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ANAの機内にて観賞。

期せずして、前回観た『ぼくたちの家族』に続き、闘病もの。

しかも末期の膵癌で、手術のしようもなく、抗ガン剤も効かず、緩和ケアぐらいしかしようがないという段階。

その本人が、死ぬまでに家族をなんとかしないとと、奔走する。
そりゃあ泣けるに決まってるストーリーだ。

 
ダンナ(オダギリジョー)は一年前に、パチンコに行ってくるといって出たきり帰って来ない。
高校生の娘・安澄(杉咲花)はいじめられていて、学校に行きたくないと言う。

これにとどまらず、それ以外の面でも結構大変な境遇に置かれているのが、妻であり母である、双葉。その役を宮沢りえが演じている。

親を膵癌で亡くしている自分としては、涙なくして見れなかった。機内で見てさえ。
こぼれる涙をふきふき、鼻水をすすりながらの観賞となってしまった。

ストーリーとしては、いうなれば、竹内結子&中村獅童の『いま、会いにゆきます』から、ファンタジー色を抜いて、置かれている境遇を厳しくした感じ。

宮沢りえを筆頭に役者勢も素晴らしいが、本作は何よりも脚本がいい。

間違いなく、ここ一年で観た150本ほどの映画の中で、自分には一番刺さった映画だった。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返っていく。

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タイトルにもある通り、双葉の”熱い愛”がこの映画の骨子を成す。

娘の安澄も、本人には告げていないが、実は双葉が産んだ子供ではない。

一方で、自分の親とも長い間離れ離れ。どこにいるのかもわからない。
この境遇だけ端から見れば、幸せな人生を送っているとは言えないかもしれない。

それでも惜しみなく他人に愛を注ぐ。

そこに来て、まさかの末期癌診断。
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検査結果を聞く双葉。本当にいい役者さんになったなと嬉しくなる。

お湯をはっていない、銭湯の浴槽に坐り込みうなだれる双葉。
しかし、そこから立ち上がる。

まずは、旦那の居所を興信所を使って調べ、連れ戻す。
おたまで頭を叩いて旦那に流血させるが、それ以降はその間の出来事に対し一切文句を言わない。

出ていった旦那も、軽い浮気をしたことはあったが、悪い人間ではない。
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オダギリジョーが、力の抜けた役柄を飄々とこなしていた。母と娘の話が中心に来るから、男どもは邪魔にならないことも重要。

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旦那と連れ子の鮎子が家に来て、翌日の朝食の席。
双葉が、銭湯を再び営業することを宣言。

続いて、学校でいじめられている安澄の問題に手をつける。

安澄が放つ、「お母ちゃんとわたしは全然違う」「私は最下層の人間なんだから」、というセリフにこちらも胸がつまる。
構ってほしい甘えから自分を卑下するのではなく、心から自分がダメだと思っている人間もいるのだ。
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学校に行く行かないで言い合う母娘を、階段下から不安そうに見上げる父と娘。

安澄も踏ん張り、制服を隠されたいじめに対抗すべく、授業中(男子もいる)教室で下着姿になって抗議する。この姿もなかなかのインパクト。
このシーンでも、母が買ってくれた、いざという時用のおしゃれな下着を着ていたり、頑張って教室で主張した後に、朝食食べていないから母が旦那に持って行かせた牛乳を吐き出したり、母の愛が垣間見れる脚本が効いている。
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学校で戦ってきた安澄を迎える双葉。

旦那の連れ子の鮎子もいい。子どもらしさと、母親に捨てられたという心の影とが共存している。
誕生日までに、実の母親が迎えに来るという言葉を信じ、以前住んでいた部屋の前で母を待つが現れず。迎えにきた双葉と安澄とともに家に帰る。翌朝、家族のならわしにより、朝からしゃぶしゃぶ。
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その席で、敬語で、「もっと頑張って手伝うからこの家にいさせてください。ただ、お母さんのことを好きでもいいですか」、と聞く姿には涙腺崩壊。

