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元来、ディズニーやジブリなどのアニメーション映画があまり得意ではない私。

ここ半年ほどに観たものを振り返っても、『ハウルの動く城』『時をかける少女』『トイ・ストーリー2』と、いずれもピンと来なかった。

日本中が絶賛している『君の名は』にも、食指が動かず。

その中で本作は、かなりの数の映画を観ているであろう人々がこぞって高評価していたので、そこには何かあるに違いないと踏んで、遅まきながら劇場まで足を運んでみたのだ。

 
しかして、その結果はというと、やはりというか、世間が云うほどには楽しめない自分がいた。
一方で、上の三作と比べると、自分の琴線にも触れるものが確かにあった。

以下、ネタバレを含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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舞台は太平洋戦争開始前から終戦後の、広島、呉。
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軍港の呉が舞台ということで、軍艦がよく登場する。幼い晴美はすずよりも軍艦に詳しく、軍艦の違いを見分け、名前も云うことができる。

いささか唐突な気はしたが、少ない食材を生かしての、すずによる料理方法紹介シーンが、微笑ましく映った。
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すずの、手を交差しながら考える仕草がチャーミング。雑草や野草なども活用。
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少ないご飯を増やして食べる楠公飯(なんこうめし)を食べて、不味さに顔をゆがめる家族。
楠公飯とは、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将、楠木正成(くすのきまさしげ)が考案したと言われる。

原作の力だと思うが、すずのキャラクター設定に独特なものがあった。
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煙幕を見て「ここに絵の具があれば」と思うすず。彼女の変わったキャラクターが如実に現れているシーン。

もっとも涙腺が刺激されたのは、玉音放送を聞いての、義姉の径子と、すずの反応。
太平洋戦争の敗戦をテーマにした映画を最近観ていなかったこともあり、生の反応に心を動かされた。
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すずの号泣シーン。「左手も両足もあるのに」「最後の一人になっても戦い抜くんじゃなかったのか」「少なくともここには四人いる」という叫びが心を鷲掴む。
すずが自分の右手について思い悩むシーンも強い印象を残す。

 
すずと周作の夫婦の関係性も興味深く描かれていた。ほぼ面識がない中で結婚する二人。
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時代を考えると、大胆なキスシーン。
周作はすずのほくろを気に入っていたり、当時のひとつの夫婦の形が見えて興味深かった。

祖母からレクチャーされる、嫁いだ夜に傘を持ってきたかを婿に問われたら「新しいのを一本持ってきました」と答え、さしてもいいかと問われたら、「どうぞ」と答えるという風習も印象に残る。

 
当時の広島や呉の様子も伺えて面白い。
例えば、白木リンが働く遊郭は、呉の朝日町にあり、県下のみならず関西一と称されていたという。

また、配給は日々減っていくが、闇市にいけば何でも売っていて、それを見て驚くすずの姿は新鮮だった。

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原爆投下後の広島県産業奨励館付近。相生橋も窺える。一昨年訪れたこともあり感慨深い。

米軍が撒いてくる、降伏を勧めるビラ。持ってると憲兵に目をつけられるが、勿体ないから落とし紙にでも使うのがいいというくだり。(「落とし紙」とは、便所で使う紙のこと。)

なお、本作はクラウドファンディングを活用した映画としても有名。エンドクレジットの最後にずらずらっとそれらの人々の名前が出てくる。ただ、彼らにとっては投資したかいはあるのだろうが、観る側からすると余計な気がするのは否めない。

製作: 真木太郎、丸山正雄
監督: 片渕須直
脚本: 片渕須直
原作: こうの史代
撮影: 熊澤祐哉
美術: 林孝輔
音楽: コトリンゴ
主題歌: コトリンゴ「みぎてのうた」
声の出演: のん(北條すず)、細谷佳正(北條周作)、尾身美詞(黒村径子、周作の姉、モガ)、稲葉菜月(黒村晴美)、小野大輔(水原哲、幼なじみ)、潘めぐみ(浦野すみ、すずの妹)、岩井七世(白木リン、遊女)、牛山茂(北條円太郎、周作の父)、新谷真弓(北條サン、周作の母)、渋谷天外(特別出演、「そりゃ今せにゃいかん喧嘩かね」の駅員)、小山剛志(浦野十郎、すずの父)、津田真澄(浦野キセノ、すずの母)、大森夏向(浦野要一、すずの兄)
編集: 木村佳史子
制作会社: MAPPA
製作会社: 「この世界の片隅に」製作委員会
配給: 東京テアトル
公開: 2016年10月28日(TIFF)
上映時間: 128分
製作費: 2.5億円
興行収入: 18.96億円(日、2017年2月5日時点)
 
【世間の評価】 ※2017.2.12時点
CinemaScape: 4.5/5.0 (54人) 
Filmarks: 4.3/5.0 (21,098人) 
Yahoo! 映画: 4.20/5.00 (15,619人)
IMDb: 8.3/10.0 (247人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (-人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.5/5.0 (31人)
 
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