gloria_en

80年代を代表する傑作の一本として名高い本作をようやく見ることができた。

 

オープニングのタイトル&スタッフロール(オープニングクレジットと言うのかな)は水彩画の上で繰り広げられ、音楽もゆったりとしたラテンミュージックで、普通の映画とは違うことがすぐに知れる。

舞台はニューヨーク。地下鉄もバスも一部のタクシー(全編通して交通機関が多く登場する)もどことなく汚らしく、間違いなく治安が悪い頃だったことがわかる。

マフィアの会計係が横領したうえ、情報をFBIやCIAにも漏らしていたということで、マフィアの追っ手が迫りパニックになる家族。当人も妻も、妻の母親も、子どもたちも状況を正しく理解しておらず、もたもたしてるうちに…

長男のフィル(ジョン・アダムズ)だけはわけもわからず、父親に言われるがままマフィアのもろもろの記録が書いてある手帳を渡され、その家にたまたま訪ねてきた、同じマンションに住む子ども嫌いのグロリア(ジーナ・ローランズ)のもとに預けられる。

そこから二人の逃避行が始まる。

ジャケットやチラシデザインから受けるイメージに加えて、ジーナ・ローランズが強い女を演じていることは多くの映画評で何度も目にしてはいたが、実際大筋のストーリーはその方向で進む。
銃を撃つグロリアの姿は毅然としていて美しく、絵になる。

以下、ネタバレあり。

 - ad -

アクションやサスペンスがメインというよりは、グロリアとフィルの関係性にも強く焦点を当てている。

フィルが6歳で、ほんとに幼い子どもながら、変にプライドが高くてつっかかってくるのが、時にたくましくもあるが、たいがいは鬱陶しく感じてしまう。
グロリアも、置かれた立場のヤバさに加え、反抗してくるフィルにしばしばうんざりする。
二人の距離感はくっついたり離れたり。

最終的に、グロリアは覚悟を決め、件の手帳を組織の人間(Tony、かつての恋人)に渡しにいき、この問題を終わらせようとする。しかし、組織は見せしめの意味でも安全のためにもフィルも殺さないと気が済まない。フィルの居場所は明かさず私を殺すなら殺してと言うグロリア。組織の建物を後にしようとすると、手下どもが一斉にグロリアを殺そうとする。
(降りていくエレベーターに向かって、エレベーターホールのガラスもしくは扉を破り、上から何発も発砲するシーンはクールだった)

なんとか逃げ切り、無事ピッツバーグのセメタリーで落ち合う二人。

ストーリーだけをさらうと、さほど変わった話ではない印象。

しかし、上にも書いたとおり、グロリアとフィルのやり取りに多くの時間を割いていること。また、荷物は少なめなのに、グロリアの衣装もいつも違ってオシャレでビシッとしてること(寝巻きですら赤のガウンが似合っている。一方、風呂嫌いなフィルは風呂にも入らないうえ、最初っから最後までずっと同じ服を着ていることとのギャップが凄い)。さらには、一見銃とは縁遠そうな風情のグロリアが、瞬時に戦闘態勢に入り強者の雰囲気を醸し出していること(周りに大勢人がいる地下鉄の中、レストランの中でもグロリアは平気で銃をマフィアの連中らに向けて突きつける。これが当時のニューヨークでは日常なのか?いやいやそんなはずはないだろう)、などにより、オリジナリティあふれる、独特の空気感を生み出す作品になっている。

gloria_01
赤いガウンが似合うグロリア。このシーンに限らず、グロリアの喫煙シーンは多く登場し、それは彼女の心境を表す鏡となっている。

gloria_03
美しい立ち姿。黒の衣装も映える。

ジーナ・ローランズは撮影当時、おそらく50代半ば。映像を通してみても若くないことはわかるが、その彼女を主人公に、汚れたニューヨークの街を舞台に、美しい衣装で着飾り、マフィア相手に勇敢に闘うこの映画を作り上げたジョン・カサヴェテスのセンスは大したものだと感心せずにはいられない。

決して、ただの、強くて優しい中年女の話ではなかった。

ただし、自分にとっては、フィルの面倒臭さがどうしても鼻につき馴染めないところがあったので、高い評価とはいかなかった。

最後に、日本版のDVDパッケージの写真を。
gloria
上の、英語版のデザインのほうが洗練されているとは思うが、子どもの頃からこの構図のポスターを見ていた自分としては、こっちのほうがしっくり来る。

製作: サム・ショー
監督: ジョン・カサヴェテス
脚本: ジョン・カサヴェテス
撮影: フレッド・シュラー
音楽: ビル・コンティ
衣装: ペギー・ファレル / エマニュエル・アンガーロ
出演: ジーナ・ローランズ(Gloria Swenson) / ジョン・アダムズ(Phil Dawn) / バック・ヘンリー(Phil’s dad) / ジュリー・カーメン(Phil’s mom) / ジェシカ・カスティーリョ(Phil’s elder sister) / バジリオ・フランキーナ(Tony Tanzini) / ロナルド・マッコーネ / トム・ヌーナン / レイ・ベイカー(Assistant Bank Manager) / ジョン・P・フィネガン(Frank) / ローレンス・ティアニー(Broadway Bartender) / ビル・ウィレイ(Bellman) / ヴァル・エイヴリー / エドワード・ウィルソン
 
【世間の評価】 ※2016.9.9時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (300人)  
Yahoo! 映画: 3.98/5.00 (129人)
IMDb: 7.1/10.0 (6,090人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.0/10.0 (22人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.7/5.0 (4,618人)
 
@DVD