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ヨーロッパの監督の中で、かなり自分好みの映画を作ってくれるエミール・クストリッツァ。

本作も、独特の中欧っぽい音楽が随所に使われ、『アンダーグラウンド』から脈々と続くジプシー感が溢れていた。

前半は説明的描写が少なく、話の展開が早くてついていけないところもあったが、中盤からようやく落ち着いてくる。
主人公ルカ(スラヴコ・スティマッチ)と捕虜の娘サバーハ(ナタサ・ソラック)のロマンスが始まってからはストーリーは急加速していく。

舞台は、ボスニアの山間の急峻な地形の中にある村。線路は敷設されているものの、完成していないため鉄道は走っておらず、向かい合って手で漕ぐぐスタイルの風情漂う簡易的な車輌や、線路の上を走れるよう改造されている車が線路上を走る。

駅舎のような建物に住むルカの一家。
仲の良い親子。二人でヘディング対決をして、谷に落ちていったボールを息子が追いかける姿が目に焼きつく。
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駅舎をバックに、プラットフォーム部分で食事をする親子。こうやって見ると親子には見えない。

豊かな自然と、特殊な地形に立つ家(駅舎)の溶け合い方がなんとも言えない景観を作り出している。
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これは特段重要なシーンだったわけではないが、珍しく線路の上を走っていない車が登場するシーン。ロシア製だろうか、東欧っぽい雰囲気の車の赤が緑に映える。

彼らが住む村が旧ユーゴスラビア内戦の戦地の一部になることもあって、近所にも砲弾が飛び交う。
人の死も登場はするが、そこにスポットは当てていない。

戦時中という異常事態で人の心も荒ぶるためか、
戦争とは関係なく人が物を破壊するシーンが多い。

主人公のルカも、基本的には優しい人間として描かれているが、男と逃げて出て行った元妻の服をサバーハが勝手に着ると激昂したりなど、荒々しい一面も併せ持つ。

捕虜にとられた愛息ミロシュに対する思い。その交換要員として自ら捕虜にとっているサバーハに対する思い。ルカの心が揺れる様も見どころの一つである。

以下、軽いネタバレあり。

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観客の誰もが、あーこの後二人はくっつくんだなと期待しながら観るシーン。
この後、ルカが定員オーバーだと言って、犬と猫をベッドから降ろす。

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ナチュラルな表情がチャーミングなサバーハ。トーストに噛りつく芸達者な猫。

サバーハは概して魅力的ではあるが、なぜかヌードシーンに魅力が感じられない。脱がないほうが良かった気がする。また、ムスリムという設定だが、そうも見えない。

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大事な情報はすべてこの人を経由してルカは知る、ヴェーリョ(アレクサンダル・ベルチェク)。チェスが好き過ぎたりと、憎めないキャラクター。
と、これまた大事な役割を果たすロバ。

このロバを筆頭に、全編を通して動物がよく登場する。犬、猫、鶏、ガチョウ、ネズミ、ワシ…。特に、ルカの腕に抱かれて幸せそうに眠る犬の顔が忘れられない。

最終的に捕虜交換が実現し、ミロシュは帰ってくる。しかしその代わり、愛するサバーハとは離れ離れになり、失意の底にあるルカ。線路で自殺しようとするが、列車は止まってしまう。
なぜかと見上げると、全編を通してところどころ象徴的に登場していた上の写真にもあるロバが線路をふさいでいる。

このロバ、「失恋を苦に自殺しようとしている」「涙を流している」と皆からバカにされていた。しかしよくよく思い返すと、本来は荷物を運ぶ役目を担っているはずなのに、最初から最後まで何も運んでいない。棺桶も、撃たれて傷を負ったサバーハも。しかし最後の最後でルカを救ける。
さらに、これは現実ではないという設定だとは思うが、じゃれ合うルカとサバーハの二人を乗せてトンネルの中を歩く姿が映る。

ルカとサバーハの男女愛もさることながら、息子の両親への愛、そして両親の子供への強い愛も、この映画がうったえている大きなテーマだろう。その愛情の強さは、羨ましさを感じるほど。

特にこのシーン。上司の計らいにより戦地から一晩だけ家へ寄る息子ミロシュ。ルカがそれを知り帰宅するとミロシュはソファで眠っている。そこに毛布をかけキスをするルカ。朝ミロシュが目覚めると今度はルカがソファで眠っており、同じことをするミロシュ。サラッと描いてはあったが良いシーンだった。

 
とまぁ、細かいところにも伏線や見どころが散りばめられており、監督の思いの丈が詰め込まれていることはひしひしと感じられる映画である。

ただ、旧ユーゴスラビア以外の人にとって、いや、少なくとも我々非ヨーロッパ人にとっては、150分はやや長く間延びする印象。

製作総指揮: ピエール・エデルマン / クリスティーヌ・ゴズラン
製作: エミール・クストリッツァ / マヤ・クストリッツァ / アラン・サルド
監督: エミール・クストリッツァ
脚本: エミール・クストリッツァ / ランコ・ボジッチ
撮影: ミシェル・アマチュー
美術: ミレンコ・イェレミッチ
音楽: エミール・クストリッツァ / デーシャン・スパラヴァロ
衣装: ゾーラ・ポポヴィッチ
出演: スラヴコ・スティマッチ(Luka) / ナタサ・ソラック(Sabaha) / ヴェスナ・トリヴァリッチ(Jadranka, wife) / ヴク・コスティッチ(Milos, son) / アレクサンダル・ベルチェク(Veljo, fat guy) / ストリボール・クストリッツァ(Captain Aleksic) / ニコラ・コーヨ(Filipovic) / ミリャナ・カラノヴィッチ(Nada, wife of president) / ブラニスラフ・ラレヴィッチ(president) / ダヴォル・ヤニッチ(Tomo) / アドナン・オメロヴィッチ(Eso) / オブラド・ドゥロヴィッチ(Vujan)
配給: ギャガ
公開: 2004年5月14日(仏)、2005年7月16日(日)
上映時間: 154分
 
【世間の評価】 ※2016.6.29時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (49人)  
Yahoo! 映画: 3.67/5.00 (43人)
IMDb: 7.7/10.0 (9,885人)
Rotten Tomatoes(Critics): 5.9/10.0 (6人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.1/5.0 (5,113人)
 
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