doingtime

崔洋一の監督作。

最近はまったく観れていなかったが、『月はどっちに出ている』と、『犬、走る』の90年代に撮られた2作の印象がかなり強く、いずれも自分好みのテイストだったので、本作にも期待していた。

 
冒頭のミリタリーシーン。ややテンポもまったりとしているし、主演の花輪を演じる山崎努も慣れないアーミー仕様のためか、もしくは歳のせいか、本来のキレが感じられず先行きが不安になる。

しかし、タイトルのとおり、話が刑務所の中に移ってからは、不安を一掃する内容となり、胸をなでおろした。

 
花輪のキャラクターが、予想に反してコミカルなのがいい。特にナレーションがいい。刑務所の中という、思ったことを口に出せない環境において、彼の心の中の声がピリリと効いてくる。

冷静に刑務所の生活を傍観しているだけだと、いたたまれない気持ちになりがちなところ、花輪の力加減の抜け方により、クスっとさせてくれるシーンが多い。

 - ad -

例えば、軍隊のように、時々怒鳴られながらする行進。
doingtime_04
看守から対等な人間として扱われていないこともあり、モヤモヤっとした気持ちにさせられる。
(メイキングによると、役者たちは息が合って行進のクオリティが高くなることに気持ち良さを感じていたらしいが…)

そこに、花輪のキャラクターが一服(というか、全服)の清涼剤となる。
doingtime_03
「願います!」 といって手をあげ刑務官に用件を伝えるのが苦手だったり。

doingtime_06
懲罰房を居心地良く感じ、エンジョイしていたり。懲罰房に初めて入ったときに、「なかなか軽やかな感じで、いいじゃないの」と心の中で言うセリフが秀逸。

 
花輪だけでなく、みんな美味しそうに飯を食っている。
こんなに”食”にフィーチャーしている内容だとは想像だにしなかった。
doingtime_01
楽しみの少ないムショの中で、数少ない歓びが食事なのだろう。

孤独のグルメで今やかなりの有名人となった松重豊さんは、美味しそうに食べる姿に、その片鱗がうかがえる。とくに待ちに待った「パンの日」に、パンに小倉あんをかけて食べる表情は絶品。

doingtime_02
圧巻は正月の料理の回想シーンだが、本当にこんなに豪華なのだろうか? 木下ほうか演じる受刑者の記憶力のいいこと。口から子気味良く出てくるメニューの数々に笑ってしまう。

doingtime_05
免業日に昼寝している様子を上から撮った絵。布団が緑と赤の縞模様で味があった。

雑居房で生活をともにする五人(作中では「五匹」と表現される)からは悲壮感は一切伝わってこない。看守に一度叱られるが、まさに修学旅行に来ている学生のよう。その一因に彼らが坊主+作業服のような囚人服の出で立ちで、戦時中の若い兵隊のような風貌(香川さんがその筆頭)だということがあるだろう。
最初何て言ってるか聴き取れなかったが、 香川さんが「ビューだね」(「良い」「素晴らしい」という意味の北海道弁)と云う時の嬉しそうな顔も印象に残る。

 
そのほか、刑務所の中の暮らしの描写は興味をそそった。

・作業中にトイレを使う場合は、「用便願います!」といって看守から許可を得る。
・部屋でのシェーバー使用は許されている。風呂場で安全カミソリを使わないですむ分、ゆっくり湯船につかれる。
・ボタンがとれたときは、針糸を借りて、自分で縫う。
・バットを使って野球をすることも許されている。(危険ではないのか?)

などなど。

ワンシーンのみの登場だったが、窪塚洋介はいつも通りの、窪塚節を披露してくれていた。彼はサイコな凶悪犯役も似合いそう。

全体的に、刑務所の中の話とは思えないほど穏やかなストーリー。挟まれるピアノソナタも穏やかさの醸成に一躍をかっている。
ただ、短編を合わせた構成になっているということもあり、全部を見終わったあとの印象は薄い。そこだけちょっと残念ではある。

製作総指揮 石川富康 / 岩城正剛
製作 若杉正明
監督 崔洋一
脚本 崔洋一 / 鄭義信 / 中村義洋
原作 花輪和一
撮影 浜田毅
美術 磯見俊裕
音楽 佐々木次彦
衣装 鳥野圭子
出演 山崎努(花輪) / 香川照之(伊笠、おぼっちゃん) / 田口トモロヲ(田辺) / 松重豊(仁議の小屋) / 村松利史(竹伏) / 斎藤歩(工場担当の看守) / 伊藤洋三郎(掃夫友田、看守に媚びる男) / 大杉漣(ティッシュマン) / 窪塚洋介(浜村) / 椎名桔平(医官) / 林海象(藤島が懲罰房行きになった時に小屋にその原因をクロスワードの雑誌を指差して教えた男) / 木下ほうか(大内) / 長江英和(岸田、ハナワ曰く「暗くて好感が持てる」) / 戸田昌宏 / 森下能幸(原山、しょう油ご飯好き) / 黒沼弘己(それじゃさま) / 草薙良一(藤島、他の受刑者のクロスワード雑誌に許可なく答えを記入し懲罰房行きに) / 遠藤憲一(ミリタリー中田) / 小木茂光(ミリタリー佐伯) / 恩田括(ミリタリー木下) / 浅見小四郎(ミリタリー佐藤) / 栗田茂(ミリタリー田村)
 
【世間の評価】 ※2016.10.18時点
CinemaScape: 3.5/5.0 (91人) 
Filmarks: 3.7/5.0 (992人) 
Yahoo! 映画: 3.92/5.00 (126人)
IMDb: 7.2/10.0 (262人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (-人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.7/5.0 (87人)
 
@DVD