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ガス・ヴァン・サント監督作。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』や『誘う女』などを90年代に観て以来、彼の作品には触れていなかった。

本作はカンヌで話題になっていたうえ、少女が少年の頬にキスをしている有名なジャケットデザインが印象にずっと残っており、いつか観たいと思っていた。

 
90分にも満たない短い作品。

1999年にコロラド州で起きた、生徒二人によるコロンバイン高校銃乱射事件がモチーフとなっている。

何人かの人物にスポットがあてられているが、それぞれのキャラクターはさほど深掘りはされない。犯人の二人も含めて。

当日、事件が起こるまでの人の動きを、それぞれの登場人物の視点で、時間が行きつ戻りつしながら話は進む。

映像は美しい。
長回しも多く、ピントの合わせ方も極端。特殊なレンズや撮り方も駆使していそう。

アメリカの田舎の、平和な高校のリアルな姿も垣間見れる。

銃が簡単に手に入ることの怖さは、『ボウリング・フォー・コロンバイン』と一緒に見ると、よくわかる。

説明的ではない作品。不条理を描きたいことはしっかりと伝わってくるが、よくわからない部分も多い。だからこそ考えさせられる。

大筋を理解したうえで、もう一度通しで観てみようかなと思える映画だった。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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登場人物があまり深掘りされない中で、それでもスポットが多く当たっていたのは二人。

一人はジャケットの写真にも象徴的に使われているジョン。
もう一人は、犯人の一人で、主犯であるアレックス。

プリン状態になっている金髪に、黄色いTシャツのジョン。この見た目の印象の強いこと。
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涙するジョンの頬にキスするアケイディア。一番有名なショット。観ている最中は「ん?」と思ったが、なんだかんだ言ってこのシーンは美しい。

彼が泣いていた姿には観ている時はピンと来なかった。おそらく、どうしようもない父の状態を悲観してのことだろうが。
また、ジョンとアケイディアの関係性はわからないが、こういうシチュエーションでは、彼女彼氏の仲でなくとも、優しく頬にキスをするのが彼らにとっては自然なことなのかもしれない。
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写真部イーライに写真を撮らせてと言われ、お茶目に応えるジョン。平和な光景。

この映画では、登場人物の後ろをカメラが追いかけていく長回しのショットが多用されている。
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廊下を歩くジョンの背後からのショット。まるで観ている自分もその空間にいるような、もしくは、ゲームをしている操作者のような感覚に陥る。

主犯のアレックスは、学校でいじめられている。どちらかというと内向的な性格の持ち主として描かれている。
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食堂でのアレックス。純粋な表情。
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自宅で『エリーゼのために』を弾くアレックス。彼の繊細さを現している。しばらくはこの曲を聴くたびに、この映画を思い出しそう。
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食堂の何かの構造をメモしているのを見た級友に尋ねられるも、くったくなく「あとでわかるよ」と受け応えるアレックス。

これら、それまでの日常における穏やかで繊細なアレックスの姿と、いざ殺人鬼と化したアレックスとの間に、連続性がないことに驚かされる。

犯人の相方は短い金髪のエリック。パッと見だと彼のほうが主導権を握っていそうだが、そうではないし、実際彼はアレックスに殺されてしまう。
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テロ決行の前にシャワーを浴びる二人。キスしたことないんだと、シャワールームの個室でキスをする。
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装備を持ち学校に乗り込み、廊下を歩く二人。表情には、いまだ非日常感がない。
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殺戮がひと段落したところで食堂のイスに座り、置いてあった誰かのスープを飲むアレックス。

彼のキャラクターには、知らず知らず関心を抱いてしまう。
なお、射撃能力がやたら高い点が、比べてもしょうがないが、先日観た『タクシードライバー』での射撃能力が低いロバート・デ・ニーロと好対照ではあった。

これ以外の登場人物を見ていこう。
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体育で短いパンツを履くのをいやがる、ダサくて要領の悪そうなミシェル。
しかし、彼女は作品に強いアクセントを与えている。
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写真部のイーライ。よくよく見るとかなりのイケメン。フィルムをチェックしたり、暗室で現像したりする姿に単純に興味を持った。

このミシェルが図書館で一番に殺され、次はイーライが犠牲となる。
それも、恨みをかったのではなく、たまたまそこにいたから。
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ダイエットのためにトイレで吐く三人娘。これがアメリカの日常か。
そして、彼女らもトイレで撃たれる。
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美男美女カップルのネイサンとキャリー。彼らは映画のラストで、隠れているところをアレックスに見つかり、銃口を向けられる。

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逃げずに犯人のほうに近づいて行く黒人のベニー。このショットも後ろから。慌てないのは良いことだが、彼の行動はあまりに無防備過ぎた。正義感が強すぎたのだろうか。

 
こうして、各シーンを振り返ってみると、実験的な撮影手法や、演技のさせ方が、リアルな高校の空気と、日常と狂気の境目のなさを際立たせることに成功していることが、よくわかる。

 
最後に、バージョン違いのDVDジャケットデザインを紹介。
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フランス語版。この後姿を使うセンスに共感してしまう。ジョンの背中に、本当はTシャツの前にプリントされている牛のシルエットが使われている。

製作総指揮: ダイアン・キートン、ビル・ロビンソン
製作: ダニー・ウルフ
監督: ガス・ヴァン・サント
脚本: ガス・ヴァン・サント
撮影: ハリス・サヴィデス
美術: ベンジャミン・ヘイデン
出演: アレックス・フロスト(犯人、黒髪)、エリック・デューレン(犯人、金髪)、ジョン・ロビンソン、エリアス・マコネル(イーライ、写真部員)、ジョーダン・テイラー(三人娘の一人)、ブリタニー・マウンテン(三人娘の一人)、ニコル・ジョージ(三人娘の一人)、アリシア・マイルズ(アケイディア、ジョンにキス)、ベニー・ディクソン(冷静な黒人少年)、ティモシー・ボトムズ(ジョンの父)、マット・マーロイ(ルース校長)、キム・ケニー、マイケル・ポールセン(いじめっこ)、アルフレッド・オノ(Mr. Fong、図書館でミシェルに指示)、エリス・ウィリアムズ、ネイサン・タイソン(モテる男)、キャリー・フィンクリー(ネイサンのガールフレンド)、クリスティン・ヒックス(ミシェル、ダサい女の子)
編集: ガス・ヴァン・サント
配給: 東京テアトル/エレファント・ピクチャ(日)
公開: 2003年10月24日(米)、2004年3月27日(日)
上映時間: 81分
製作費: $3,000,000
興行収入: $11,227,336
 
【世間の評価】 ※2017.3.1時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (132人) 
Filmarks: 3.7/5.0 (7,754人) 
Yahoo! 映画: 3.84/5.00 (270人)
IMDb: 7.2/10.0 (72,925人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.1/10.0 (156人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.6/5.0 (58,897人)
 
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