insidejob

2008年、アメリカのサブプライムローン問題を発端にリーマンショックが起こり、その後世界をかけめぐった金融危機に関するドキュメンタリー。

 
危機の一面にスポットを当てた作品だが、業界の構図、危機がどうして起きたのか、関わったプレーヤーについては理解できる。

投資銀行、保険会社、格付け会社、政治家、そこに取り込まれた学者…

基本的に、インタビューとナレーション(マット・デイモンが担当)によって構成される作品。
インタビューを受ける登場人物が結構多く、それぞれのバックグラウンドや立ち位置がわかりにくいため、役職についてのテロップも出るのだが、話がやや専門的で、字幕を追いつつ、役職名も読んでいると、理解が追いつかなくなるシーンもあった。

意義深いし、面白い作品ではある。
しかし、一番インタビューしたい相手には取材を拒否されている。そこがこの作品の弱みでもあろう。

以下、印書に残ったシーンを振り返る。

 - ad -

ニューヨーク、マンハッタンのウォールストリートが舞台。
insidejob_04
ビル群を上から空撮したタイトルバック。
こういった映像や、挟まれる音楽はスタイリッシュ。
それがいいのか悪いのか… 金融業界を持ち上げる効果も果たしてしまっている。

 
基本的に誰も過ちを認めない。
そこに違和感をはっきりと感じるが、それこそがアメリカたるゆえん。

insidejob_02_Glenn_Hubbard
グレン・ハバード。ジョージ・W・ブッシュ政権下では大統領経済諮問委員会議長を務め、現在はコロンビア大学ビジネススクール院長。
多くの企業顧問につき、金融商品を賞賛し顧問料を手にしている。

insidejob_03_Frederic_Mishkin
フレデリック・ミシュキン。元米連邦準備理事会(FRB)理事。
アイスランドの経済破綻前、アイスランドの金融に問題なしとの報告書を書いていた。アイスランドの商工会議所から報酬を貰っていたうえ、たいした調査もしていない。このインタビューでも開き直っている。

インタビューに答えた人々の中で何名かが悪者として扱われていたが、上の二人が特に印象に残った。
おそらく、インタビュアーからの質問のかわし方が下手だったためだろう。

出演しておき、責められながら、言い訳で逃げる様をさらすのでは、むしろ登場しないほうが良かったのではとさえ感じる。
しかし、本当に悪い奴らは、インタビューを断っている。

その筆頭が、1999年からゴールドマン・サックスの会長兼CEOを務め、2006年から2009年までジョージ・W・ブッシュ大統領の下で財務長官を務めていたヘンリー・ポールソン(下の写真左)。
insidejob_06_Henry_Paulson
本作の中では、「財務長官としての報酬は彼のGSでの報酬から見るとないに等しいが、自ら関わって通した法律のおかげで何十億円もの利益を手にしている」とされていた。悪の権化のような扱い。
彼からインタビューがとれていたら、この映画の価値はさらに高まっていただろう。
マイケル・ムーアならなんとかしてインタビューをとったのではなかろうか。

insidejob_05_christine_lagarde
当時のフランスの経済財務相であるクリスティーヌ・ラガルド。
「リーマン・ブラザーズの破綻を知ったのはいつだったか」という問いに、「破綻の後」と回答。
これは本当なのだろうか? ちょっと怪しい気もするが、本当だったらそれはそれでひどい話。嘘だとすると、彼女にも何か裏がありそう。

 
サブプライムローン問題の内容についてはおぼろげに知ってはいたが、図を使っての説明もあり、本作で理解が進んだ。
insidejob_07
変化する住宅ローン(Mortgage Loan)。
本来、住宅ローンでお金を貸す側は借りてから回収せねばならない。
しかし、投資銀行を経由して投資家からお金を得る仕組みへと変化。
insidejob_08
サブプライムローンなどを含んだCDO(Collateralized Debt Obligation、債務担保証券)とAIGが発行する損失補填目的のCDS(Credit Default Swap)。
儲けるのが悪いわけではないが、やり方が汚いGS、AIG。

そして、金融危機を引き起こしたプレーヤーの一つとして、格付け会社。
insidejob_09
スタンダード&プアーズ。格付けはあくまでも我々の意見(opinion)だと言い張る姿勢には、品性の欠片も感じられない。

