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パッケージの水野美紀の顔の印象が頭のどこかに残っていて、それに加えてタイトルの「恋の罪」というワードの強さに惹かれてチョイス。

オープニングのクレジットを見て、ようやく園子温の監督作ということに気づく。2017年の1発目が園子温作とは、今年はどんな年になることやら。少なくともエキサイティングには過ごせそうな予感。

 
冒頭から、いかにも園子温っぽい、グロめの映像をかましてくる本作。
黒沢清と相通じるものがあるが、ディテイルの美意識が異なる。
園子温のほうが直接的な映像表現を好む印象。

パッケージに登場している、吉田和子(水野美紀)、尾沢美津子(冨樫真)、菊池いずみ(神楽坂恵)の三人を中心に話が進む。
その中でも、いずみと美津子に関わる部分が濃厚。

いずみのスイッチが押され、一介の主婦から女へと変わっていく様は見応えがあったが、一方の美津子の弾け方に受け容れられぬものがあった。これは私の好みだろう。ああいう激しいタイプが苦手なのだ。

全編通して雨が多い。この鬱陶しさ。雨漏りしている廃墟アパートの質感。そこに横たわる女。現実感はない。妄想的な要素が多い作品だ。

以下、ネタバレ含みつつ、心に留まった箇所を振り返ってみる。

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冒頭。テキストでの、「ラブホテル街は人がセックスするために来る街」という説明書き。
そうあらためて言われると、不思議なエリアだなと思ってしまう。

そして、風呂場でのラブシーン。そこからまさか全裸の水野美紀が飛び出してくるとは。
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体を張っている水野美紀。新しい領域への挑戦だったのだろうか。

水野美紀が演じる和子が、警察官でありながら不倫していて、性の奴隷一歩手前まで行っているというのは意表を突かれたが、この設定が全体の印象を薄くしてしまっている気もした。それは、和子とその旦那(二階堂智)の関係性があまり詳しく描かれていないからだろう。

ところで、和子の不倫相手を演じるのがアンジャッシュ児嶋というのはさすがにミスキャスティングではないか。彼のことは嫌いではないが、お笑いのいじられキャラのイメージがあまりにも強すぎて…

 
神楽坂恵が演じるいずみは、見終わってみると、スーパーでソーセージの試食販売をしている姿がまっさきに頭に浮かぶ。岩松了との会話がナイス。
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家で鏡に向かって、全裸で「試食いかがですか」「美味しいですよ」と繰り返すいずみ。狂気とコミカルがあいまった、ハイライトシーンの一つだろう。

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家で夫(津田寛治)と。緊張感があるいっぽうで、まるでAVにおける、絡み以外のシーンのようなよそよそしさと違和感もあり。神楽坂恵が醸し出すエロスがそう思わせるのかもしれない。

 
美津子の、細く、歳をそれなりに重ねている裸体がエロくもなく、現実感と一抹の寂しさを感じさせる。
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全般的に過剰に感じられた美津子の振る舞いではあるが、この千円札を加えているショットは好き。

愛のないセックスにはお金を介在させろという美津子のいずみへの教え。そのお金は金額が少なくてもいい。ただその金額は、男が自分につけた値段なのだと。
男はタダでヤレる女よりも、お金をとる女を蔑む。考えさせられるくだりだった。

 
本作で、いずみ、美津子に次いで印象に残ったのは、デリヘル「魔女っ子クラブ」を経営するカオル(小林竜樹)。彼の雰囲気や仕草、笑い方などが醸し出す気味の悪さ。これはもっと活かせたのでは。『ファニーゲーム』の主犯の男を凌駕する空気を感じさせてくれた。
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カオルの存在感が光る。このショットでは美津子も悪くない。

 
美津子の母を演じる大方斐紗子も素晴らしい存在感。母娘の歪んだ関係性、罵声の浴びせ合いも見どころの一つ。
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見事な表情、見事な演技。

 
その他、脇を固める役者に、内田慈さん、町田マリーさん、遠藤留奈さんら、小劇場出身の役者さんがいたのは嬉しかった。内田さんにいたってはもう小劇場出身の役者とは云ってられないぐらい、多くの作品に出ているのだろうが。

