pride

女性の友人のお勧めで。

あらすじは知っていたが、本当にがっつりとゲイ&レズビアン(役)の人々が出てくる作品だ。

時代は1984年から1985年にかけて。ロンドンと南ウェールズの小さい村が舞台。

実話をもとにしているということもあって、政治(サッチャー首相)の方針、ゲイ・レズビアンへの世間の反応のほか、当時の価値観、文化が垣間見れるシーンには興味がそそられた。
80年代半ばという時代に、レズビアンとゲイのパレード(”London Pride”)が既に存在することにまず驚く。規模はよくわからないが、日本との大きな違いを感じる。
(と言いつつ、その時代の日本のゲイ・レズビアン事情がどうだったのか、自分はよくわかってはいないわけだが。)

また、ベジタリアンの話が途中で出てくるが、レズビアンの一人(もしくは二人とも?)はVeganと話していた。
当時、既にその言葉があったのだな。これまた日本と大きく違う。

出演陣は、LGSM(Lesbians and Gays Support the Miners)のメンバー、ディライス炭鉱の人々ともに魅力的に描かれている。
LGSMのメンバーは世間から白い目で見られながらも、後ろ向きになることなく、皆で助け合い、前へ進んでいる。
ディライス炭鉱の人々も、最初はLGSMのメンバーに戸惑いながらも、ほとんどの人々はもとのキャラクターの良さも手伝って、LGSMと打ち解けていく。

特にディライス炭鉱を支える女性陣の明るさとパワーが、作品全体に勢いを与えている。

ジョナサンによる踊りをはじめとして、ミュージカル化が計画されているのも納得できる作り。
なかでも、マークがディライト炭鉱の人々もいる場でスピーチをし、会場が拍手に包まれる中、一人の女性が歌い出すことによってはじまる”Bread and Roses”は、いい歌だった。

ラストには嬉しい喜びもあり、幸せな気持ちで観終えることができる。

以下、ネタバレを含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

 - ad -

ディライス炭鉱の人間とLGSMがはじめて直接対面したシーン。
pride_10
LGSMのリーダー、マーク(右から2人目)は活力にあふれていて好感度高い。

この日の、ロンドンのクラブでのゲイ・レズビアンのイベントでのダイのスピーチは白眉だった。
pride_11
シンプルな言葉で、それでいて彼の感謝の気持ちがストレートに伝わってきた。こういうスピーチを自分もできるようになりたいなと強く感じた。

その後、ジョナサンのダンスがLGSMとディライス炭鉱の人々の距離を一気に近くする。
pride_12
最初はLGSMと距離をおいていた二人も、ジョナサンにダンスを習い、ディスコ(?)でも自信をもって女性にアプローチできるように。
pride_02
ジョナサンに後ろから抱きかかえられながら踊るヘフィーナ。良い顔。
ヘフィーナの存在が果たした役割は非常に大きい。
pride_07
特徴的な体型で、愛嬌があり、パワーに溢れるシアン(左)も、本作になくてはならない存在だった。
pride_05
ロンドンのゲシンとジョナサンの家へ泊る女性陣。部屋にあったゲイ雑誌とバイブを発見して大はしゃぎの、ヘフィーナを筆頭とする4名。

自分がゲイということを親が知って以来、良好な親子関係が築けていないゲシン。彼とヘフィーナの関りも面白い。
pride_09
ゲシンがディライス炭鉱の街を初めて訪れた際に、ヘフィーナが「ゲイもレズビアンもいいけれど、北ウェールズの人間をここに連れてくるのだけはダメだ」と真面目な顔で冗談を言うシーン。皆笑い、ゲシンも冗談だと気づくが、しばらく顔がこわばっているのがリアル。
pride_08
故郷のウェールズに帰ることに抵抗を示していたゲシン。憂いのある目元と表情が印象に残る。

なんとディライス炭鉱の書記であるクリフまでも、自分がゲイであることをヘフィーナに告白する。
pride_01
「○○年から知っていた」とヘフィーナは回答し、その後、パンの切り方について注文をつける。そのヘフィーナの姿と、それに従うクリフの関係性が微笑ましい。

