんな人たちでも、歯車が狂い出すと、一気に関係は悪化の一路を辿ることを、まざまざと見せてくれた。

兄嫁のスサナ(バネッサ・バウチェ)に好意を寄せ、多少はいい感じになるも、結局報われない弟オクタビオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)も、ありきたりな若気の至りといえばそれまでだが、痛々しさが実感をもって伝わってきた。

amoresperros_01
スサナを演じたバネッサ・バウチェ。少女のようなあどけなさを纏いまながら(高校に通いつつ子どもも育てているという設定か)、兄弟の狭間で気持ちが揺れ動くさまをうまく表現していた。

amoresperros_02
端役ではあるが、闘犬シーンで登場し、強い印象を残すハラーチョ(グスターボ・サンチェス・パラ)とFatso(役者不明)。

amoresperros_04
エル・チーボ(エミリオ・エチェバリア)が持つオレンジのカップがなぜか印象に残っている。

amoresperros_03
元妻と離別して以来会っていない娘マル(ルルデス・エチェバリア)の部屋に忍び込み、娘と新しい父親との写真の上に自分の顔の写真を貼ったうえで、その場から留守電にメッセージを吹き込むエル・チーボ。この姿には、かすかに胸を突くものがあった。
鬚を剃り、髪を切った姿は、上のエル・チーボと同一人物とは到底思えない。

 
余談だが、観終って、「レストランでエル・チーボに殺された人は一体誰だったのか」とふと思ったが、あれはグスタボ(ロドリゴ・ムライ・ブリサント)から依頼を受けた今回の殺しではなく、それ以前の仕事だったのだ。その事件が載っている新聞の別のページで、自分の元妻の訃報を知ったことをすっかり忘れていた。ちょっとこんがらがっていた。

人間の郷の深さと欲望にまみれた内容でありながら、不思議な落ち着きを湛える作品。見ごたえ十分。

監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本: ギレルモ・アリアガ
製作: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作総指揮: フランシスコ・ゴンザレス・コンペアン、マルタ・ソサ・エリゾンド、
出演: ガエル・ガルシア・ベルナル(Octavio)、エミリオ・エチェバリア(El Chivo)、ゴヤ・トレド(Valeria)、アルバロ・ゲレロ(Daniel)、バネッサ・バウチェ(Susana)、ホルヘ・サリナス(Luis、target of murder)、マルコ・ペレス(Ramiro、Octavio’s elder brother)、ロドリゴ・ムライ・ブリサント(Gustavo、client of murder)、ホセ・セファミ(Leonardo、policeman)、ルルデス・エチェバリア(Maru、Chivo’s daughter)、グスターボ・サンチェス・パラ(Jarocho、chase Octavio and Jorge in anger)、アドリアナ・バラッザ(Octavio’s mom)、ウンベルト・ブスト(Jorge、Octavio’s friend)、Ricardo Dalmacci(Andrés Salgado、Valeria and Daniel’s friend)
音楽: グスターボ・サンタオラヤ、アントニオ・ヴェガ
撮影: ロドリゴ・プリエト
編集: ルイス・カルバリャール
製作会社: アルタヴィスタ・フィルムズ、ゼタ・フィルム
配給: Nuvisión(メキシコ)、東京テアトル(日)
公開: 2000年6月16日(メキシコ)、2002年2月22日(日)
上映時間: 153分
製作費: $2,000,000
興行収入: $20,908,467
 
【世間の評価】 ※2016.12.20時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (150人) 
Filmarks: 3.9/5.0 (1,224人) 
Yahoo! 映画: 4.03/5.00 (117人)
IMDb: 8.1/10.0 (173,682人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.8/10.0 (111人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.2/5.0 (103,701人)
 
@DVD