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花様年華は”かようねんか”と読む。ここ数年観ていなかったウォン・カーウァイの作品。

2016年8月にBBCが発表した「21世紀の偉大な映画ベスト100」の第2にランクインしていたことで俄然興味が湧いた。

 
音楽、映像、役者どれも悪くない。

例のごとく撮影にはクリストファー・ドイルがかかわっているし、特に映像面への強いこだわりがひしひしと感じられる。
しかし、そのこだわりの強さが過剰とも思えるシーンもチラホラ
また、話自体は大人の恋愛ストーリーとして細部に趣向も凝らしてあり決してつまらなくはないのだが、わかりやすく伝えないのを美徳としている嫌いがあり、ところどころ置いていかれ、ややストレスが溜まる。

以下、ネタバレも含めつつ、振り返ってみる。

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とにかく、絵になる映像のオンパレード。

鏡の使い方。ざらざらした哀愁漂う映像。雨が多かったり、階段のシーンを印象的に使ったり、かっこよくタバコを吸わせたり。

登場人物が多くはないなか、主演の二人、チャウを演じるトニー・レオンと、チャン(やや紛らわしい)を演じるマギー・チャンの魅力が全開。二人とも絵になる。

マギー・チャンが纏う衣装の美しさも本作の見所の一つだろう。現実感は希薄だが。彼女の衣装替えの多いことはこのうえなかった。

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鏡好きのウォン・カーウァイ。

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屋台で出来上がりを所在なげに待つチャン。なんてことないシーンではあるが、だからこそ立ち姿の美しさが光っていた。マギー・チャンは顔がめちゃくちゃ美人というわけではないが、雰囲気とスタイルが美しい。

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チャンが食堂で新聞を読む姿も印象に残る。見た目から受ける印象とのギャップだろうか。

トニー・レオンの魅力も、マギー・チャンに負けていない。
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タバコを吸う姿がハマっているチャウ。

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喫煙シーンその2。男の自分でも、カッコいいなと惹き込まれる姿。

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屋台から地上に上がる階段で何度かすれ違う二人。印象に残るシーンの一つだ。

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ステーキを食べるシーン。
1960年代という設定ゆえか、肉の切り方が洗練されていないのがいい味を出している。
肉を切ってソースにつけるところをアップにしたり、面白いシーンである。

 
このように、魅力的なカットは枚挙に暇がないほど出てくる。
しかし、あまりに絵になるカットばかりだとやり過ぎ感が出てくる。
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例えばこの、チャウが小説の執筆のために借りた部屋があるマンションかホテルのシーン。赤く揺れる緞帳に赤い衣装のチャン。単体としては嫌いなビジュアルではないが、現実感も必然性も感じられない派手さではある。

 
骨子となるストーリーは嫌いではない。お互いの伴侶同士が浮気をしているであろうことは確信しつつ、お互いにも惹かれていながら、頑なに一線を越えようとしない二人。せつなさも伝わってくる。

しかし、ところどころ「これ、どういうこと?」と思わせられるシーンが挟まれ、ちょっとずつ居心地が悪くなってくる。

二人の不倫関係がスタートするシーンかと思いきや、自分らの伴侶らの関係がどうやってはじまったかの想定ごっこの演技だったり、チャンが旦那に不倫を認めさせるシーンも同じく練習だったり、さらには二人が分かれるシーンの練習もしたり、面白い試みではあるが、そのたびにこっちの気持が揺さぶられて、小馬鹿にされているような気持ちにもなる。

シンガポールにチャウが行くシーンも、彼女が追いかけたかったのは伝わってきたが、「チケットもう一枚とれたら〜」のくだりは独り言なのか。何なのか。
その後、彼女が彼を追いかけてシンガポールに行きながら、会わずに去ってしまうシーンも、彼女は何がしたかったのか。
男の子と二人で元の香港の家に住んでいるチャン。男の子は誰の子なのか。
カンボジアのシーンは何のためにあったのか。
etc…

敢えてわかりにくくしているとは思うが、その演出がだんだん鬱陶しくなってしまう面も否めず。
「過去は見るだけで、触れることはできない」という教訓みたいなセリフも吐かれるが、さほど過去を悔いている話のようでもないし。

もちろん悪い面だけではなく、個性的なストーリーの味つけや演出も多く、感心させられるところもあった。
お互いの伴侶らは、敢えて声と後ろ姿だけの出演で、顔ははっきり見せていなかったり、ワンシーンで時がどんどん過ぎていったり、時が過ぎたことを気づくポイントはチャンの衣装だったり。

 
出てくるパーツパーツはいずれも素晴らしいから、その組み立て方がもうちょっとだけ良かったら、自分の評価も大きく変わっていたのではなかろうか。
また、女心に鈍感な自分ゆえ、チャンの気持ちの揺らいでいる様が決してわかりやすくはなかったということもある。
女性が見れば、だいぶ感覚は違いそうな映画である。

製作: ウォン・カーウァイ
製作総指揮: チャン・イーチェン
監督: ウォン・カーウァイ
脚本: ウォン・カーウァイ
撮影: クリストファー・ドイル、リー・ピンピン
衣裳・編集: 張叔平(ウィリアム・チャン)
美術: 張叔平(ウィリアム・チャン)、マン・リンチャン、アルフレッド・ヤウ
音楽: 梅林茂、マイケル・ガラッソ
出演: トニー・レオン(チャウ、Chow Mo-wan)、マギー・チャン(Mrs. Chan)、スー・ピンラン(ピン)、レベッカ・パン(スエン夫人)、ライ・チン(ホウ社長)、Man-Lei Chan(Mr. Koo)、Roy Cheung(Mr. Chan [voice])、Paulyn Sun(Mrs. Chow [voice])
配給: 松竹
公開: 2000年5月20日(仏/CIFF)、2000年9月29日(香港)、2001年3月31日(日)
上映時間: 98分
 
【世間の評価】 ※2016.11.17時点
CinemaScape: 3.5/5.0 (202人) 
Filmarks: 3.9/5.0 (1,817人) 
Yahoo! 映画: 3.95/5.00 (183人)
IMDb: 8.1/10.0 (78,103人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.8/10.0 (119人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.3/5.0 (52,397人)
 
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