micmacs
アメリ』や『デリカテッセン』のジャン・ピエール・ジュネの監督作。

力の抜けた、サスペンスコメディ。
ファンタジー色もある。

構図や美術、色使いがキレイ。

各登場人物も個性は弱くはないのだが、そこへの切り込み方が過剰でなく、センスが良い。
裏を返すと、深く切り込んでいないからか、あっさりし過ぎている嫌いはある。主人公のバジル(ダニー・ブーン)ですら、薄味。

とはいえ、ジャン・ピエール・ジュネの確立された世界観を、肩の力を抜いて楽しめる作品であることに間違いはない。

「ミックマック」のあらすじ

レンタルビデオ店で働くバジルは、偶然居合わせた発砲事件で流れ弾を頭に受けてしまう。一命を取りとめたものの、銃弾は頭に残ったまま生きていくはめに。おまけに、入院中に仕事も家も全てを失ってしまったバジルだったが、廃品回収をしながら共同生活を送るユニークな仲間たちと出会う。彼らは、冷蔵庫に入れる“軟体女”、計算の天才“計算機”、人間バズーカでギネスブック記録を持つ“人間大砲”、ことわざの天才で元民俗歴史学者の“言語オタク”、ガラクタアーティストの“発明家”ら、不思議な特技を持つ7人の超個性派集団。彼らに温かく迎えられ、新たな人生を歩み始めたバジル。ある日、頭の銃弾を作っている軍事会社と幼い日に父の命を奪った地雷製造会社が、競合し向かい合って建っているのを発見。そこで彼は、仲間と共に2つの軍需企業への復讐(いたずら)を企てる……

以下、印象に残ったシーンを振り返る。

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レンタルビデオ店で働くバジルは、名作のセリフはすべて覚えているほどの映画好き。そこも好感度高い。
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冒頭近く。事件に巻き込まれてのち、退院したバジルが職場のレンタルビデオ店に行くと、既に別の人を雇ってしまったと言われてしまう。
哀しいシーンのはずだが、話のトーンの軽さに加え、色使いのレトロポップさに目を奪われ哀しさはみじんもない。
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家もなくなり、外で段ボールで寝ようとするバジルだが、段ボールの長さが足りず顔と足先の両方を同時に覆うことができない。
細かいこういうシーンが愛おしい。
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ダニー・ブーンはなんともいえない良い顔をする。右の民族史学者レミントンを演じるのは『最強のふたり』で圧倒的な存在感を出していたオマール・シー。
本作では、メイクや髭の影響もあって別人物に見えるが、ころころ変わる表情のいきいきとしている様は健在。

中国雑技団レベルの身体の柔らかさを持つ、ラ・モーム・カウチュ(ジュリー・フェリエ)も重要な役柄。
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この体勢は彼女ならでは。彼女の存在がファンタジー色を強くしている。優しい表情は安心感を与えてくれる。
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冷蔵庫から出ての、この表情。見事。

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ジュネ作品には欠かせないドミニク・ピノンは、今回も持ち味を生かしている。

プロットはまるでドリフのよう。
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窓ふきのふりをして、軍事会社社長ド・フヌイエ(アンドレ・デュソリエ)の背後から忍び寄る3人。
目が合うと、鏡をガラスのようにして自分の顔を見ているフリでバレずに済むバジル。(そんなわけないだろ!)

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情事を監視カメラ越しに観ている警備の男(ユルバン・カンセリエ)。
良い表情するなあと思っていたら、彼の本職はコメディアンだった。

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秘密基地への入り口。
こういう美術をチームジュネは丁寧に作りそうなイメージ。
よくよく見ると、原題にもある”tire-larigot”の文字が。

なお、”à tire-larigot”はノンストップの意。
ミックは策略とかいたずら、マックは沢山という意味なので、原題を正確に訳すと、ノンストップのたくさんのいたずら(策略)のような意味となる。

 
最後にバージョン違いの、チラシデザインを紹介。
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フランス語版。

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日本語版。

英語版がいちばんレトロっぽさ押し。
フランス語版は仲間感が強い。
日本版は童話のようなファンタジー色が強い。
三者三様だということがよくわかる。

原題(仏語): Mic-macs à tire-larigot
英題: Micmacs
製作: フレデリック・ブリヨン、ジル・ルグラン、ジャン・ピエール・ジュネ
監督: ジャン・ピエール・ジュネ
脚本: ジャン・ピエール・ジュネ、ギヨーム・ローラン
撮影: テツオ・ナガタ
美術: アリーヌ・ボネット
音楽: ラファエル・ボー
衣装: マドリーヌ・フォンテーヌ
出演: ダニー・ブーン(バジル、頭の中に弾丸の残った男)、アンドレ・デュソリエ(ド・フヌイエ、オーベルヴィリエ軍事会社社長)、ニコラ・マリエ(フランソワ・マルコーニ、ヴィジランテ兵器会社社長)、ジャン・ピエール・マリエル(プラカール、ギロチン生存者)、ジュリー・フェリエ(ラ・モーム・カウチュ、軟体女)、オマール・シー(レミントン、民族史学者、黒人)、ドミニク・ピノン(バスター、人間大砲の弾)、ヨランド・モロー(ママ・チャウ、料理番)、ミシェル・クレマデ(タイニィ・ピート、発明アーチスト)、マリー・ジュリー・ボー(カルキュレット、計算機)、 ユルバン・カンセリエ(マルコーニ邸の警備)、ジャン・ピエール・ベッケル
編集: エルヴェ・シュナイド
配給: ワーナー・ブラザース(仏)、角川映画(日)
公開: 2009年10月28日(仏)、2010年9月4日(日)
上映時間: 105分
製作費: €27,000,000
興行収入: $1,260,917(米、2010.10.15時点)
 
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