倉本聰 屋根

いつか一度は観たいと思っていた、倉本聰の芝居。

今回の公演を最後に、現場からは引退するということを知り、このタイミングで観に行くことになった。

チケットをとるタイミングが遅かったため、はじっこのほうの、決して観やすい席ではなかったのと、運悪く後ろの席の人が鼾をかいて寝ていたのが残念ではあったが、観にいったかいはあった。

 
ストーリーの舞台は、北海道の富良野。
大正時代から平成にかけての家族のお話。

歌が印象的に使われている。
熊のハナコを追い払うために新婚初夜の夫婦が歌ったり、兄弟姉妹仲良く屋根の上で歌ったり。

こっからだー、こっからだ

のフレーズが印象に残る。
歌が持つ魔力のようなものを、わかりやすく、かつ力強く伝えてくれる作品である。

 
赤紙が届くが、人を殺すのは嫌だ、自分は逃げると言って、赤紙を破く兄。それを町長に密告する男。
兄は拷問を受けた上、戦地に送られる。

男の長男と次男は招集され戦地へ赴くが、二人とも帰らぬ人となる。三男も招集を受けるが、屋根の上で服毒自殺。

男は、兄を密告したことを悔いながらも、前向きな妻と、三人を失いながらも、子沢山がゆえ、他の子供たちに囲まれながら生きていく。

長女のユウコには、婿養子をとらせて農場を継がせたかったがそうもいかず、ユウコは炭鉱に勤める男のもとへ嫁ぐ。その旦那ができた男で、その後、炭鉱の時代が終わり福島の原発へと職を変える際の言葉が、男の心を打つ。

誰の責任でもありません。ただ我々は川の流れに流されるしかないんです。

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戦争への反対、過剰に山を切り開いて農場にすることへの反対、借金しまくって農業を拡大していくことへの反対、流行に乗ってどんどん新しいものに買い替えていくことへの反対、家族がバラバラに生活することへの反対。

北の国からや、他の倉本聰が手がけるドラマや映画でも貫かれていることが、ここであらためて主張されていた。

主演二人の、コミカルながらも、人を惹きつけるしっかりとした演技と、そこの演出は見事としか言いようがない。

屋根に神様が集う。森の動物だったり、死んだ三男だったり。子供たちにが集まって歌を歌ったり。空知川の氾濫のときも、夫婦は屋根に上って、助けを待った。だからタイトルも屋根。大事なものが集う象徴なのだろう。

ストーリーとしては、奇抜なものはないし、驚きもない。
皆が心の中ではわかってはいることを、あらためて、丁寧に教えてくれるのだ。

ただただ、倉本聰の「遺言」をしっかりと聞き届けた気がする。

脚本・演出:倉本聰
出演:加藤久雅、熊耳慶、森上千絵、納谷真大、水津聡、久保隆徳、前有佳、有門正太郎、東誠一郎、久保明子、杉吉結、松本りき、富由美子、大山茂樹、末広透、金井修、長谷川奈緒美、町屋圭祐、芳野史明、黨清信、三池優、村田純、松本ふみか、竹原 圭一、能登屋駿介、三須杏奈
 
@新国立劇場 中劇場