hourouki

初めて観る成瀬巳喜男作品。

題名的に、古典作品をイメージしていたが、舞台は大正末期から昭和初期にかけて。
林芙美子の同名の著作と菊田一夫の戯曲が原作。

主演の高峰秀子が演じるのが林ふみ子。
本作は、ひとえに彼女の印象、演技によって成り立っている。

男運がなく、貧乏ばかり。
仲間の作家には、ゴミ箱の中をひっくり返したような作風と評される。
カフェーの女給で生活をつなぐ。これは今でいう、キャバクラのホステス。
チップを稼がないと暮らしていけない。

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高峰秀子は、美しいようでいて、貧乏暮らしが染みついた貧相さ、薄幸さも醸し出している。
低音の声、独特の喋り方に魅力がある。

1960年代の作品だと致し方ないのかもしれないが、カフェーで高峰が歌った歌が、明らかにアテレコだったのが残念。

落として落として落として、最後に報われる。
報われたと言っても、放浪記が女性芸術に掲載されたのも、ライバルの原稿を林が届けるのを遅れたためといういきさつがあり、素直に祝福しずらいストーリー。

なぜ遅れたのかのいきさつを林が語るシーンで、唯一林の傲慢さ、卑しさが感じられるのが興味深い。

重要な役柄を演じる宝田明をはじめ、菅井きん、名古屋章、橋爪功など、自分もリアルタイムで見たことがある役者が端役で出ているのに驚き。

高峰秀子のフィーチャーの仕方、撮り方に監督のセンスの独自性がひしひしと感じられた。

時代の違いもあるので絶賛とまではいかないが、この作品および成瀬巳喜男が評価されている理由は、じゅうぶん理解できる出来だった。

なお、「放浪記」といえば森光子がでんぐり返しをしていた舞台として有名だが、それは自分の作品が雑誌に掲載された事を知り喜ぶシーンらしいのだが、本作品ではそのシーンは用意されていなかった。

@DVD

監督:成瀬巳喜男
製作:藤本真澄 / 寺本忠弘 / 成瀬巳喜男
脚本:井手俊郎 / 田中澄江
原作:林芙美子
撮影:安本淳
美術:中古智
音楽:古関裕而
出演:高峰秀子 / 田中絹代 / 宝田明 / 加東大介 / 小林桂樹 / 草笛光子