愛する人

原題は”Mother and Child”。こちらのほうが邦題よりも断然しっくりくる。

直訳して「母と子」だと固いし、「マザー・アンド・チャイルド」だとふわっとしてて伝わりにくいから致し方ないところだろうが。

 
一見よくある作品のようでいて、変わった内容。

原題のとおり圧倒的に母と子の話であるうえ、子もほとんどが女の子であるため登場人物の多くが女性であり、”出産”と”養子”が強いキーワードとして登場する。

堕胎が宗教の問題から社会に受け入れられず、その結果としてか、養子縁組が普及しているアメリカならではのストーリー。

登場人物もパンチが効いており、なかなか楽しませてくれた。
評価が高いのにも納得。

以下、ネタバレあり。

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主要人物はいずれも印象に残る。

まずは、14歳で子どもを産むも、その日に養子に出し、それ以来一度も会ってないのに、ずっとその子に宛てて出さない手紙を書き綴っている、カレン(アネット・ベニング)。
当初は心が荒れていた彼女も、メイドのソフィア(エルピディア・カリーロ)の娘や、職場で出会ったパコ(ジミー・スミッツ)の存在もあり、少しずつ心が解きほぐされていく。

カレンが絡む話は、彼女がとっつきにくい性格だというのがあっても、さすがに50代で丸くはなっているので、比較的平和な展開。ところどころ差しはさまれる柔らかい音楽(ややわざとらしいが、許容範囲内)に、気持ちもやさしく包まれる。

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ラスト近くではこのとおり刺々しさが微塵もない表情に。笑顔も美しい。「母と子」の話だからか、パコとの距離が縮まる部分の描写は少なめ。

 
そして、本作の台風の目、カレンが養子に出した娘、エリザベス・ジョイスを演じるナオミ・ワッツ。
マルホランド・ドライブ』の時より(おそらく8歳ほど)歳はとっているが、魅力的に映った。

弁護士には見えなかったが、自信に満ちた表情は美しい。やもめ上司のポール(サミュエル・L・ジャクソン)や、隣家の旦那(マーク・ブルカス)を誘惑して家に連れ込むというキャラクター設定には意表を突かれたが、スリリングさを楽しんでそうな姿にはグっと来た。

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ナオミ・ワッツとサミュエル・L・ジャクソン。衝撃の絵面ではある。

結婚する気もなく、半ば自暴自棄気味に性に奔放な彼女ではあったが、妊娠したことを知ってからは、ポールのもとを理由を明かさずに去り、人が変わったように穏やかな表情となる。目が見えない少女(ブリット・ロバートソン)との会話シーンでも、映画前半部のような攻撃性は一切感じられない。

ただ、出産へのこだわりは強く、帝王切開ではなく自然に生みたいということ、生まれる瞬間を見たいから眠らせないでということを医者に注文する。

 
もう一人の主人公。自分たちでは努力してもどうしても子どもが作れず、養子を熱望。その子の実母の分娩にも立ち会い、感情移入しながら、土壇場で縁組がキャンセルされるルーシー(ケリー・ワシントン)。
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元来テンパりがちな上、養子縁組も一度は破談となり心ここにあらずのルーシー。

そこにエリザベスの娘の件が転がり込み、晴れて母親となるが、子育ての大変さに早々に嫌気が指し、母親にめっちゃ怒られるなど、他の二人に比べると負っている傷は深くはない(とはいえ、旦那に「子どもを生んでほしかったよ」と言われたりはしている)ため、全体のストーリーの緩衝材的ポジションの役柄となっていた。

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ルーシーに養子を出すのをドタキャンした、弱冠20歳ながら常に上から目線のレイ(シャリーカ・エップス)もなかなか強い役柄。

また、カレンの14歳のときの恋人でエリザベスの実の父親のトムは、登場シーンは短かったが、彼を演じていたデヴィッド・モースの風貌に個人的に強い親近感を抱いていることもあり、印象に残った。

 
ただのハッピーエンディングではなく、悲喜こもごも入れ乱れているところや、強いキャラが適度に散りばめられているところ、母と子にかなり強くスポットを当てているところ等、エッジが効いていて楽しむことができた。

 
最後に、別バージョンのチラシ・ポスターやDVDのデザインを紹介。本作は、かなり多くのパターンが存在していた。

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英語版の別バージョン。だいぶ印象が異なる。

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日本語版はピンク基調。女性に観てもらいたかったのだろう。

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日本語別バージョン。ナオミ・ワッツとアネット・ベニングにフィーチャー。

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スペイン語版。ある意味ずるいのかもしれないが、一番ニュートラル。

 
<<追記>>
Wikipediaによると、製作費$7 millionに対し、Box officeの興行収入は$4 million。いい映画がお金を生むわけではないということがよくわかる。

監督: ロドリゴ・ガルシア
脚本: ロドリゴ・ガルシア
製作: ジュリー・リン / リサ・マリア・ファルコーネ
製作総指揮: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
音楽: エド・シェアマー
撮影: ハビエル・ペレス・グロベット
編集: スティーヴ・ワイスバーグ
出演: ナオミ・ワッツ(Elizabeth) / アネット・ベニング(Karen) / サミュエル・L・ジャクソン(Paul) / ジミー・スミッツ(Paco, Karen’s husband) / ケリー・ワシントン(Lucy) / S・エパサ・マーカーソン(Ada, Lucy’s mom) / デヴィッド・ラムゼイ(Joseph, Lucy’s husband) / シャリーカ・エップス(Ray, pregnant college student) / エルピディア・カリーロ(Sofia、Karen’s maid) / シモーヌ・ロペス(Cristi, Sofia’s daughter) / アイリーン・ライアン(Nora, Karen’s mother) / エイミー・ブレネマン(Dr. Stone、エリザベスの勤める法律事務所の嘱託医、偶然大学が同じ) / マーク・ブルカス(Steven, neighbor) / カーラ・ギャロ(Tracy, Steven’s wife, pregnant) / タチアナ・アリ(Maria, Paul’s daughter) / エリザベス・ペーニャ(Amanda, Elizabeth’s new boss) / ブリット・ロバートソン(Violet, Blind girl) / デヴィッド・モース(Tom, Karen’s old boyfriend, Elizabeth’s birth father) / グロリア・ガラユア(Melissa, Paco’s daughter) / リサ・ゲイ・ハミルトン(Leticia, Ray’s mom) / チェリー・ジョーンズ(Sister Joanne) / マイケル・ウォーレン(Joseph’s dad) / ラターニャ・リチャードソン(Joseph’s mom) / アーメド・ベスト(Julian, Paul’s son)
配給: ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(米)、ファントム・フィルム(日)
公開: 2009年9月14日(カナダ、TIFF)、2010年5月7日(米)、2011年1月15日(日)
上映時間: 125分
 
【世間の評価】 ※2016.11.9時点
CinemaScape: 4.1/5.0 (14人) 
Filmarks: 3.8/5.0 (703人) 
Yahoo! 映画: 3.90/5.00 (192人)
IMDb: 7.2/10.0 (9,870人)
Rotten Tomatoes(Critics): 6.6/10.0 (121人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.7/5.0 (6,874人)
 
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