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言わずと知れた、テリー・ギリアム監督による、かなり有名な作品。

彼の作品は、20年ほど前に『12モンキーズ』を観た程度だが、独特の質感を持った作品だったことは覚えている。

 
本作は『12モンキーズ』とは異なるテイストの作品。

ジャンルとしてはブラックコメディなのだろう。
モンティパイソンで知られるテリー・ギリアム節がしっかりと生きている。

舞台が近未来で、後世の多くの映画に影響を与えたという点では、『ブレードランナー』にも通じるものがある。が、より一層イマジネーションが豊かな世界観。

こってり目で、しつこい味つけに反発したくなる箇所もあるし、ユーモアセンスの好みが合わないところもあるが、ストーリーに目新しさはあるし、大枠の展開も嫌いじゃない。

映像、小道具、ロケーション、音楽、衣装など細部にこだわって作られていることもよくわかる。
一度観ただけでは、作り手のこだわりは到底咀嚼しきれない。またゆっくりと見返してみてもいいと思える内容だ。

以下、印象に残った箇所を振り返る。

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舞台は近未来。だが、テイストはレトロ。
電話や社内(?)での文書送信の仕組みだったり、鏡で別の部屋のテレビを見るアイデアだったり。
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映画の冒頭近く。風呂に入りながら、鏡でリビングのTVを楽しむジル(キム・グライスト)。手には吸いかけのタバコと歯ブラシを持っている。
こういう細かいところが好きだ。

ラウリー(ジョナサン・プライス)の家の、ポンコツな朝食や目覚ましの自動化システムは『バックトゥザフューチャー』や『ウォレスとグルミット』を想起させる。
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ポンコツマシーンらが作ってくれた朝食のパンにかじりつこうとするが、パンが焼けておらずやわらかいのでうまく食べられないの図。

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隣の部屋と共用のデスク。レトロな仕組みに加えてドリフ的な笑い。

登場人物の中では、比較的まともな人として描かれている”もぐり”の空調修理屋のタトルを演じるデニーロ。
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コミカルなタトル。おどおどしているラウリーとの対比が良い。
デニーロは安心感はあるが、彼の持ち味である粘着性がないのはもったいない気もした。

上のシーンでもそうだが、全編を通して、空調の配管やダクトが象徴的に使われている。
下の情報省のオフィスのシーンにもダクトがデカデカと登場している。
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上司をバカにしながらもあくせく働く情報省の労働者たち。
同じグレーのスーツに身を固め、短く切りそろえた髪型で働く彼らからは清潔感は感じられるが、主体性のない学生達のような幼さも感じる。
そういう風刺も効かせているのだろう。

オフィスで大勢が動くシーンだったり、情報省検索局のボスである常に忙しそうなウォーレン氏の登場シーンだったり、スピード感ある映像が変化をつけている。

夢に出てくる人が、現実にジルという女性として現れるというファンタジー性。
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象徴的な夢のシーン。『バードマン』的要素もある。
自分はいつもながら、こういったファンタジー色は苦手だった。
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トラックの運転手というジルの役柄には若干違和感はあるが、華奢な女性と無骨な職業とのギャップは悪くない。

 
永遠の美を手に入れようとする姿を笑いの対象ともしている。
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美容外科医に皮膚をぐいぐい引っ張られる母君。強烈なビジュアル。
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このおばさま二人はいいアクセントになっている。

主人公のラウリーがどことなく影が薄いこともあり、母の友人のおばさまの娘も含め、彼女らのほうが強い印象を残している。

デニーロはもともとはジャック・リントが演じている拷問担当者マイケル・ペイリン役を希望していたとのこと。
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本人だとバレバレなのに能面のようなお面をかぶるジャック・リント。
この小道具のセンスにもレトロさ、独自性を打ち出している。
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スターウォーズを思わせる空間。なぜに拷問をこんなロケーションで行うのかは理解不能ではあるが。

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登場シーンは多くないが、そのテンションの高さが強く印象に残る、オフィシャルなエンジニア二人(特に右の彼)。

レトロと言えば、ラウリーが乗る、この一人乗りの車はなかなか可愛い。
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最後に、バージョン違いのチラシやDVDパッケージデザインを紹介。
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ラウリーの夢見がちなところにフィーチャーしたデザイン。

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日本版。

製作: アーノン・ミルチャン
監督: テリー・ギリアム
脚本: テリー・ギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオン
撮影: ロジャー・プラット
美術: ノーマン・ガーウッド
音楽: マイケル・ケイメン
衣装: ジェームズ・エイクソン
出演: ジョナサン・プライス(サム・ラウリー)、ロバート・デ・ニーロ(アーチボルド・”ハリー”・タトル、もぐりの空調エンジニア)、イアン・ホルム(カーツマン氏、サムの上司)、キム・グライスト(ジル・レイトン、トラック運転手の女性)、マイケル・ペイリン(ジャック・リント、サムの古い友人、犯罪者への拷問担当)、キャサリン・ヘルモンド(アイダ・ラウリー、サムの母)、ブライアン・ミラー(アーチボルド・バトル氏)、ピーター・ヴォーン(ヘルプマン氏)、ボブ・ホスキンス(スプーア、政府認可の空調エンジニア)、デリック・オコナー(ダウザー、政府認可の空調エンジニア)、ジム・ブロードベント(ジャフィ医師、母の美容形成医)、チャールズ・マッケオン(ハーヴェイ・ライム、情報省検索局(Information Retrieval)の隣室の同僚)、バーバラ・ヒックス(アルマ・テレン夫人、母の友人、整形失敗)、キャスリン・ポグソン(シャーリー、アルマ・テレンの娘、母がサムとくっつけようとする)、シーラ・リード(ヴェロニカ・バトル、バトルの妻)、ジャック・パービス(チャップマン医師、アルマ・テレン夫人の美容形成医)、イアン・リチャードソン(ウォーレン氏、情報省検索局のボス)、ブライアン・プリングル(スパイロ)
編集: ジュリアン・ドイル
製作会社: エンバシー・インターナショナル・ピクチャーズ
配給: 20世紀フォックス(仏、英、日)、ユニバーサル・ピクチャーズ(米)
公開: 1985年2月20日(仏)、1985年12月18日(米)、1986年10月10日(日)
上映時間: 142分(20世紀フォックス版)、131分(ユニバーサル・ピクチャーズ版) 
製作費: $15,000,000
興行収入: $9,929,135(米、加)
 
【世間の評価】 ※2017.3.23時点
CinemaScape: 3.8/5.0 (691人) 
Filmarks: 3.8/5.0 (4,078人) 
Yahoo! 映画: 3.77/5.00 (343人)
IMDb: 8.0/10.0 (157,645人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.7/10.0 (46人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.1/5.0 (102,099人)
 
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