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川島雄三監督、そしてこの「しとやかな獣」。
どちらも名前は何度も耳にしてはいたが、観るにまではいたってなかった。
今回、Amazonプライムビデオのおかげで観てみることに。

96分程度の短い尺ながら、エッセンスが濃密に詰まっている。

冒頭から、夫婦二人で部屋をみすぼらしく見せようと、部屋の模様替えにいそしむ。アパートの外から捉えたカメラの構図も効果的。
洋室風の家具はしまい、テレビや架かっている絵も片付ける。テーブルクロスは安物のビニールに替え、灰皿もいつもはトイレに置いてあるアルミのものにチェンジ。旦那の服は、息子が昔着ていたパジャマに。
ここまででつかみはOK。

前田一家は揃いもそろってアコギで強欲。
家族ぐるみで、息子が会社から使い込んだ金をあてにし、娘が愛人をしている作家への金の無心に余念がない。

しかし、題名にある、”しとやかな獣”は、この家族ではなく、息子が惚れ込んでいる会社の経理の女・幸枝(若尾文子)。

若尾文子は、洋服姿ではさほど魅力を感じなかったが、和服になった途端、魅力倍増。
当時、20代後半のはずだが、もっと年上に見える、色気を備えている。

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脚本も悪くない上、全編を通して映像、カメラの構図に並々ならぬこだわりが感じられる。

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例えば、このような、玄関のドアの小窓越しに顔が覗くショットが何度が使われる。

他にも、通気孔のようなところ越しに部屋の中を撮ったり、隣の部屋から頭を出して盗み見している構図だったり、役者の寄りのシーンでは強い印象を与えたり、真っ赤過ぎる夕焼けを背景に姉と弟がテレビから流れる音楽に合わせて躍り狂ったり、その時姉が窓に唇を押しつけたり、もうとにかく印象深いシーンのオンパレード。

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愛人をしている姉役の浜田ゆう子は、エロスを出すようデフォルメされている演出により、当時23歳前後だが過剰に艶めかしい。

オープニング&ラスト、そして夫婦二人で部屋の電気を消してビールを飲むシーンで、能や歌舞伎を思わせる邦楽のテーマが使われている。これが非常に印象的。

来訪する人が、ずけずけと家に入り込んでくるのは、時代なのか。この映画ならではなのか。
ツケを回収に来る銀座のママ役がミヤコ蝶々だということは観終わってから知った。
税務署員役の船越英二の青ざめた表情は見事としか言いようがない。

ラスト、映像には映さないが、クビになった税務署員が飛び降り、それを妻(山岡久乃)がベランダから下の騒ぎを見て知り、ソファで居眠りしている夫(伊藤雄之助)をそれまでにない形相で見つめることろで映画は終わる。この後に家族を待ち構える運命を憂えての表情だと思うが、センスあるなぁと思わされる。

息子(川畑愛光)がちょいちょい大声を出すのが気に触る点はあったが、全般的に飽きさせず、新鮮な取り組みに溢れていて楽しめた。

もっと今の時代でも観られていい作品。

ちなみに、観終わってから気づいたことだが、「しとやかな獣」は「しとやかなけもの」ではなく、「しとやかなけだもの」と読むのが正解らしい。

監督:川島雄三
脚本・原作:新藤兼人
撮影:宗川信夫
美術:柴田篤二
音楽:池野成
出演:若尾文子 / 伊藤雄之助 / 山岡久乃 / 浜田ゆう子 / 山茶花究 / 川畑愛光 / 小沢昭一 / 高松英郎 / 船越英二 / ミヤコ蝶々
公開:1962年12月26日
上映時間:1時間36分

@Amazon Prime Video