海辺のポーリーヌ

『ロメールと女たち』という特集の一環で、角川シネマ有楽町にて。

マイナーな企画だと思っていたが、ロメールだけあって、席は大半は埋まっていた。
(と思ったら、期せずして水曜サービスデーだったからチケットが1100円と安く、それゆえあんなに混んでいたのかもしれない。)

 
80年代の映画だからか、はたまたロメール映画の特徴だからか、短めのオープニング、そして余韻の少ないエンディング。

先日観た『三重スパイ』で、ロメール映画の会話の多さは理解してはいたが、本作も会話が多く、みんなよく喋る。
会話劇自体は決して嫌いではないが、冒頭から会話が多いと、話に入り込む前の段階でやや退屈に感じてしまう嫌いはある。

テーマは「恋愛」。

いい大人が、真剣に恋愛について語り合う。おそらく何度もこのテーマについて語っているに違いなく、語り合ったところで答えが出るわけではないことをわかっているのに、熱くなって語り合う。

それも、大人同士でならまだしも、まだ15歳のポーリーヌ(アマンダ・ラングレ)に対しても。
大人たちも最初はポーリーヌを年下の子どもとして扱っているのだが、自分がアツくなってくると構わずに内面をぶちまけ始める。
それを聞くポーリーヌのほうが、大人たちよりも冷静に考えている。

この未成熟な大人たちの滑稽さが、この映画の一つのテーマでもあるのだろう。

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従姉妹のマリアン(アリエル・ドンバール)や、飴と落花生を売っている女(ロゼット)のヌードシーンがあるなど、からっとしたエロチシズムが溢れている。

その中で、脱がないまでも、醸し出す雰囲気がもっともエロティックなのはポーリーヌ。
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特に、アンリ(フェオドール・アトキーヌ)の家で、レコードをかけて、水着姿で抱き合いながらシルヴァン(シモン・ド・ラ・ブロス)とポーリーヌが踊るこのシーンのエロさが際立っていた。これこそが、ロメールの真骨頂なのだろうか。時代のせいか、水着がやたら小さいし。

ポーリーヌ以外はちょっと痛いやつらだが、中でもマリアンに横恋慕するピエール(パスカル・グレゴリー)が痛々しく悲哀を誘う。
おせっかいなうえ口は軽いし、マリアンはまったく振り向いてくれないし、ポーリーヌも嫌ってはいないが、完全には慕ってくれてはいない。

そのピエールをなだめるために、アンリの家を去る彼に、ポーリーヌは「キスをしてよ」と挨拶のキスを求める。
しかし、片側のキスのとき、ポーリーヌは唇をピエールに向けて口と口でキスをする。
一番子どもであるはずのポーリーヌの、生まれ持った男を慰める仕草にグッと来た。

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ピエールはウィンドサーフィンをしている姿は結構カッコいいのに、私服になるとダサい。

アンリはマリアンの強い愛情にうんざりし、マリアンがパリに行っている間に置き手紙を残して、去ってしまう。
飴売りの女と情事を重ねていたのはシルヴァンではなく自分だという真実をマリアンに告げないままに。卑怯な奴。
(そのことをポーリーヌは知っている。)

ラスト、オープニングと同じように別荘の門のショット。
ミニを停めて、マリアンはポーリーヌに言う。真相はわからないのだからお互い良い方に考えようと。これはポーリーヌを傷つけないための発言であることを、ポーリーヌも理解し、それに同意する。

結局この話は、ポーリーヌが一夏の経験を通して、大人になった話なのだ。

総じて、男どもはたいして冴えないが、女性陣はチャーミング。

不思議に思ったのは、リゾート地であるはずなのに、青い海ではなく意外と殺風景な海であること。
モン・サン・ミッシェルが近そうだったから、北のほうの海なのかなと思っていたら、そのとおりで舞台はノルマンディだった。

あと登場する車だが、マリアンはミニに、ピエールはプジョーに、アンリはルノーに乗っているが、いずれも大衆車。リゾート地っぽいのに、それもちょっと不思議だったが、クルマが庶民的なおかげでギラギラ感はなくてよかった。

最後に、日本版のDVDパッケージデザインを。
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上のパッケージデザインよりも、こっちのほうが自分の好み。

原題: Pauline à la plage
英題: Pauline at the Beach
製作: マルガレート・メネゴーズ
監督: エリック・ロメール
脚本: エリック・ロメール
撮影: ネストール・アルメンドロス
音楽: ジャン・ルイ・ヴァレロ
出演: アマンダ・ラングレ(Pauline) / アリエル・ドンバール(Marion) / パスカル・グレゴリー(Pierre) / フェオドール・アトキーヌ(Henri) / シモン・ド・ラ・ブロス(Sylvain) / ロゼット(Louisette, strolling vendor of peanuts and candy)
配給: フランス映画社
公開: 1983年2月(西独、ベルリン映画祭)、1983年6月23日(仏)、1985年6月15日(日)
上映時間: 95分
 
【世間の評価】 ※2016.5.26時点
CinemaScape: 3.6/5.0 (69人)  
Yahoo! 映画: 3.90/5.00 (21人)
IMDb: 7.5/10 (4,383人)
 
@角川シネマ有楽町