 
本作では、田村隆一の詩の中の「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」というフレーズが何度となく繰り返される。ラスト近く、いずみが強い語調で訴えかける姿は、『愛のむきだし』で満島ひかり演じる洋子が浜辺で聖書のコリント13章を語るシーンに通じるものがある。ただし、『愛のむきだし』ほどの説得力には欠けた。

 
ラスト、話は一気に進展する。

美津子の母が他の人の助けを借りながら美津子を殺害。その頭部や手、陰部を持ち帰ったというのはまあいいだろう。しかし、美津子を殺す流れには納得いかない。カオルがこの婆さんの言いなりになるのも不可解だし、彼まで殺されるのも腑に落ちない。

いずみは港のようなところで、幼稚園か小学生ぐらいの男の子二人が見ている前で放尿。

和子は前フリであったように、ごみ袋を両手に持ったまま延々とゴミ収集車を追いかけていき、たどり着いたのは事件現場の円山町。

いろいろ盛り込んではいるが、一つ一つの納得感がちょっとずつ足りなかった。

 
最後に、別バージョンのパッケージデザインを。
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これはフランス版。日本では水野美紀の知名度が高いため、あのデザインに落ち着いたのだと思うが、海外ではこうなる。こっちのほうが断然園子温っぽくて良い。

 
<<追記>>
エンドクレジットを見て、美津子を演じていたのが冨樫真だということにようやく気づいた。
そもそもこの映画を、Amazon Prime Videoのウォッチリストに追加したのは、本作に冨樫真が出ていたからだった。完全に忘れていた。
冨樫真は大好きな『犬、走る DOG RACE』 (崔洋一監督)に出ていて、それ以来気になっていた役者さんなのに、観ている最中はまったく気づかなかった。
両作の間には13年の歳月が流れている。気づかくなてもやむなし。

監督: 園子温
脚本: 園子温
製作: 鳥羽乾二郎、大月俊倫
プロデューサー: 千葉善紀、飯塚信弘
出演: 水野美紀(吉田和子)、冨樫真(尾沢美津子)、神楽坂恵(菊池いずみ)、児嶋一哉(ショウジ)、二階堂智(吉田正男)、小林竜樹(カオル)、五辻真吾(木村一男、同僚刑事)、深水元基(マティーニ真木、AV男優)、内田慈(土居エリ)、町田マリー(自分を刺した女)、岩松了(スーパーの店長)、大方斐紗子(尾沢志津)、津田寛治(菊池由紀夫)、矢柴俊博(監察医)、裴ジョンミョン(デリヘル「魔女っ子クラブ」大久保)、渡辺奈緒子(いずみ友人)、遠藤留奈(いずみ友人)、陰山泰(美津子の父)、山本亨、大高洋夫(いずみの客)、松田章(酒屋主人)、鳥山昌克(ヤクザ)、川屋せっちん、光宣(カメラマン)、山中アラタ、龍坐、斎藤嘉樹、堀之内隼人(山下智)、八戸亮、兒玉宣勝、松本雅子、吹上タツヒロ、麻美(坊主頭のデリヘル嬢)、松永裕子(ひろこ)、浜田翔子(デリヘル嬢)、小滝かれん(デリヘル嬢)、岸田茜、高橋慶子、町田佳代、仁村俊祐、恵美秀彦、田中和也、我妻三輪子、加藤裕月、尾畑美依奈(デリヘル嬢)、中谷梨紗、西川綾乃、大塚麻恵(デリヘル嬢)、三浦真由(デリヘル嬢)、瀬戸ありさ、早月れい、溝口諭、池原丈暁、村山咲希、本田英之、本田彩乃、CYNTHIA CHESTON(娼婦)、ALE MERCURI、JENNY MICALIZZI、JESSICA CLAROS DOMINGUEZ、清水優、朝岡聡
音楽: 森永泰弘
撮影: 谷川創平
編集: 伊藤潤一
製作会社: 日活
配給: 日活
公開: 2011年5月18日(仏CIFF)、2011年11月12日(日)
上映時間: 144分
 
【世間の評価】 ※2017.1.7時点
CinemaScape: 3.5/5.0 (42人) 
Filmarks: 3.4/5.0 (5,235人) 
Yahoo! 映画: 3.14/5.00 (551人)
IMDb: 6.8/10.0 (2,938人)
Rotten Tomatoes(Critics): 5.7/10.0 (16人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.4/5.0 (463人)
 
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