 
安澄の実の親である君江(篠原ゆき子)と安澄が初めて話すシーンでは、耳がきこえない君江に対し手話で話す安澄。「なぜ手話ができるの?」と聞かれ、「母から、いつか役に立つから覚えなさいと言われて」と。 あまりの双葉の愛の深さに愕然とする。
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登場シーンは多くはないが、手話を使っているというところ、背負っているものから印象に残る君江。
あのポツドールの舞台で主演を務めた女優さんだとは知らなかった。

このシーンへの布石として、街中で聾唖の方を安澄が助けるシーンもちゃんと用意されていた。

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母の死が近いことを知り、母の前では涙を見せないことを約束し合う姉妹。彼女たちも成長し、強くなっていく。

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母の病床にて。えもいわれぬ表情を見せる安澄。双葉のことを「お母ちゃん」と呼ぶのも味がある。杉咲花も見事な演技を見せてくれた。

 
旦那も、妻の、エジプトに行きたいという願いを少しでも叶えるため、病院の外に人のピラミッドとスフィンクスを作る。
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それを見た双葉が泣きながら言う、「死にたくない」、「もっと生きたい」という言葉の重み。ここも、『今、会いに行きます』に通じるところあり。

そして、ラスト。
家族でやっている銭湯でのお葬式。
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メルヘンな映像だが、銭湯の浴槽に花を敷き詰め、そこに横たわる双葉。

はっきりとは描かれないが、じつはそこでこっそり火葬もし、その火で湯を沸かし、みんなで風呂に入る。
煙突からは彼女が好きな赤い色の煙がのぼる。
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そこへの布石として、霊柩車と車を河原で止めて、子どもたちは談笑しながらお弁当を食べ、探偵と旦那はこんなことダメですよね~と話しているシーンがある。
ほんとうにこういう丁寧な作りがたまらなかった。

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終わるまでずっと探偵役を演じているのは田辺誠一だと思っていたが、駿河太郎氏だった。
葬式場の近くで、探偵が娘に、「人は死んだらもう二度と会えない。だからお母さんにも会えないだ。ごめんねずっと嘘をついていて。やっと本当のことが言えたよ」、と告げる。
ここもまた、涙腺が緩んだ。関西弁も柔らかくて良かった。

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ラスト、銭湯のお湯の映像に、タイトルバックの文字が重なって終了。

ホント何回泣かせたら気がすむんだ、この映画は。
内容を反芻しながらこの文章を書いている間にも、3回ほど涙がこぼれたほどの破壊力。

 
最後に、バージョン違いのチラシデザインを紹介。
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こちらは銭湯寄り。全国の銭湯組合(?)も応援しているとのこと。

製作総指揮: 藤本款
製作: 深瀬和美、若林雄介
監督: 中野量太
脚本: 中野量太
撮影: 池内義浩
美術: 黒川通利
音楽: 渡邊崇
主題歌: きのこ帝国「愛のゆくえ」
特撮: 大萩真司
出演: 宮沢りえ(幸野双葉)、杉咲花(幸野安澄)、オダギリジョー(幸野一浩)、篠原ゆき子(酒巻君江)、駿河太郎(滝本、探偵)、伊東蒼(片瀬安澄)、松坂桃李(向井拓海)、遥(滝本真由)、松原菜野花(宮田留美)、江藤修平(担任)、三浦景虎(麻生)、田中壮太郎、りりィ(双葉の母)、安藤聖、泉光典(双葉の働く店の店長)、高木悠未、西田薫子、木村知貴(数学教師)、小澤雄志(美術教師)、新井郁(双葉の働く店の店員)、田中えみ、田中佐季(交差点の女性)、辻しのぶ(手話の女性)、中谷仁美、佐藤真子、鈴、鈴木士(双葉の働く店の客)、住田萌乃(子供の双葉)、関口智樹
編集: 高良真秀
制作会社: パイプライン
製作会社: 「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
配給: クロックワークス
公開: 2016年10月29日(日)
上映時間: 125分
 
【世間の評価】 ※2017.2.7時点
CinemaScape: 4.1/5.0 (9人) 
Filmarks: 4.2/5.0 (7,684人) 
Yahoo! 映画: 3.85/5.00 (1,912人)
IMDb: 8.0/10.0 (36人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (1人)
Rotten Tomatoes(Audience): -/5.0 (4人)
 
@ANA機内