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国内外問わず、高い評価を得ている本作。なぜかと思ったら、理由の一つは1963年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞していることにありそう。

テーマが重そうなため、見るのを躊躇っていたが、ゴールデンウィーク中で時間があることで、ようやく観ることとなった。小林正樹監督の作品を観るのは初めてだ。

 
物語の中心となるのは、仲代達矢が演じる津雲半四郎が、井伊家の庭で切腹を行なう前に、井伊家の連中に語る話。それで惹きつけていく流れではあるが、ややまどろっこしくて、中だるみする。

その大きな要因は、武士としての体面の話が、自分にはピンと来なかったことにある。そもそも「仕官もままならず生活も苦しく、このまま生き恥を晒すよりは武士らしく潔く切腹したい。ついては屋敷の庭先を借りたい」という申し出自体、何のこっちゃという印象。

確かに、井伊家の千々岩求女(石浜朗)への対応には問題があるものの、井伊家としても浪人らにほいほい切腹されに来られてもたまらないだろうし。

津雲半四郎(仲代達矢)の怒りの根源も、武士としての誇りにあると思われる。本作を貫く価値観に自分が相容れなかったら、本作が響かずとも仕方がない。

とはいえ、美術だったり、武満徹が担当する音楽だったり、役者陣だったりがしっかりとしていて、見るべきものはあった。

以下、ネタバレあり。

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もっとも印象的なシーンは、千々岩求女の切腹シーンだろう。

普通の切腹でも印象には残ると思うが、まともには切れない竹光の脇差での切腹は衝撃的だった。何度も力一杯腹に突き立て、ようやく刺さったところで全体重を刀に押し付ける。とはいえ腹をかっさばくことはできず、介錯を頼むが沢潟彦九郎(丹波哲郎)は拒否、耐え切れぬ求女は舌を噛み切って自害する。

はじめにこのシーンを観る時は、求女がどういう思いで井伊家を訪ねたかも知らないし、なぜ竹光の剣しか持たぬのかもわからないので、身体の「痛み」の印象が強い。しかし、後になって彼の身の上を知ると、病床に伏す妻と子どもを思いつつも武士としてのプライドを守る彼の精神の「痛み」が強く感じられる。

 
役者陣の中では、仲代達矢と三國連太郎(斎藤勘解由を演じる)の存在感が際立っていた。
沢潟彦九郎を演じる丹波哲郎は背もデカいし、姿勢もいいし、顔だちもしっかりとしているし、見栄えが良く、ついつい目が行ってしまう魅力を備えている。

殺陣のシーンが、津雲半四郎 vs. 沢潟彦九郎と、ラストのクライマックスとの二つあるが、いずれも、やや不器用な、良く言えばリアルな殺陣に見えた。

また、屋敷内の壁に血糊をべったりとつけたり、血の使い方には強いこだわりが感じられた。

 
カンヌで賞をとっていることもあり、海外のポスターやDVDパッケージも凝っている。

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こちらが、英語版。

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こちらが、フランス語版。

いずれも日本版よりカッコいいデザイン。
それは日本の「Harakiri」を彼らの感性からすると不可解なものでありながらも、何かクールなものとして捉えているということによるのだろう。

英題: Harakiri
製作: 細谷辰雄
監督: 小林正樹
脚本: 橋本忍
原作: 滝口康彦
撮影: 宮島義勇
美術: 戸田重昌 / 大角純一
音楽: 武満徹
出演: 仲代達矢(津雲半四郎/つぐもはんしろう) / 三國連太郎(斎藤勘解由/さいとうかげゆ、家老) / 岩下志麻(津雲美保) / 丹波哲郎(沢潟彦九郎/おもだかひこくろう) / 石浜朗(千々岩求女/ちぢいわもとめ) / 三島雅夫(稲葉丹後) / 中谷一郎(矢崎隼人) / 佐藤慶(福島正勝) / 稲葉義男(千々岩陣内、求女の父) / 青木義朗(川辺右馬介) / 井川比佐志(井伊家使番の一人)
配給: 松竹
公開: 1962年9月16日(日)
上映時間: 133分
 
【世間の評価】 ※2016.5.2時点
CinemaScape: 4.4/5.0 (140人)  
Yahoo! 映画: 4.59/5.00 (182人)
IMDb: 8.7/10 (18,296人)
 
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