apocalypsenow

コッポラの代表作であり、かつ、70年代を代表するアメリカ映画の一つ。

当初の劇場公開版ですら2時間33分という長尺だったが、今回観たのは3時間20分という長さの完全版。テーマが重そうなうえ、時間も長いし、見始めるのに勇気が必要だった。

想像していたよりも、静かな作品。

邦題の”地獄”という文言から想起するイメージ、今まで見たいくつかのヴェトナム戦争映画の激しさ、そして予告編の映像から、強烈なものを想像していたせいだろう。

「地獄の黙示録」のあらすじ

ベトナム戦争末期。特殊部隊グリーンベレーの隊長であったカーツ大佐は、部下を殺害し現地の山岳民族で結成された部隊を率いてカンボジアに自身の王国を築いていた。アメリカ軍は陸軍空挺士官のウィラード大尉にカーツ大佐を暗殺せよと指令する。ウィラードと部下たちは哨戒艇で河をさかのぼって王国を目指すが、その途中でさまざまな戦争の狂気を目にする。やがて王国に到着したウィラードはカーツと対面し、任務遂行の機会をうかがうが……

キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)率いる騎兵師団のクレージーさ、指揮官がいなくても憑りつかれたように闘っている兵士たち、麻薬でおかしくなっていく兵士たち、インドシナ戦争時代から入植しているフランス人たちのゆがんだ内情、そしてカーツ大佐が築き上げた奥地の王国の異様さ。

それらとバランスをとるかのように、主人公のウィラード(マーチン・シーン)は全編通してトーンが低め。

それが眠気を誘う部分もあるが、落ち着いて見れる良さもあり。

3時間20分は決して短くはないが、それでもその世界観にひきこまれ、半分夢心地で最後まで観れてしまう。
現実感のなさ。戦争の馬鹿らしさと、恐ろしさと。

コッポラ自身が、この映画を振り返って、”何を撮っているのかわからなくなってきた”と言っているらしいが、そのとおりで、総括するのが難しい内容。

ナパーム弾でジャングル焼かれる映像の美しさや、ワグナーをかけながら爆撃する高揚感を感じつつ、一方で罪悪感も感じざるを得ない。
戦争映画にはどれも似た側面はあるが、それがより極端になっている。

観てよかったなとは思える映画ではある。
ストーリーや、登場人物の胸中がわかりにくい映画でもない。

それでもスッキリさせてくれる映画ではない。
戦争について、人間について、ひるがえっては自分自身について考えさせられ、胸の中のモヤモヤは確実に残る。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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前半話は静かに進む。
ウィラード(マーチン・シーン)の語りはやや眠さを誘う。

ハリソン・フォードも固めのちょい役で出ている。
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ペタっとしている髪、真面目そうなメガネ姿が新鮮。

戦場に入り、サーフィン好きの狂ったキルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)が登場してから、トーンは一気に変わる。
サーフィンで有名な兵士を見つけると、彼のサーフィン熱のボルテージはさらに上がり、部下たちに作戦の指示を出しつつも、兵士たちとのサーフィンの話にかなりの時間をさく。

ヘリで編隊を組んで敵地へ向かい、ワグナーのワルキューレを大音量でかけながら、爆撃。爆撃しているヘリはサーフボードも運んでいる。

爆撃の後、地上に彼らが降りてからも、敵からの射撃は続く。他の兵士たちは当然伏せるが、中佐だけはまったく避ける様子も、驚く様子もない。これがかなりシュール。
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そして、名セリフ「朝のナパーム弾の匂いは格別だ」。
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その中佐の、お気に入りのサーフボードを茶目っ気を出して盗む彼ら。ここはウィラードの子どもっぽさが垣間見れる数少ないシーン。

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ジャングルが焼かれる様子。確実に批判を浴びただろうが、ビジュアルの美しさは確かにある。

プレイボーイの女の子たち(プレイメイト)が戦地に慰問に訪れていたという史実を、わたしは知らなかった。
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兵士たちがプレイメイトを見て狂喜する様子はお決まりではあるが、期待を裏切らない出来。

このプレイメイト達は後々、自分たちが乗っているヘリコプターの燃料を得るために、兵士たちに抱かれねばならないことになる。彼女たちの精神は当然ながらかなりやられている。ここも事実に基づくのだろうか。
そして、あのヘリの中に転がっている死体は誰?なぜ外に出すなり、埋めたりしないのか。
あの子らがそれもできないぐらい追い込まれているという意味合いなのだろうか。

入植していているフランス人たちとのやりとりも印象的。
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「ディエンビエンフーで負け、○○で負け… 今度は負けられない。アメリカ人はフランス人から学ぶべきだ」という。
フランスが東南アジアで戦争していたという歴史をすっかり忘れていたが、彼が言うとおりインドシナ戦争がフランスに落とした影は大きいのだろう。
食卓で主張しあう、フランス人たち。それも客人の前で。この不思議さ。彼らもまた追い込まれているというニュアンスを伝えたかったのだろうか。

