穴 ジャックベッケル

舞台は未決囚の拘置所。
タイトルの通り、穴、すなわち抜け穴を掘る映画。

1960年製作のモノクロ作品だが、観始めるまで、イギリス映画だとばかり思っていた。おそらく、フランスと脱獄というキーワードが自分の中で結びつかなかったからだろう。

観終って。
公開から50年以上経っても色あせず、高い人気を誇っている理由はよ~くわかった。

 
既に脱獄を3度もしているロラン(ジャン・ケロディ。上の写真の右の男)の手際の良さには、心底惚れ惚れしてしまう。無駄なく、かつ、大胆に。看守が使っているドアの鍵なぞ、簡単に合鍵を作ってしまう。地形の把握能力も高い。そして、タフ。

鏡を割った破片を歯ブラシの柄にくくりつけ、のぞき窓から突き出して潜望鏡として使用。看守の動きをそこからチェックするわけだが、一旦それでチェックし終わったら、カメラは、穴を掘っているところに長く向いたまま固定される。ここに、穴を掘っているリアルな臨場感と、こんな大きな音を立てて、看守に気づかれ近づいてくるんじゃないか、廊下の様子を見せて欲しいという観客の欲求をかきたてる。

工事により、他の部屋からその部屋に移ってきた、27歳のガスパール(マルク・ミシェル)。妻と金銭面でもめ、妻に猟銃で脅され、揉みあってる際に、銃が暴発し妻は肩を負傷し、告訴された。その妻の妹17歳とできているという、爽やかで好青年っぽい見た目に反した、なかなかのくせもの。

以下、ネタバレあり。

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穴が貫通し、いよいよその夜にみんなで脱獄、というその日に、所長から呼び出しを受け、妻が告訴を取り下げたと聞かされるガスパール。

その後、シーンは監房に移り、ガスパールが仲間たちにその事を告げると、リーダーのマニュ(フィリップ・ルロワ)は、なぜ二時間もかかったんだ、何を話してたんだとガスパールに詰め寄る。ガスパールは疑われるなんて残念だと、落胆した表情を見せる。

夜の看守のチェックが終わり、いよいよ決行の時を迎える。

面々は靴を磨いたり、身だしなみを整えたりと余念がない。こういうところが、カウリスマキ映画にも通じる、ヨーロッパの男の子らしさが感じられて、微笑ましい。

潜望鏡を見ると看守が大群でこちらを見ている。するとサイレンが鳴り、部屋に看守らがなだれ込んでくる。マニュはガスパールに掴みかかるが、看守らに押さえ込まれる。

ガスパール以外の面々は羽交締めで廊下に引きずり出され、パンツ一丁にされ、立たされる。

ロランがガスパールに、哀れだなと一言。

ガスパールは、他の監房へ移されて、ジエンド。

本来はガスパールは、所長から告訴取り下げの話を聞き、どうしよう、これはまずいことになったと、相当逡巡しただろうことをあまり感じさせない流れになっていること。だから、深く考えずに見ていると、ガスパールも仲間たちと一緒に逃げるんだろうと思ってしまう。

しかし、よくよく考えると、ガスパールにとって、仮にうまく逃げられたとしても、その後も逃げ続けなければならなず、到底そのリスクを負うとは思えない。
また、逃げずに自分は残るといっても、あんな大きな穴を掘っていたのを知らなかったと惚けるのも現実的ではなく、告訴が取り下げられても、別の罪に問われかねない。

そうすると、所長にチクって、自分だけ助かるようにするのは自然なのだ。ただ、他の面々にとっては最悪のシナリオ。どちらにとっても運が悪い話だったのだ。

なんてことを、見終わってからじわじわ感じられる映画

水のしたたる音。監房の床を砕く音。ノコギリで鉄格子を切る音など、音の使い方がうまい
ロランとマニュが監房から、穴を掘る場所に移動する際の緊迫感の出し方も見事。引きのショットを効果的に使っている。

穴掘りには協力するが、病気の親を悲しませたくないがために、脱獄はせずに残ると言うジョー(ミシェル・コンスタンタン)。彼が穴を掘っている最中に、崩れてきたガレキに埋もれた時は、これは死んだなと思ったが……

シンプルながらも、うまく作られている。視線は画面に釘付け、あっという間に時間は過ぎる

長きにわたって高い人気を誇る理由がよくわかる。

監督:ジャック・ベッケル
脚本:ジャック・ベッケル / ジョゼ・ジョヴァンニ / ジャン・オーレル
原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
撮影:ジスラン・クロケ
美術:リノ・モンデリーニ
出演:ジャン・ケロディ / フィリップ・ルロワ / ミシェル・コンスタンタン / レイモン・ムーニエ / マルク・ミシェル
 
【世間の評価】 ※2016.2.12時点
CinemaScape: 4.3/5.0 (179人)  
Yahoo! 映画: 4.54/5.00 (59人)
IMDb: 8.5/10 (8,817人)
 
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