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ウディ・アレンの監督兼主演作品。彼が主演しているのを観るのは、『アニーホール』をDVDで観て以来だろうか。

彼の作品は結構見てきたが、彼自身が主演をやっている作品が好きだ。
役者としての彼が好きというか、監督としての彼が、役者としての彼をコントロールしてるところが好きなのだ。

本作品は一言でいえば、下ネタ祭り。
ここまでのやつはなかなかお目にかかれない。
それもウディほどのビッグネームが撮るとは。

「地球は女で回ってる」のあらすじ

ニューヨーク。これまで自分や周りの人々の私生活をネタにしてベストセラーをモノにしてきた小説家ハリーは、最近スランプに陥っていた。ある日、既に別れた3番目の妻の妹ルーシーが、自分たちの肉体関係を小説で暴露されたとして、ハリーの元に怒鳴り込んでくる。その翌日、ハリーは精神分析医で2番目の妻ジョーンを訪ね、母校で行われる自分の表彰式に息子のヒリーを連れて行きたいと頼むが断られる。仕方なく親友のリチャードと娼婦のクッキーを連れ母校に向かうが、途中で学校に寄ってヒリーをも車に乗せてしまう…

ハリーが書いたベストセラー小説は、現実の彼のまわりの話をベースにしている。
それが、まわりの人間にはバレバレ。しかも男女関係の話が満載。

現実の彼は、パッと見かっこいいタイプの男ではなく、重度な女狂い。
精神的な不安定さから、フラフラフラフラしている。
まわりの人間に、軽蔑され、数々の修羅場では罵倒されるが、口だけは達者だから、喋る喋る喋る喋る。
これぞ、ウディアレン。

彼が小説の中に作り出した世界と、現実の世界が入り乱れる。夢と現実が入れ乱れるかのように。

下ネタが嫌いというわけではないが、ここまで下ネタオンパレードだと、情緒のかけらもない。あまりにコメディで、話に引き込まれる感じにはならない。

死神だったり、地獄だったりが登場し、いよいよ現実感はなくなる。
きわめつけは、フォーカスが合わないロビン・ウィリアムス。ハリーが2ヶ月前に書いていた「俳優」というタイトルの短編ということだったが、あれはいったい何なんだ?

ユダヤ人やユダヤ教をかなりいじった内容。ウディならではだが、かなり大胆。

ストーリーだけを見たら、点数は2.75というところ。
それでもやはり自分は役者ウディアレンが好きだなあということを再認識。そのおまけで3.0の評価となった。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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冒頭、ケン(リチャード・ベンジャミン)とレスリー(ジュリア・ルイス=ドレイファス)のセックスシーン。下ネタコメディの極致。

あまり自分にはリチャード・ベンジャミンが魅力的には映らなかったので、この配役は不思議だった。しかし、あらためて考えると、1度目の結婚の時の自分のキャラクターを演じるトビー・マグワイアは別にして、2度目の結婚の時のスタンリー・トゥッチもさほどイケメンには思えず、この配役もウディ・アレンならではの好みに基づくのだろう。

 
オープニングの映像(オープニングクレジット)では、ルーシー(ジュディ・デイヴィス)がハリーの家に怒鳴りこんでくる時の、タクシーから降りて門を開けるシーンが不必要に何度も使われる。
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最近出版された本の、暴露されている自分のことを読み上げるルーシー。演じるのは、強そうな顔があまり自分は得意ではないジュディ・デイヴィス。ウディ・アレンのしょぼくれっぷりが哀れを誘う。しかし、よく喋るから哀れ感はすぐに払しょくされる。ウディが主演の映画はそのバランスが面白い。
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姉のジェーン(エイミー・アービング)がハリーに浮気されているとルーシーに話すシーンで、その相手は実は私なんだとルーシーが姉に言いそうになったところで、姉が言うハリーの浮気相手は実は自分ではなく学生だということを知り、ルーシーがショックを受けるこのシーンは悪くない。

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二番目の妻をモデルにした作品のキャラクター、精神科医のヘレン(デミ・ムーア)と、その患者であった自分をモデルとしたポール(スタンリー・トゥッチ)。
この二人の関係性は、ちょっと嘘くささが漂う。デミ・ムーアにはもっと激しくいってほしかったなあ。

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実際の二番目の妻で精神科医のジョーン(カースティ・アレイ)。患者(フロイド・レスニック)がいるにもかかわらず、ハリーに切れまくる姿はコメディの王道スタイル。