金融マンたちが酒、ドラッグ、女にハマっていたのは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に同じ。
insidejob_01
登場人物の中で、圧倒的に異質だった、高級コールガールクラブの経営者。

もっとも痛快だったのは、アメリカ上院の調査小委員会で、GSの担当役員が追求されるシーン。
insidejob_11
調査小委員会の委員長であるカール・レビン。TV放送の映像のみでの登場だが、風貌と表情が強く印象に残る。

彼は、
「あなたの会社は顧客に利益をもたらすのが仕事ですよね? しかし、あなた方の社員は社内では『クソ証券』と呼ばれていた商品を、顧客に薦めて売っている。これをどう思いますか?」
「もし、顧客とGSとの間で利害の相反があった場合、顧客に商品を売るとき、その利益相反を顧客に伝える義務があなた方にはありますか?」
のように詰問し、GSの行なったことは詐欺的で反道徳的だと批判している。
(とはいえ、残念なことに、アメリカ司法省はGSやGSの社員を起訴しない決断を下している。)

損をするのは一般市民。トップの1%のみが莫大な富を手にする。そのギャップがあまりに大きすぎる。
insidejob_10
サブプライムローンで家を失い、テントで暮らす男性。
insidejob_12
Whers my Fxckin BAILOUT? (オレへのクソ緊急援助はどこ?)

ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも同じことを感じたが、どれだけ大金を手にしても、社会に対する使命感のようなものを持っていない人々には、敬意をいだけないばかりか、別の種に属している異質感しか感じ得ない。

 
最後にバージョン違いのDVDパッケージデザインを紹介。
insidejob_jp
日本語版。背景に星条旗を掲げ、アメリカの話であることを伝えている。

製作総指揮: ジェフリー・ルーリー / クリスティーナ・ヴァイス・ルーリー
製作: オードリー・マーズ / チャールズ・ファーガソン
監督: チャールズ・ファーガソン
脚本: チャールズ・ファーガソン / チャド・ベック / アダム・ボルト
撮影: スヴェトラーナ・スヴェトゥコ / カリアニー・マン
音楽: アレックス・ヘッフェス
出演: マット・デイモン(ナレーション)、ギルフィ・ゾエガ(アイスランド大学の経済学教授)、アンドリ・マグナソン(アイスランドの作家)、シグリドゥル・ベネディクトスドッティル(アイスランド議会特別調査委員会)、ポール・ボルカー(アメリカの経済学者)、ドミニク・ストロス=カーン(IMF専務理事)、ジョージ・ソロス(投資家)、バーニー・フランク(下院金融委員会委員長)、デイヴィッド・マコーミック(ブッシュ政権 財務次官)、スコット・タルボット(金融サービス円卓会議 主席ロビイスト)、アンドリュー・シェン(中国銀行業監督管理委員会 主席顧問)、リー・シェンロン(シンガポール首相)、クリスティーヌ・ラガルド(フランス経済財務相)、ジリアン・テット(フィナンシャル・タイムズ米編集長)、ヌリエル・ルビーニ(ニューヨーク大学レナード・N・スターン・スクール教授)、グレン・ハバード(コロンビア大学ビジネススクール院長)、エリオット・スピッツァー(元ニューヨーク州知事・司法長官)、チャールズ・モリス、ロバート・グナイズダ(消費者団体グリーンライニング協会元理事、弁護士)、マーティン・ウルフ(フィナンシャル・タイムズのチーフ経済解説委員)、サタジット・ダス(デリバティブ・コンサルタント、作家)、ラグラム・ラジャン(元IMF主席エコノミスト)、サイモン・ジョンソン(MIT教授 元IMF主席エコノミスト)、チャールズ・プリンス(シティバンクのCEO)、ポール・カニョルスキー(アメリカ下院議員)、ハーベイ・R・ミラー(リーマンの破産手続きを担った弁護士)
配給: ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(米)、ソニー・ピクチャーズ(日)
公開: 2010年10月8日(米)、2011年5月21日(日)
上映時間: 109分
製作費: $2,000,000
興行収入: $7,871,522
 
【世間の評価】 ※2017.2.23時点
CinemaScape: 3.3/5.0 (3人) 
Filmarks: 3.7/5.0 (329人) 
Yahoo! 映画: 3.77/5.00 (74人)
IMDb: 8.3/10.0 (57,927人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.2/10.0 (142人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.2/5.0 (29,048人)
 
@Amazon Prime Video