コーエン兄弟の作品。
にもかかわらず、その作品名すら初めて聞いたほど、まったく知らなかった。

決して、世間からの評価が低いわけではなさそう。
カンヌで審査員特別グランプリを受賞しているし、2014年のキネ旬のベスト10にも入っている。
要は、やや地味な映画ということだろう。

邦題にも苦労の跡が伺える。

観終えて…

 
コーエン兄弟の作品にしては、とりたてて大きい事件が起きるわけでもない本作ではあるが、キャスティング、キャラクター設定、ストーリー展開、、間のとりかたが秀逸で、その世界に長くひたっていたい気持ちにさせてくれる不思議な映画。

特に、オスカー・アイザック演じるルーウィンのキャラ設定および雰囲気に惹きつけられるものがあった。

冷静に考えればルーウィンはかなりダメな奴。
彼なりに頑張ろうとはしている。が、ところどころダメなところが首をもたげてくる。

しかし、普通だったら嫌気がさしそうな事ばかり起こるのに、彼はめげない。
それこそが、この映画の根幹を成している。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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ルーウィンの音楽の才能は正直自分にはよくわからないが、売れそうには思えない。ただし、歌詞には独特なものを感じる。
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また、ライティングやら撮影技術やらもあるのだろうが、演奏している姿は絵になる。

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シカゴでバド・グロスマンに演奏を聞いてもらうが、良い返事はもらえず。
それでもめげないルーウィン。
ヤジを飛ばして殴られたりはしたものの、結構生活は大変だろうに、意外とヤケになったりしないところに好感が持てる、不思議なキャラクター。

 
ルーウィンに対し、もっとも(本当の意味で)親身に接しているのは、仕事仲間で(一晩の過ちで?)身体の関係もあるジーンだ。
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ガスライトカフェのオーナーであるパッピのセリフに「客のほとんどはジーン目当て。ヤリたいと思ってる」とあったが、それを納得させる独特の魅力をたたえているジーン。
なんと彼女を演じるキャリー・マリガンは『ドライヴ』のヒロインを演じていた人妻の女性だった。髪の長さが違うとだいぶ印象が違う。
(そして、なんとなんと! ルーウィンを演じるオスカー・アイザックは、同じく『ドライヴ』で、キャリー・マリガンの夫役で刑務所帰りの男だった。)

1960年代という時代もあってか、ルーウィンがFワードを口にすると、姉やゴーファイン教授の妻といった良識的な人たちは過剰に嫌な顔をする。
逆に、ジーンはそのおとなしそうな見た目に反して、かなり性格はキツく、ルーウィンへのダメ出しはハンばない。ここも笑えてよかった。

 
演奏シーンは何度も登場するこの映画ではあるが、欠員が出たとジム(ジャスティン・ティンバーレイク)が声をかけてくれての”Please Mr. Kennedy”の演奏シーンがマイ・フェイバリット。
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「楽しい!」っていう前向きな意味では、このシーンが自分のなかでのクライマックス。最高だった。

それまで隣でモグモグ言っていて不安を感じさせていたアル(アダム・ドライヴァー)も、うまくハマっている。
すぐにお金が必要だったルーウィンは、このレコーディングで、ギャラとしてその場で200ドル払われるが、印税は全くもらえないという契約を了承する。しかし、この歌が結構売れたことが後でわかる。

なお、このレコーディングはコロンビアレコードのスタジオでやっているのだが、コロンビアレコードのプロデューサー(?)の名前がCromartie。
すなわち、昔巨人にいたウォーレン・クロマティと同じ苗字なのだ。映画とはまったく関係ないがちょっと嬉しくなった。

 
強い印象を残したキャストといえば、シカゴに向かう車の中での、ジャズミュージシャンのターナーとその付き人ドライバーも忘れてはいけない。二人とも微妙に変。
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登場時間は決して長いわけではないが、強烈な個性をはなっていたターナーを演じるジョン・グッドマン。

彼が後部座席から杖で前の座席をたたいたり、ルーウィンをたたいたりして呼びかける姿が高圧的で印象に残る。
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挙句、オーバードーズでトイレでぶったおれるターナー(最高だ!)