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息子のヒリー(エリック・ロイド)に、「どうして自分とパパのペニスの形は違うの?」と質問されてからの、会話が面白い。「割礼していないから形が違うんだ」「フロイトは人生にとって大切なものを二つあげた。職業の選択とセックスだ」「女性は神だ」。それに対し、ヒリーが「神は女性なの?」と聞くのが可愛らしい。同級生の母親ベス(マリエル・ヘミングウェイ)も良い表情。

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ハリーに1951年のニューヨークジャイアンツのサインボールをプレゼントするフェイ(エリザベス・シュー)。そして、ハリーはフェイに“You’re the greatest, I don’t deserve you”って言う。このセンスはウディ・アレンっぽくて好き。

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1度目の結婚をしているときの自分がモデルのハーヴィー(トビー・マグワイア)と、彼に娼婦の良さを教える、同じ靴屋で働くの先輩(アービング・メッツマン)。
トビー・マグワイアは『スパイダーマン』でブレイクする前。

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地獄のシーン。このシーンの必要性が理解できなかった。やりたい放題だ。

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自分の子どもを誘拐に近いかたちで表彰式に連れていくのも問題だが、それ以上に、娼婦のクッキー(ヘイゼル・グッドマン)を連れていき、特にそのことに本人も、友人のリチャード(ボブ・バラバン)も気にしていないというところに、不思議な空気感が生まれていた。

 
こうして見ても、人が登場し過ぎ。
ギャラが高そうなのにたいして存在感を発揮できていなかった、デミ・ムーア、ビリー・クリスタル、ロビン・ウィリアムズあたりは不要だったのでは…
そりゃあ製作費が2千万ドル(20億円)もかかるわな。

それを96分に押し込むという忙しさ。
アメリカ・カナダの興行収入が1千万ドル強にとどまったのもむべなるかなという内容。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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日本語版。オシャレな出来。

製作総指揮: J・E・ボーケア
製作: ジーン・ドゥーマニアン
監督: ウディ・アレン
脚本: ウディ・アレン
撮影: カルロ・ディ・パルマ
美術: サント・ロカスト
衣装: スージー・ベインジガー
出演: ウディ・アレン(ハリー・ブロック)、エリザベス・シュー(フェイ、元恋人)、ビリー・クリスタル(ラリー、友人。フェイと結婚)、ジュディ・デイヴィス(ルーシー 、ジェーンの妹。ハリーと不倫)、エイミー・アービング(ジェーン、ハリーの3番目の妻)、カースティ・アレイ(ジョーン、ハリーの2番目の妻。精神分析医)、ボブ・バラバン(リチャード、友人、一緒に母校での表彰式へ向かう)、リチャード・ベンジャミン(ケン、作品のキャラクター、ルーシーと不倫中のハリーをモデルにした男)、ジュリア・ルイス=ドレイファス(レスリー、作品のキャラクター、ルーシーがモデル)、デミ・ムーア(ヘレン、作品のキャラクター、ハリーの姉ドリスと2番目の妻ジョーンをモデルにした女性)、トビー・マグワイア(ハーヴィー、最初の結婚時のハリーをモデルにした青年)、マリエル・ヘミングウェイ(ベス、ヒリーの同級生の母親)、エリック・ロイド(ヒリー、ハリーとジョーンの息子)、ロビン・ウィリアムズ(メル、作品のキャラクター、ピンボケになってしまった男)、スタンリー・トゥッチ(ポール、作品のキャラクター、ジョーンとの結婚時のハリーをモデルにした男)、キャロライン・アーロン(ドリス、ハリーの姉)、ヘイゼル・グッドマン(クッキー、娼婦)、エリック・ボゴジアン(バート、ハリーの義兄)、ジェニファー・ガーナー(作品のキャラクター、エレベーターの中の女性)、ポール・ジアマッティ(アボット教授)、ビオラ・ハリス、ジェーン・ホフマン(目が悪い老婆、作品のキャラクター)、ステファニー・ロース・ハバール(ジャネット、作品のキャラクター、レスリーの姉or妹)、アネット・アーノルド(ロザリー、作品のキャラクター、ハーヴィーの妻)、アービング・メッツマン(靴屋のハーヴィーの同僚)、Sunny Chae(ハーヴィーの元へ来た娼婦)、ロバート・ハーパー(ハリーの精神科医)、フロイド・レスニック(ジョーンの元を訪れた患者)
編集: スーザン・E・モース
配給: ファイン・ライン・ピクチャーズ(米)、松竹富士(日)
公開: 1997年12月12日(米)、1998年10月31日(日)
上映時間: 96分
製作費: $20,000,000
興行収入: $10,686,841 (米、加)
 
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