funnygames
観たら高い確率で嫌な気持ちになる映画だということ、そして、一般的な映画ファンの支持はあまり得られていないことを知った上で、それでもいつかは見ないわけにはいかないだろうと思い続けていた作品。

 
しかして、前評判通り、嫌な気持ちにはなった。かつ、観て良かったとも思えた。

 
まず、犯人二人のやり口は見事。嫌な感じで迫り、相手をキレさせそこに乱暴を働き、彼らの論理をまくしたて、被害者側に自分らに非があったかのように少なからず思わせる手口。

際どいシーンは見せない演出。殺人シーンはもちろんのこと、激しい暴力シーンやヌードですら見せない。これが効果的なのかは評価がわかれるような気はした。

細かい部分には納得できない部分がいくつかあったが、気味悪さをとことん尖らせているという点においては、十分堪能することができた。
そう冷静に言えるのも、観てちょっと時間を置いたからだろう。観終って直後は、その世界観から抜け切れずに軽い放心状態になってしまうほどの力を持つ作品だった。

なんだろう。言うなれば現実味のある『時計じかけのオレンジ』といったところだろうか。

以下、ネタバレあり。

 
冒頭、別荘へ向かう車内のシーン。CDで何をかけたかを当て合う他愛もないゲームに興じるアナ(ズザンネ・ロタール)とゲオルグ(ウルリッヒ・ミューエ。なんとこの役者さん、『善き人のためのソナタ』でキーを握る役割を果たしていた方だった)の夫婦。のちのち違うゲームに巻き込まれるという暗示にもなっているのだろう。

撲殺した犬の死骸の場所を、主犯格のポール(アルノ・フリッシュ)がアナに教えるシーンでも、遠ざかると「寒い」、近づくと「暖かい」とゲーム方式で伝える。その発想自体に胸糞が悪くなるシーンだ。

 
静動のメリハリをつけた映像はうまく機能していた。
例えば、犯人らが家を出ていったあとに、ソファでしばられたままかたまったアナの様子を引きで撮っている映像。もしくは、アナが助けを求め外を駆けずり回ってる頃、キッチンでゲオルグが、濡れて動かなくなった携帯の電池をドライヤーで乾かしつつ、ふと近くにあったパンをちぎって放心した表情で食べている映像。また、屋敷がライトアップされている外観の映像。などなど。

 
画面に向かって話しかけてくるポール。「ここで終わったら映画の尺に足りないんじゃないか?」のようなセリフ。リモコンで巻き戻させるギミック。
この三つについては、犯人の気味わるさを損なっているという点ではマイナスな気はしたが、この映画を理解しにくくし混乱を誘っているという点ではプラスに働いているのだろう。

 
子どものスコースキーを安易に見張りをつけずに上の階に放置したり、一旦夫婦ふたりを置いて出て行ってまた戻ってきたりと、行動の計画性が杜撰。なぜ家の中でアナを殺さなかったのかも意図不明。船に落ちたナイフの伏線も大して生きていなかったりと、観ている側の頭に何個も細かいクエスチョンマークを埋め込んでくる。 それもストーリー全体への理解や興味は損なわない範囲で。ただ、それを我々が好むのか、という問題はある。

 
少ない登場人物だが、役者陣もみな強烈な印象を残した。
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ポールの嫌な感じな雰囲気の発し方も悪くないが、太っちょピーター(フランク・ギーリンク)の気味の悪さは際立っていた。特に、アナやゲオルグに向かって、「卵をください」と無遠慮に迫るさまは今思い出しても、やや気持ちが悪くなるほどの負のパワーを持っている。

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絶望感に満ちたアナの表情は、観ている者を苦悩に引きずり込む。このシーン以外にもつらそうな表情は多数存在するが、何度も観たくなる代物ではないので、比較的穏やかな部類のこのシーンをピックアップするにとどめる。

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被害者そっちのけでリビングでTVを観賞するピーター。モータースポーツ番組のエンジン音と解説が呑気に部屋に流れているのと、現場の悲惨さのギャップが激しかった。

 
人間の嫌な部分を引き出し眼前に突きつけ、それを見た人がどういう風に感じるのかについて、研ぎ澄ましている映画につい惹かれてしまう趣向が自分にはある。気持ち悪くなる部分ももちろんあるが、隠しきれない人間の根元的な部分をむき出しにしてくれる本作は、そういう意味で観た甲斐はあったといえる。ストーリーがわかったうえでももう一度観たいとは決して思わないが。

製作総指揮: ファイト・ハイドゥシュカ
製作: ファイト・ハイドゥシュカ
監督: ミヒャエル・ハネケ
脚本: ミヒャエル・ハネケ
撮影: ユルゲン・ユルゲス
美術: クリストフ・カンター
衣装: リジー・クリストゥル
出演: ズザンネ・ロタール(Anna) / ウルリッヒ・ミューエ(Georg) / アルノ・フリッシュ(Paul, chief culprit) / フランク・ギーリンク(Peter) / ステファン・クラプチンスキー(Schorschi, son) / ドリス・クンスツマン(Gerda, fat lady) / クリストフ・バンツァー / ヴォルフガング・グリュック / ズザンネ・メーゲル / モニカ・ザリンガー
 
【世間の評価】 ※2016.10.12時点
CinemaScape: 3.0/5.0 (41人) 
Filmarks: 3.5/5.0 (3,171人) 
Yahoo! 映画: 3.49/5.00 (215人)
IMDb: 7.6/10.0 (44,845人)
Rotten Tomatoes(Critics): 6.7/10.0 (27人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.9/5.0 (21,997人)
 
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