その様子を見ても、まったく動じない付き人。しかし、その後高速道路上で車を停めて休んでいると警官がやってきて、付き人はパトカーでどこかに連行される。車のキーが見当たらなかったため、その車に意識のないターナーと、ネコ(ユリシーズかと思ったら間違いだった猫。しかもメス)を置いたままで車を去るルーウィン。
このあたりの一連の流れが、まったくもって独特。

 
この映画に、やわらかさを与えている一因に、猫の存在がある。
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ネコの映画ともいえる。

 
映像も随所に印象的なシーンが散見される。
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たとえば、このジーンとジムの部屋へとつながる通路。
せまっくるしくって、人とすれ違うのも大変な通路の造形が面白い。

 
音楽と、ネコと、懐かしさと。
コーエン兄弟の新たな一面が見れた作品だった。

 
<<追記>>
普通に考えれば、冒頭のシーンは、ラストと同じシーンだと思うが
なぜか無性に、冒頭シーンも含めて時間軸通りのストーリーなのではないかという気がして、いろいろ考えて、疲れた。。。

原題: Inside Llewyn Davis
製作総指揮 ロバート・グラフ / オリヴィエ・クールソン / ロン・ハルバーン
製作 スコット・ルーディン / イーサン・コーエン / ジョエル・コーエン
監督 ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン
脚本 ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン
撮影 ブリュノ・デルボネル
美術 ジェス・ゴンコール
音楽 Tボーン・バーネット
衣装 メアリー・ゾフレス
特撮 スティーヴン・カーショフ / マーク・ビーロ
編集: ロデリック・ジェインズ
 
出演:
オスカー・アイザック/ルーウィン・デイヴィス
キャリー・マリガン/ジーン・バーキー、ミュージシャン仲間、部屋によく泊めてもらっている
ジャスティン・ティンバーレイク/ジム・バーキー、ミュージシャン仲間、ジーンの夫
ジョン・グッドマン/ローランド・ターナー、ジャズミュージシャン
ギャレット・ヘドランド/ジョニー・ファイヴ、ターナーの付き人
F・マーレイ・エイブラハム/バド・グロスマン、ルーウィンがシカゴでオーディションを受ける相手
スターク・サンズ/トロイ・ネルソン、ジーンの部屋で出会うミュージシャン、将来を嘱望されている、入隊中
アダム・ドライヴァー/アル・コーディ
イーサン・フィリップス/ミッチ・ゴーフェイン、教授、ルーウィンを歓待
ロビン・バートレット/リリアン・ゴーフェイン、教授の妻
ジーイーン・セラルズ/ジョイ、ルーウィンの姉、子持ち
ジェイク・ライアン/ダニー、ジョイの息子、ルーウィンの甥
マックス・カセラ/パッピ・コルシカート、ガスライトカフェのオーナー
ジェリー・グレイソン/メル、ルーウィンが契約している事務所の社長
シルビア・カウダーズ/ジニー、ルーウィンが契約している事務所の老婆(社長夫人?)
アレックス・カルボウスキー/マーティ・グリーン
ヘレン・ホング/ジャネット、ゴーフェインの客
ブラッドレイ・モット/ジョー・フロム、ゴーフェインの客、いろんな楽器を演奏している
クリス・エルドリッジ/マイク・ティムリン、ルーウィンの元相方、自殺
ベンジャミン・パイク/若年期のボブ・ディラン
スタン・カープ/ヒュー・デイヴィス、ルーウィンの父
ナンシー・ブレイク/ルーウィンがヤジを飛ばした女性ミュージシャン
ステファン・ペイン/その女性ミュージシャンの夫、ルーウィンに翌日ヤキを入れに来る
ジャック・オコンネル/ゴーフェイン邸のマンションのエレベーター係
リカルド・コルデロ/ナンツィオ、ジーン&ジムと同じ建物の居住人
イアン・ジャービス/クロマーティ、コロンビアレコードのプロデューサー(?)
スティーブ・ラウトマン/中絶医師
ジェームス・コルビー/ハイウェイの警察官
ジェイソン・シェルトン/シカゴからルーウィンをヒッチハイクで乗せてくれた若者
 
製作会社: マイク・ゾス・プロダクションズ、スコット・ルーディン・プロダクションズ、スタジオカナル
配給: CBSフィルムズ(米)、ロングライド(日)
公開: 2013年5月19日(仏CIFF)、2013年12月6日(米)、2014年5月30日(日)
上映時間: 104分
製作費: $11,000,000
興行収入: $32,935,319
 
@Gyao