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スウェーデン、ストックホルム郊外の街が舞台。
雪が積もっており、光も少なく暗いイメージが支配する。

観ている最中は、雰囲気の暗さと、”ロシアからのスパイ”という登場人物のおっさんらの会話に出てくるキーワードから、てっきりバルト三国あたりが舞台の話だと思っていた。

ヴァンパイアのエリ(リーナ・レアンデション)と、エリの隣家の少年オスカー(カーレ・ヘーデブラント)が主人公。二人はともに12歳。

エリの、血を吸った後の顔のビジュアルは見所の一つ。
黒髪、血色の悪い顔色、血の赤。ホラー的なインパクトもなくはないが、美しくもある。

オスカーは学校でいじめられている。
彼の鬱々とした気持ちが、外界の天候の悪さとあいまって、作品全体に暗さを与えている。

二人の間のストレートで純粋な恋愛感情が、清々しくも面映ゆい。

ストーリーそのものが際立って面白いとは思わないが、格式高さと二人の純粋さ、北欧の冬の暗さと血の赤の対比が印象に残る。

以下、ネタバレを含めて、印象に残ったシーンを振り返る。

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主演の二人はいずれも好印象。
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冒頭。ヨッケの血を吸い、殺すエリ。
血を吸うことよりも、その後に彼の首をへし折る動きに目を見張った。
そりゃあ力がないと子どもの女の体格で吸血鬼なんてやってられないか。。。
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基本的には女の子っぽく見えるエリだが、ところどころ男の子っぽさも垣間見れる。
これは演出の効果だろうか。

繊細な少年として描かれているオスカー。
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上半身裸のシーンが何度かあるが、幼さや妖精性のようなものを感じる。
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オスカーは、ある瞬間、いかにもいじめられそうな表情を浮かべる。上手い。
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モールス信号を送るオスカー。上の表情と異なり目もパッチリで、可愛らしい顔立ち。
なお、この時代にしてルービックキューブで遊んでるなんて珍しいなと思っていたら、時代は今ではなく1982年だった。

主演の二人と並んで、強い印象を残すのが、エリと一緒に暮らす男ホーカン(ペール・ラグナル)。
彼は父親でも親族でもなく、吸血鬼のエリに仕える役割を果たしている人間で、永遠の命を手に入れたいと願っている。

調べたところ、吸血鬼のストーリーでの登場人物としては一般的らしく、彼の役柄は”レンフィールド”と称されるとのこと。

エリのために人間の血を集める、ホーカン。
獲物を逆さに吊るして(おそらく)頸動脈を切り、血を集めるという手法に、最初はギョッとした。

最終的には、硫酸を自ら顔にかけ身元をわからなくする(もしくは死のうとする)ホーカン。
エリは病院に運ばれたホーカンを訪ねるが、彼の血を吸い、窓から落とす。
地に落ちたホーカンの顔のビジュアルのアップからは、エグさと哀愁が漂う。

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ホーカンを殺したその足で、顔の血も拭かぬままオスカーの部屋へ立ち寄るエリ。
上着を脱いでオスカーが寝ているベッドに入り、こっちを見ないでという。
このショットはなんだか逞しく見える。

口の周りにべったりと血がついたままでオスカーにキスするシーンにはぞくぞくさせられた。

ラストのプールのシーン。
プールというものが醸し出すブルーの爽やかさと、いじめっ子らの邪悪さと、スプラッター的な渇いた殺し方があいまって、不思議な感覚に陥る。
悲しくもなく、嬉しくもなく。

 
観終った後に、ボカシが入っていた箇所の真相を知る。
去勢されていた痕が映っていたとは。
そうなると、エリが何度も「わたしが女の子じゃなくても好き?」って言う意味が変わってくる。
ここにボカシを入れて放映せざるを得なかった制作サイドの心中はいかがなものだったのだろうか。

というか、仮にあの映像をボカシなく見ていても、去勢手術をされた痕だと自分にはわからなかった気もする。
制作側の、説明を極力省く作り方にあらためて驚かされる。

原題を英語に訳した題が”Let the Right One In”。
「正しきものを招き入れよ」という意味だが、
そもそも、吸血鬼はそこに住む住民に招かれない限り家に入ることが出来ないという言い伝えに基づくもの。
だからこそ、エリが初めてオスカーの家に入る時に、オスカーがジェスチャーで入ってと示すだけで口頭で許可を与えないと、エリの身体中から血がわき出てきたというわけだ。
なるほどなるほど。

こうやって振り返ると、自分には伝わっていなかったが、プロットにもいろいろな工夫が凝らされていたことがわかる。
事前に情報を集めてから見ると驚きが減るのであまり好きではないのだが、この映画についてはある程度事前情報を入れてから見たほうがよかったのかもしれないと反省。

 
最後にバージョン違いのDVDジャケットデザインを紹介。
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日本語版。上の英語版に比べるとだいぶ柔らかい印象。

原題: Låt den rätte komma in
英題: Let the Right One In
製作: ヨン・ノードリング、カール・モリンデル
監督: トーマス・アルフレッドソン
脚本: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
原作: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
原案: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
撮影: ホイット・ヴァン・ホイットマ
美術: エヴァ・ノーレン
音楽: ヨハン・セーデルクヴィスト
衣装: マリア・ストリッド
出演: カーレ・ヘーデブラント(オスカー)、リーナ・レアンデション(エリ)、ペール・ラグナル(ホーカン、エリのレンフィールド)、イカ・ノルド(ヴィルギニア、ラッケの妻)、ペーテル・カールベリ(ラッケ)、カーリン・ベリ(イヴォンヌ)、Patrik Rydmark(コニー、いじめっ子、親分)、Mikael Erhardsson(マーティン、いじめっ子)、Johan Sömnes(Andreas、いじめっ子)、ヘンリック・ダール(エリック)、 ミカエル・ラーム(ヨッケ、エリにかみ殺される)、カール=ロベルト・リンドグレン(イェースタ、ヨッケが襲われるのを目撃、多数の猫を飼う)、アンダーシュ・テー・ペードゥ(モルガン)、パレ・オロフソン(ラリー)、Christoffer Bohlin(Matte、ホーカンに殺されそうになるが難を逃れる)、Rasmus Luthander(Jimmy、コニーの兄)
編集: トーマス・アルフレッドソン、ディノ・ヨンサーテル
製作会社: EFTI
配給: Sandrew Metronome(スウェーデン)、ショウゲート(日)
公開: 2008年1月26日(スウェーデン、ヨーテボリ映画祭)、2010年7月10日(日)
上映時間: 115分
興行収入: $11,227,336
 
【世間の評価】 ※2017.3.6時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (60人) 
Filmarks: 3.7/5.0 (7,413人) 
Yahoo! 映画: 3.93/5.00 (512人)
IMDb: 8.0/10.0 (178,829人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.3/10.0 (178人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.2/5.0 (60,124人)
 
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