オアシス イチャンドン

ヴェネツィア映画祭で3部門の賞を獲った作品。そのことは観終わるまでは知らなかったが、納得の受賞である。

 
出だし早々から、いかにもダメそうな男、ジョンドゥ(ソル・ギョング)が登場。

バスを待つ人にタバコを恵んでもらったり、唾をマンションから垂らしたり、お金を払う前に店の商品である豆腐にかじりついたり(それを許し、牛乳まで与える店主にも驚きだが)、電話をかける小銭を、隣で電話してしている中学生ぐらいの子どもにせびったり……枚挙に暇がないほど、徹底して細かいダメポイントがショーケースに並べられる。

自動車による過失致死で刑務所に入っていたのだが、その被害者の娘コンジュ(ムン・ソリ)が本作のヒロイン。被害者の家へ、無神経にも挨拶に行き、その娘の存在に気づく。娘は重度の脳性麻痺で、歩くことはおろか、満足に話すこともできない。

二度目に彼女の部屋を訪れた時に、花束を、隣人経由で渡すが、その際に部屋の鍵の隠し場所を知り、後ほど勝手に入り込む。

そして、あなたを気に入ってると一方的に告白し、襲いかかる。

なかなか衝撃的な展開である。

以下、軽いネタバレあり。

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その時、コンジュは激しい拒否反応を示すが、数日後、コンジュは男に連絡をする。

それをきっかけに二人の距離は縮まっていく。

お金もなく、到底まともな大人とは言い難い男だが、直感的に素直に生きている彼は、彼女を外に連れ出し、ちょっとした冒険気分を味わせてあげる。

自分の身体を満足に動かせないコンジュは夢想家。彼との外出中も、妄想は膨らませつつ、その時を楽しんでいる。

実は、男が過失致死でつかまったのは、兄の罪を自分から進んで引き受けたためで、彼はそのことを気にしていないが、彼がよかれと思って、家族の会に彼女を連れていくと、兄が当然激怒する。

そんな中、二人は初めて夜を共にする。しかし、途中でコンジュの兄夫婦が部屋に入ってきて、男が襲ったものと決めつけ、警察に連行される。興奮すると話せなくなるコンジュは、彼の無実を伝えることができない。

隙を見て警察から抜け出した男は、コンジュの部屋の外にある樹の枝を切りに行く。それは部屋に飾ってあるオアシスの絵に、外の木の枝の影が映るのが怖いと言っていた彼女のためなのである。

彼はそのまま刑に服す。
刑務所にいる彼からの、愛情溢れる手紙が彼女に届き、その内容が読まれたところでジエンド。

コンジュを演じるムン・ソリの激しい演技も凄まじいが、彼のさりげなくもバカ&純粋な役を演じる能力の高さにも感心させられる。

脚本・演出も素晴らしい。
現実の人間は、彼のように、凡そはバカでダメな人間だとしても、時々純粋な良い面もあり、それが好影響を与えている周りの人間もいたりするもの。そのキャラクター設定に唸った

二人の愛も、巷で溢れているような、オシャレなものではない。お互いを姫様、将軍と呼び合ったり、渋滞中の高速で、車の外にコンジュをお姫様抱っこして連れ出したり、二人で歌ったり。しかし、それらの中に、しっかりとした上っ面でない愛情を感じる

映画らしい映画。
観る側の人間力も問われていると、感じざるを得ない。

しかし、二人の愛は伝わってくるものの、だからこそ今後の二人の行く先を考えれば考えるほど、不安しか感じられず、この映画自体への評価もやや減点となった。

良い映画、凄い映画だとは思うし、韓国の映画制作力の強さに嫉妬もする。人にも勧める。されど、好きな映画とまでは言えない。そんな映画である。

 
<<追記>>
ムン・ソリの演技を思い返した際に、ふと水野美紀を思い出した。誰もができる役ではないと思うが、彼女ならこの役を演じられそうな気がする。

製作総指揮:チェ・ソンミン
製作:ミョン・ケナム
監督・脚本:イ・チャンドン
撮影:チェ・ヨンテク
美術:シン・ジョミ
音楽:イ・ジェジン
衣装:チャ・ソニョン
出演:ソル・ギョング / ムン・ソリ / アン・ネサン / リュ・スンワン / チュ・グィジョン / キム・ジング / ソン・ビョンホ / ユン・ガヒョン / パク・ミョンシン / パク・キョングン
配給:シネカノン
公開:2002年8月9日(韓)、2004年2月7日(日)
上映時間:132分
 
【世間の評価】 ※2016.2.12時点
CinemaScape: 4.1/5.0 (58人)  
Yahoo! 映画: 4.21/5.00 (82人)
IMDb: 8.0/10 (5,304人)
 
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