最終的に食卓に残るのは、ウィラードとフランス人の未亡人(オーロール・クレマン)。二人は一晩を過ごす。
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未亡人が上半身裸の状態で、ベッドの四方のシースルーのカーテンを閉めるこのシーンは美しく、思わせぶりに撮られている。一方で、自分の目にはウィラードの魅力があまり感じられず、この一連の流れはやや不自然に感じた。

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ヘリからの空爆シーン。ワグナーをかけながらの空爆シーンであったり、プレイメイトたちの住処になっていたり、この映画ではヘリコプターが大事な場面で何度も登場する。
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上の、別のシーンでも登場したが、発煙筒によってたかれる赤や黄色の煙が、作品になんともいえない非現実感を与えている。

いよいよ、カーツ大佐と対面。
多数のカンボジア人を率いて、河に面した要塞のような土地に王国を築いているカーツ大佐。
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地形の構造、要塞部分の造形、発煙筒を使っての赤い煙、人がウワっと大勢いる様子。この雰囲気作りが見事。
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そこら中に、死体がつりさげられいたり、転がっていたり、異様な雰囲気。繰り返すが、この雰囲気作りがあまりに秀逸。
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人がうじゃうじゃいて、こちらとコミュニケーションがとれないとなると、自然と底知れぬ不安感が湧いてくるもの。

現地の子どもたちは無邪気。牢に閉じ込められたウィラードを隙間から覗く顔には、悪意がない。それが逆に怖くもある。
子どもたちは異分子を恐れない。

ウィラードの部下のうち、フランス語が話せる”シェフ”はあっさりと殺される。その生首を、手が後ろ手に縛られた状態のウィラードの膝の上へカーツが置くシーンは、ビジュアル面+精神面でいちばんグロいシーンだった。裏を返すと、全般的にグロいシーンはだいぶ抑えている演出。

王国に滞在していたカメラマン(デニス・ホッパー)は、カーツ大佐をあがめている。
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偉大な詩人だとも評されているカーツ大佐。
静かなキャラクターとして描かれていたからだろうか、映画を観終わって残る彼の印象は意外と薄い。

リーダー性、カリスマ性だけでなく、繊細さも持ち合わせていそうな悩めるカーツ大佐。
そこに終止符をうつ、ウィラード。

カーツ大佐の軍へのレポートにもあったが、「優秀なチームが組めればもっと少ない人数で戦果をあげることができる」ということがよくわかる、兵士たちの描かれ方だった。
慌てっぽく、感情のコントロールができない多くの兵士たちが最前線で戦っている。到底一般企業でちゃんとやっていける人間たちには見えない。
逆にいうと、そういう人々じゃないと戦場の最前線になんて行ってられないのかもしれないが。

 
最後にバージョン違いのチラシ・DVDデザインを紹介。
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日本版。比較的控えめな宣伝文句。

製作: フランシス・F・コッポラ
監督: フランシス・F・コッポラ
脚本: フランシス・F・コッポラ、ジョン・ミリアス
原作: ジョゼフ・コンラッド
撮影: ヴィットリオ・ストラーロ
美術: アンジェロ・P・グレアム
音楽: カーマイン・コッポラ
衣装: ノーマン・バーザ
出演: マーロン・ブランド(ウォルター・E・カーツ)、マーティン・シーン(ベンジャミン・L・ウィラード大尉)、ロバート・デュヴァル(ビル・キルゴア中佐)、フレデリック・フォレスト(ジェイ・“シェフ”・ヒックス)、デニス・ホッパー(報道写真家)、サム・ボトムズ(ランス・B・ジョンソン)、G・D・スプラドリン(コーマン将軍)、ハリソン・フォード(ルーカス大佐)、アルバート・ホール(ジョージ・“チーフ”・フィリップス)、スコット・グレン(コルビー大尉、以前ウィラードと同じ命を受けるも、ウォルターに影響され村に残っている)、ジャック・ティボー(Soldier in Trench)、コリーン・キャンプ(テリー、ミス・メイ)、ローレンス・フィッシュバーン(タイロン・“クリーン”・ミラー)、クリスチャン・マルカン(ユベール・ド・マレ、プランテーションのフランス人)、オーロール・クレマン(ロクサーヌ・サロー、未亡人のフランス人)、ジェリー・ジーズマー(CIAエージェント)、トム・メイソン(配給係の軍曹)、シンシア・ウッド(キャリー、プレイメイト・オブ・ザ・イヤー)、ジェリー・ロス(ジョニー)、ハーブ・ライス(ローチ)、ロン・マックイーン(負傷兵)、リンダ・ビーティ(ミス・オーガスト)、ビル・グレアム(慰問公演司会)
編集: リチャード・マークス、リサ・フラックマン、ジェラルド・B・グリーンバーグ、ウォルター・マーチ
製作会社: アメリカン・ゾエトロープ
配給: ユナイテッド・アーティスツ(米、1979年)、ミラマックス(米、2001年)、日本ヘラルド映画(日)
公開: 1979年8月15日(米)、1980年2月23日(日)
上映時間: 153分(劇場公開版)、202分(特別完全版)
製作費: $31,500,000(当初の予算$12,000,000)
興行収入: $150,000,000(内、日本22億5000万円)
 
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