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東西ドイツ。ベルリンの壁の崩壊。
期せずして、先日観たばかりの『カルロス』とかぶる部分があった。

また、『ぼくたちの家族』『湯を沸かすほどの熱い愛』に続いての闘病もの。今月はやたらと闘病の要素を含む映画との出会いが多い。

家族が置かれている状況のシビアさ。
社会の大きな変化。
そこに、ファンタジー要素を盛り込んだ、ほっこり系のお話。

車やバイクをはじめ、無骨な社会主義デザインには心躍るものがあった。

しかし、ストーリーの根幹に関わる、母親が本当に死にそうなのかという点でリアリティが低く、主人公アレックスの頑張りにも共感できずじまい。
医者の態度も怪しい。

もちろん、それこそがファンタジックなこの映画の持ち味だということは頭では理解はしていた。
が、どうにも性に合わず。

以下、印象に残ったシーンを振り返る。ネタバレあり。

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一番ハッとさせられたのは、89年までは東ドイツはこういう国だったんだよなあ、というところ。
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東ドイツ40周年記念式典。”DDR”(Deutsche Demokratische Republik)という文字に懐かしさを感じる。
ちなみに西ドイツはBRD(Bundesrepublik Deutschland)。

父(旦那)に捨てられ、社会主義と結婚したと息子に思われていた母。
その母が心臓発作で倒れ、意識を失っていた間に、東西ドイツが統一。
母にショックを与えてはいけないと医者に言われていたアレックスは、東西ドイツが統一したことを母に知らせないよう奮闘する。

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古いビンを手に入れ煮沸消毒し、ステッカーを貼り直し、東ドイツ時代の瓶詰め等を作り出すことに苦心するアレックス。
工作ごころをくすぐるシーン。

また、テレビが観たいという母を欺くために、同僚(デニス・ドマシュケ)の力を借り、自前でニュース番組を撮影し、ビデオで放送したりもする。

母を心配し愛するがあまりの行動ともいえるが、もともと母が心臓発作になったのは、自分がデモに参加し捕まるところを母親が目撃したからという負い目もあるのだろう。

主役のアレックスを演じるダニエル・ブリュール。どこかで観たことがあるような顔だなと思っていたら、『イングロリアス・バスターズ』で育ちの良さそうなドイツの英雄兵士役を演じていた彼だった。
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看護師のララの技能試験か何かのためにギブスの実験台になるアレックス。
ナースと付き合うとこういう事があるのか。微笑ましい。
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ララを演じるチュルパン・ハマートワは、役柄と同じく、実際にロシア出身の女優さん。

 
社会主義から資本主義に変わった東ドイツに、当時何が起こったのかについて、ほぼ私は無知だった。

まず、西側の商品、お金がなだれ込む。
東ドイツマルクが使えなくなる。

西側商品の象徴としてはコカコーラとバーガーキングが登場。
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バーガーキングに勤務する姉(マリア・ジモン)。なぜマクドナルドじゃないのだろう。当時実際にバーガーキングが進出していたからか、それとも単なるプロダクト・プレースメントか。

ヘリが運ぶレーニン像と遭遇する母。
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ここは、フェリーニの『甘い生活』へのオマージュだろうか。よかった。

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母に目隠しをし、家族全員で森の家へ行く際に乗っていた新車。ロシアっぽいデザインだなと思っていたら、東ドイツのVEBザクセンリンクというメーカーのトラバントという車種だった。
ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、ポルシェ等のイメージが強いドイツ車だが、東ドイツでは、ロシア車のような無骨な車も作っていたと知って親しみが湧いた。

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飲んだくれの、母の元上司を乗せて。このスクーターの形も色も絶妙。

 
そもそも社会主義が何を目指しているのか、資本主義と比べると何が優れていると考えられいるのか(もしくは、当時考えられていたのか)。
アレックスが制作したニュース番組では、”無駄な競争がない社会”と評していた。
子どもが歌を歌うのも、悩みを吸い上げて投書するのも、社会主義的なことなのだろうか。

いまいち共感できないまま終わってしまったため、低評価となってしまったが、ほのぼのとしたエンディングは悪くはなかった。
“ロケット”が、作品を貫く一つのモチーフとなっていたことも含めて。

 
最後に、日本版のDVDパッケージデザインを紹介。
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映画を観るまではこのパッケージの印象が強く、アレックスが若く見えたため、てっきりこの映画は子どもの話なのかと思っていた。

製作: シュテファン・アーント
監督: ヴォルフガング・ベッカー
脚本: ベルント・リヒテンベルク、ヴォルフガング・ベッカー
撮影: マルティン・ククラ
美術: ローター・ホラー
音楽: ヤン・ティルセン
衣装: エンネ・プラウマン
特撮: アンドレアス・シェレンベルク
出演: ダニエル・ブリュール(アレクサンダー・ケルナー/アレックス)、カトリン・ザース(クリスティアーネ・ケルナー、母)、マリア・ジモン(アリアネ・ケルナー、姉)、チュルパン・ハマートワ(ララ、恋人)、フローリアン・ルーカス(デニス・ドマシュケ、同僚、映画マニア)、アレクサンダー・バイアー(ライナー、姉の新しい恋人)、ブルクハルト・クラウスナー(ローベルト・ケルナー、父)、ミヒャエル・グヴィスデク(Klapprath、母の元上司、今は引退してアル中気味)、シュテファン・ヴァルツ(ジークムント・イェーン、東西ドイツ両国で初の宇宙飛行士)、 Christine Schorn(Frau Schäfer、母の友人、投書の代筆)
編集: ペーター・R・アダム
配給: ギャガ
公開: 2003年2月13日(独)、2004年2月21日(日)
上映時間: 121分
製作費: € 4,800,000
 
【世間の評価】 ※2017.2.21時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (197人) 
Filmarks: 3.7/5.0 (5,592人) 
Yahoo! 映画: 3.99/5.00 (337人)
IMDb: 7.7/10.0 (117,780人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.4/10.0 (107人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.0/5.0 (55,558人)
 
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