moshpit

久しぶりに足を踏み入れた、渋谷ユーロスペース。

百軒店のあたりは、ゲスさ満開なうえ、飲み屋が結構賑わってて惹かれた。
なんせ、道のど真ん中にネズミの死骸が転がっているのなんて、今の日本ではそうそう見れない光景だ。

 
本作は音楽系のドキュメンタリー。
その音楽どころか、名前すら聞いたこともない、3つのバンドとユニットが、恵比寿リキッドルームで行われるリリースパーティー(ライブ)に向けて準備していく段階での様々な人間模様、そしてライブ中の様子がとらえられている。

そもそも、モッシュピットとは、興奮した観客が密集した状態で無秩序に体をぶつけあうことを指す。
モッシュは知っていたが、そのさらに感極まったバージョンらしい。

そのタイトル通り、一般的なアーティストのライブ以上に、演者と客が入り乱れる。
客が主役に近い立ち位置にいるといえる。
人間誰しも、多かれ少なかれ主役になりたい願望は持っているはずで、それが色濃く出ている場が彼らのライブのステージなのだろう。

”オタク”のファンらも、生き生きとしている。
ファンは”オタク”と称されるが、昔から存在する”オタク”という概念や存在とは、ちょっとだけニュアンスが違うように思えた。
これは、一般的にニュアンスが変わったのか、彼らのコミュニティでだけ変わったのか。

モッシュピットが、演者とファンの距離が非常に近いという特徴を持つように
本作には、演者だけではなく、ファン達も多く登場する。
それも映り込むだけでなく、端役以上の扱いでカメラに追われる。

主催のハバナイ(Have a Nice Day!)の浅見北斗氏をはじめ、演者たちは一様にアツい。ひと昔前の売れないバンドメンバーのように。しかしそれは自分が知らないだけで、彼ら以外にも純粋にアツく生きている人たちは数多くいるのだろう。自分がその熱からは遠いところにいることを思い知った。

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印象に残ったシーンや、登場人物は少なくない。

例えば、ネイチャー(NATURE DANGER GANG)のメグが、自分の音楽がやりたいから脱退するとメンバーに告げるシーン。
リーダーのSEKIは激昂する。自分の音楽を今の環境でやればいいだろと。リーダーの自分を倒してやればいいだろと。それができないなら、一人でやってもうまくいくわけないと。

これはまあリーダーが正しい側面もありつつ、実際は、このリーダーをはじめ他のメンバーを自分の音楽で押さえつけたいのかどうかという彼女の趣向でもあろう。

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しかし、そんなことよりも、普段はラーメン屋で働いている兄ちゃんが、激しいバンドのリーダーをつとめて、脱退していく仲間に対してアツく語っている姿には、心を動かすものがあった。
それは、また部活等の熱さとは違う。純粋なだけでは生きられない、大人の熱さ。

そういう意味では、彼にいちばん心を動かされたかもしれない。ハバナイのリーダーの浅見氏よりも、SEKIかもしれない。

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ネイチャーを脱退するメグ。ステージ上での妖艶な雰囲気は目を引いた。バックパックから覗く豹のぬいぐるみ(?)がキュート。

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ライブ中にスーマリ3やスト2をやっているこいつ(Kenny G)はなんなんだ。
家からブラウン管のテレビを持って、混んでいる電車に乗っている絵はなかなか良かったが。

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ハバナイのドラムをつとめる、ちゃんしまの笑顔も印象的。

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おやホロ(おやすみホログラム)のカナミル。アフタートークも含めて、相当感受性の強そうな雰囲気。

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おやホロ(おやすみホログラム)の八月ちゃん。ハバナイの演奏を袖で聞きながら、歌を口ずさみながら、涙を流す、絵になる1シーン。

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客席側のもみくちゃぶり(モッシュピットぶり?)を天井の固定カメラから撮っている映像は良かった。到底自分があそこに入りたいとは思えなかったが。

なお、それほどはフィーチャーされていなかったが、ライブで戻ってきたハバナイの内藤さん。ちょっと見ただけでもその存在感は伝わってきた。彼のライブでのパフォーマンスはもうちょっと見てみたい。

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作中でもアフタートークでも、皆がしきりに凄い凄いと言い、敬意を表していたハバナイの浅見氏。しかし、映画自体からは彼の凄さはわかりやすくは伝わってはこなかった。
単純に、この映画に使われた彼のライブシーンが自分に刺さらなかっただけかもしれないが、何となく、監督の岩淵氏も、浅見氏のプロデューサー的な手腕のほうにフィーチャーしたいように感じられた。

今回の音源+フリーライブというイベントは、クラウドファンディングを使ってお金が集められている。これは今風だというだけでなく、CDに投票権がついている(ビックリマンシール的な)AKBモデルなどより、はるかに健全で、今後も様々な形で活用されるのではないだろうか。

 
映画の総評としては、内容的には荒さが目立つが、観たかいは確かにある、存在意義がある映画だという印象。

映画もさることながら、ライブ感のある演劇も好きな自分は、もともとドキュメンタリー作品のほうが、性に合っているのかもしれないなと本作を見て強く感じた。
大作は大作で面白いが、人生の推進力となるのは、こういった粗削りの作品なのではないか。もっと接する機会を増やしたいなと、素直に思えた。

なお、作品自体は、まったく登場するバンドについての予備知識がなくても問題なく楽しめた。
しかし、おやホロの二人とプロデューサーの小川氏をまじえたアフタートークでは、映画に出てこない話も出てきて、軽い疎外感を感じた。さらに言うと、アフタートークの時間が思いのほか長かったし、やや重苦しい空気にもなったので、本編の印象が少し薄れてしまった。
それはそれで面白かったが、アフタートークには良し悪しがある。

最後に、せっかくなので、チラシの裏もあげておく。
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監督: 岩淵弘樹
プロデューサー: カンパニー松尾
出演: Have a Nice Day!、NATURE DANGER GANG、おやすみホログラム
配給:有限会社ハマジム
上映時間: 100分
公開: 2016年5月21日
 
【世間の評価】 ※2016.5.25時点
CinemaScape: -/5.0 (0人)  
Yahoo! 映画: 3.00/5.00 (1人)
IMDb: -/10 (0人)
 
@渋谷ユーロスペース