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落語自体に興味はあるものの、テレビやラジオ、YouTube等を通してさえ、ほとんど高座を目にしたり耳にしたことがない。

つい最近、重い腰を上げて、地元近くで開催されていた落語会のようなものを聴きにいってみると、私は知らない落語家さんだったが、その面白さに唸らされた。

という流れで、今回は立川談志のこのドキュメンタリー作品をチョイス。
その存在には興味を持ち続けていたし、一度五反田のあたりで一人歩いている姿をお見かけしたこともあり、勝手に親近感を抱き、いつか観てみたいと思っていた。

ドキュメンタリー映画が存在する意味は、こうやって普段はなかなか接することができない世界へと触れ合わせてくれるところにある。

「映画 立川談志」のあらすじ

落語家としての実力はもちろん、過激な言動などで世間を騒がすことも少なくなかった五代目立川談志。破天荒ながらも、落語界のみならず多くの人を惹きつけ、多大なる影響を与えた。2011年11月21日に75歳で亡くなった彼の一周忌追善企画として製作されたドキュメンタリー。なんでも知っていると豪語するご隠居に長屋の八五郎があれこれ問いかける、イリュージョン落語の代名詞『やかん』(2005年10月12日 国立演芸場にて口演)。大酒飲みの夫が拾ってきた大金を浮かれている隙に妻が役所へ届ける、談志十八番の一つに数えられる『芝浜』(2006年12月2日 三鷹市公会堂にて口演)。談志らしさが存分に味わえる2席を収録。また、舞台裏やプライベートを追い談志の落語哲学に迫る。ナレーションを柄本明が担当。

映画の中には、高座のシーンがいくつか挟まれる。

第一印象は、言葉の聞きとりにくさ。
その独特の滑舌に慣れないうちは、内容がなかなか頭に入ってこない。
アドリブが多いからだろうか。きっちり用意されたセリフを読んでいるわけではない特徴が、より一層聞き取りを困難にさせる。

しかし見続けていくと、不思議と聞き取れるようになってくる。

圧巻はラスト1時間あまり、まるまる談志の代表作の人情噺『芝浜』。最初はやや眠気を催している時に観ていたのだが、だんだんその世界に引き込まれていき、眠気も飛び、登場する二人の世界に惹き込まれていく。
本当に二人が話しているのを聞いているかのように。

談志は、登場人物が勝手にアドリブで話していくと言っていたそうだが、そのぐらい登場人物の魂が感じられる世界がそこにあった。

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これは『芝浜』に入る前、ちょっと冗談をいいつつコミカルな動き。

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噺を終えて幕が閉まるまでの間、みずから拍手をしたりと愛想の良い談志。
わたしは勝手なイメージで、観客にも毒づいているような印象を持っていたから、この可愛らしい仕草には意表を突かれた。

ちなみに、AmazonPrimeで観れたのは、劇場公開時はカットされた、現代社会風刺のジョークと、晩年の落語観をより詳細に語っているインタビュー映像が追加編集されたディレクターズカット版。
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インタビューシーンはこんな感じで、オシャレな談志師匠の様子が伺える。話はこれまた聞き取りにくいわけだが…

その著作「立川談志・最後の落語論」から映画の中で引用されていた部分が印象に残ったので以下に記す。

落語とは、何だ。(中略)
寄席という、独特の空間で、
昔からある作品を江戸っ子の了見で演る。
己のギャグ、自我、反社会的なこと、
それらを江戸の風の中で演じる。
非常に抽象的だが、そうとしか言えまい。
「江戸」という”風””匂い”の中で演じるということだ。

腑に落ちる表現。談志の落語だけでなく、他の高座を観る際には、これを思い出したい。

なお、談志の落語の魅力は垣間見えたし、観たかいはあったとは思えるが、果たしてこれがドキュメンタリー映画として成立しているかというと、物足りなさは感じた。

監督: 加藤威史
出演: 立川談志、柄本明 (ナレーション)、松岡ゆみ子
編集: 加藤威史
配給: 松竹
上映時間: 110分
キャッチコピー: 「芸の神はこんな処か、もう少し楽しませてくれてもいいのに-立川談志」
 
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