空中庭園

角田光代氏の原作、小泉今日子主演、主題歌がUAの「この坂道の途中で」と、自分に刺さるポイントがいくつもある本作。Amazon Primeのおかげでようやく観ることができた。

 
隠し事ゼロというのがルールの家庭。風通しがいいようで取り繕っている家族。
40歳になる旦那(板尾創路)はろくに働かず浮気ばかり。高校生の娘マナ(鈴木杏)はいじめにあい?不登校。中学生の息子コウ(広田雅裕)も内向的なうえ挙動がやや怪しく、父親の不倫相手で家庭教師でもある女に熱を上げている様子。
そして絵里子本人(小泉今日子)は、バイト先の女(今宿麻美)がクラミジア(クラミアジって間違えるのがナイス)で、おしっこするときにしみるから蕎麦湯で洗ってると嘘を店主に吹き込みクビになったことをネタに、ゆすられていたり。

そこに、絵里子の母(大楠道代)や、旦那の浮気相手ミーナ(ソニン)も絡んできて、事態は動き出す。

崩壊からの収束。お決まりの路線も悪くはない。

各キャラがバランス良く、ちょうどいい具合に変わっている点。そして、浮気しつつ、妻にも虐げられる旦那を演じる板尾氏が、良いガス抜き役となっており、悲壮感が漂わない点も良い。

映像への強いこだわりも随所に感じられる。

以下、ネタバレあり。

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絵里子は小さい頃はひきこもりで、現在も不安定な部分を抱えている。母との関係も完全に良好ではない。

その母、さっちゃんが今は入院してるが、病室のベッドの上でも、路線バス内でもタバコを吸うような、傍若無人なキャラクター。
一方で、孫のコウが万引きにつかまった際には、絵里子には内緒で身元引受人になってあげる孫思いの面も持ち合わせる。

そもそも、コウが万引きしたのは、家庭教師のミーナに頼まれて買いに行った(お金がなかったため盗んだ)タンポン。
強引な内容ではあるが、家族の4人以外で、ストーリーの中心に入ってくる二人がここで結びつけられる。
しかも、場所はラブホテル「野猿」。

このホテルは、絵里子と旦那がマナを仕込んだ時に使ったホテルであり、旦那は別の浮気相手(永作博美)とも使い、マナも彼(勝地涼)と来ているという設定。
家のリビングと並んで、登場回数が多いロケーションである。

ホテルの内装がなかなか良かったから、シーンの写真を上げておきたかったが、結構見られている作品のはずなのに、なぜかネット上にシーンの画像がほとんど上がっていない。YouTubeの予告編も画質が悪くて、キャプチャーする気になれない。残念。

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中心はこの食卓。家族の象徴なのだろう。

母とミーナの誕生日を祝う日。最後に食卓に残ったのは、絵里子と母。
大きいバースデーケーキにローソクを山ほどさして火をつけ、少しずつ消していく母と、母に説教を垂れる絵里子の周りをカメラがぐるぐる回る。
わかりやすく製作サイドの狙いが画面に現れるシーンではあるが、鼻につくことなく、印象に残った。

精神崩壊寸前の絵里子は、強い雨が降るなかバルコニーで何度も叫ぶ。血のような赤い雨が降っているようなビジュアルの中。
家族がチャイムを鳴らすが、カメラは開けっ放しのバルコニーの窓とゆれるカーテンしか映さない。絵里子はもしや死んでしまったのか…と思っていると。

ご都合主義かもしれないが、ラスト、主題歌であるUAの曲が流れるなか、絵里子がドアを開けると、絵里子の誕生日を家族みんなが覚えていて各自プレゼントを持って立っている。
そして「おかえりなさい」と絵里子が言う。
めちゃくちゃな家庭だけど、ギリギリのところで保たれていて、希望が残っている感じ。
よくよく考えると、これがハッピーエンドとはいえないのかもしれないが、それでも収まりはいい。
誰もいない家に帰らせたくないから、鍵は絵里子のみが持つという特異なルールも、ここに生きてくる。

途中、コウのセリフに、「逆オートロック」なウチという表現がある。おそらく原作にもあったのだろう。通常のオートロックは自動的に鍵がしまって居住人だけ入れる。その逆ということは、居住人だけ入れないということか。嘘で固めた家庭には入っても、本当の家族の領域には入れないということなのだろう。

舞台となる団地のようなマンションは、おそらく80年代後半に建てられたもの。
(ロケは海浜幕張のパティオスで行われているようだが、設定では舞台は町田のよう。)
そのためか、バスが走る姿だったり、マンションの近くの坂の風景だったり、デパートの屋上らしき場所から見える観覧車の姿だったりに、ところどころ懐かしさが感じられる。微かな昭和の香りが残っている。これも、本作を観ていてどこか落ち着く気がした一因かもしれない。

「どこで仕込まれたの? 出生決定現場はどこ?」と娘に聞かれた同じことを電話で母に聞く絵里子。
「そんなことは、墓の中まで持っていくのよ」と窘められるのが、なんか良い感じ。

絵里子の兄役としてワンシーンのみ國村隼が登場するが、安定感・安心感がハンパなくって、笑ってしまう。

 
最後に、違うデザインのチラシがこちら。
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キョンキョンをフィーチャー。

製作: 孫家邦、尾越浩文、石川富康、島本雅司、椎名保
監督: 豊田利晃
脚本: 豊田利晃
原作: 角田光代
出演: 小泉今日子(京橋絵里子)、鈴木杏(京橋マナ)、板尾創路(京橋貴史)、広田雅裕(京橋コウ)、大楠道代(木ノ崎さと子)、ソニン(ミーナ)、永作博美(飯塚麻子)、今宿麻美(サッチン、そば屋)、勝地涼(森崎、もっきー、マナの同級生)、國村隼(絵里子の兄)、瑛太(テヅカ)、山本吉貴、渋川清彦、中沢青六、千原靖史、鈴木晋介
音楽: ZAK
エンディングテーマ: UA「この坂道の途中で」
撮影: 藤澤順一
美術: 原田満生
衣裳: 宮本まさ江
編集: 日下部元孝
フラワーデコレーション: 猪本典子
広告写真: ホンマタカシ
配給: アスミック・エース
公開: 2005年10月8日(日)
上映時間: 114分
 
【世間の評価】 ※2016.11.18時点
CinemaScape: 3.8/5.0 (66人) 
Filmarks: 3.4/5.0 (1,386人) 
Yahoo! 映画: 3.59/5.00 (169人)
IMDb: 7.3/10.0 (554人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (-人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.0/5.0 (351人)
 
@Amazon Prime Video