ネクストゴール

日本では劇場公開されていないのか(と思ったら、アスミック・エースによって配給されていた)、知名度は高くはないが、観た人の評価が高く、気になっていた作品。

米領サモアのサッカー代表チームを実際に追ったドキュメンタリー。FIFAランキングの最下位が彼らの決まったポジション。2001年のオーストラリアとの代表戦では、31-0という脅威的な点差で負け、人類史上最弱の代表チームとして世界から失笑を買った。

屈辱の敗退を喫した後、米領サモアのサッカー協会は、サモアの血を引くコーチをオーストラリアから呼びよせ指導してもらうが、その後の南太平洋大会では全敗なうえ、1ゴール足りとも決められない。

映画前半の彼らのプレーは、サッカーが素人の自分から見ても、日本の高校でも、どの都道府県であっても、県でベスト4にすら入れないレベル。

米領サモアのサッカー協会は、最後に頼れる先として、アメリカ本土のサッカー協会にヘルプをお願いする。その監督募集に志願したのが、オランダ人で、アメリカのプロリーグでの監督経験もあるトーマス・ロンゲン。

試合展開も痺れるし、監督、選手、そしてフロントの人物を含めて、出演者の表情も良い。真剣にスポーツに向き合っているから、その表情が出てくる。

特に選手は、前半の顔と、後半の顔はまったく違う。自信がついているし、戦う人間の表情になっている。
逆に、監督は、その土地や選手たちの雰囲気に触れて、柔らかい表情になっていく。

監督の選手へのゲキの飛ばし方は、ある意味欧米的な、ステレオタイプな範疇に入るのかもしれないが、それでも心に響いてくる。多くの人に見て欲しい作品。

以下、ネタバレあり。

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一つひっかかった点としては、ワールドカップ予選に向けての準備期間も短いからやむをえないとは思うが、点数を決めているのが、サモアの血は引いているものの、通常はアメリカ本土で暮らす、いわば助っ人の二人であるというところ。

とはいえ、これがチームが変わるきっかけにはなっていくだろう。
勝ち方を知ること、自信を持つことの意味は大きい。
(2016年2月時点のFIFAランキング。米領サモアは、サモア、クック諸島と並んで167位。健闘している。)

撮影手法について言うと、これが本当にドキュメンタリーなのかと、目を疑う内容。
まず、映像自体が終始落ち着いたトーン。これは米領サモアという国柄もあるのかもしれない。例えば試合前のロッカールームで監督が選手に気合いを入れるシーン等でも、映像が映画的に撮れているという印象。映像作品として自然過ぎて、観ている最中に、これはもしかしてドキュメンタリー風という作風なのではないかと、勘ぐったほど。逆に言うと、ドキュメンタリーらしい荒々しい臨場感はあまり感じられない。

そもそも、サモアと、米領サモアの二つの国が存在していることを知っている人はさほど多くないと思うが、気候、宗教観、家族観、風土、戦士の血を引く誇り、第三の性(ファファフィア)に対する寛容性、などなどが垣間見れるのも、この作品の興味深い点である。

Next Goal Wins
なお、日本版のチラシデザインがこちら。ごちゃごちゃしてるの好きだよね。
邦題の長さに通じるものがある。。。

 
最後に。

ドキュメンタリーを観るたびに同じことを思うが、ドキュメンタリーであっても、どこをどう切り取るかで作品はまったく違うものになる。そのことは常に頭の片隅に置いておかなくてはならないなと、あらためて感じた。

製作: クリスチャン・ブロディ
監督: マイク・ブレット、スティーヴ・ジェイミソン
音楽: ロジャー・ゴウラ、サラ・ブリッジ
出演: トーマス・ロンゲン、ジャイヤ・サエルア、ニッキー・サラプ、ラミン・オット、ジーン・ニーミア、ロールストン・マサニアイ、ラリー・マナオ、チャールズ・アール、他、サッカーアメリカ領サモア代表
配給: アスミック・エース(日)
公開: 2014年5月17日(日)
上映時間: 98分
 
【世間の評価】 ※2016.2.19時点
CinemaScape: 未登録
Yahoo! 映画: 4.57/5.00 (23人)
IMDb: 7.9/10 (1,598人)
 
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