その他にも印象に残るポイントはいくつもあるが、その一つがレズビアンカップルの二人をディライスのおばあちゃんがいたく気に入っているところ。
pride_04
バンを降りるやいなや、「私のレズビアンはどこ?」と聞くほど。
pride_06
そして、そのレズビアンカップルと。

また、ラスト近く、ステフの家に泊まり、一緒のベッドでブロムリーと寝るシーンも印象深い。
pride_03
ゲイとレズビアンの親しい友人関係ってこうなんだなと思わされる、良い空気感が流れる。

 
そして、何よりもやられたのは、ラストのパレードのシーン。
主催者側としては、この年のパレードは、政治的なメッセージを伝えるのではなく楽しい感じでやりたいと、言ってくる。
メッセージをかかげるならパレードの一番後ろに行けと。

すると、そこに何台ものバスが現れる。
乗っているのは、全国各地の石炭炭鉱の人々。
LGSMの彼らへのサポートに敬意を表して、逆に、レズビアン&ゲイを支援するためにやって来たというわけ。
人数の多さに、主催者側は君らは先頭へ行けと告げる。
すごい話だ。
最初に支援をしたいと電話したときには、全英石炭炭鉱組合はまともに話もしてくれなかったのに、このパレードでは旗を掲げて先頭を歩いたのだ。
グッと来るね。
こんな話を最後にさらっと持ってくる構成にやられた。

これがなかったら、3.0どまりの評価が、3.25へ上昇。

LGSM、ディライス炭鉱の人々がともに力を合わせて、最終的な成功にたどり着いたという図式も、ありきたりかもしれないが収まりが良くしっくりきた。

 
最後にバージョン違いのチラシデザインを紹介。
pride_jp
日本語版。”○○賞ノミネート”的なものを載せまくり。権威に弱い気質を突かれているようで複雑。

 
<<追記>>
モデルとなったジョナサン・ブレーク本人がインタビューに答えている2014年の記事(The Backstory on ‘Pride’ | Advocate.com[英語])を読んで、新たに知ったことがいくつかあったので追記する。

一つは、なぜLGSMに参加したかという問いに対し、彼は映画の中でも触れられていたが、HIVに感染していたため、少しでもHIVや死の恐怖を忘れるために活動に参加したと答えている。

もう一つが、作中で、当初ブロムリーが21歳になっていないってことで、「まだ成人じゃないね」とステフ等からからかわれ、21歳の誕生日にはバッジをプレゼントされていた点。
“21歳が成人”という意味がよくわかっていなかったが、当時のイギリスにおいて、21歳未満の同性愛者の性行為はお互いの同意があっても違法(異性間だと16歳)だったのだ。その後、90年代に入って18歳に引き下げられ、2001年になってようやく同性間と同じ16歳となっている。

さらに、上の記事によると、当時は21歳以上であっても、同じ空間にゲイが3人以上人がいると警察は立ち入ることができ、(※おそらくそこでセックスしていると)”private”ではない空間での性行為を行ったとして、そこにいる全員が逮捕されたという。
現在は、そこに未成年、すなわち16歳未満がいなければOKと。

いやー、知らないことってたくさんあるもんだ。

原題: PRIDE
製作総指揮: ジェームズ・クレイトン、クリスティーン・ランガン、キャメロン・マクラッケン
製作: デヴィッド・リビングストン
監督: マシュー・ウォーカス
脚本: スティーヴン・ベレスフォード
撮影: タット・ラドクリフ
美術: サイモン・ボウルズ
音楽: クリストファー・ナイティンゲイル
衣装: シャーロット・ウォルター
出演: ベン・シュネッツァー(マーク・アシュトン、LGSMリーダー)、ジョージ・マッケイ(ジョー・”ブロムリー”・クーパー)、フェイ・マーセイ(ステフ・チャンバース、LGSM中心メンバー、女性)、イメルダ・スタウントン(ヘフィーナ・ヒードン、ディライス炭坑委員長の頼りがいのあるおばちゃん)、ビル・ナイ(クリフ、ディライス炭坑書記、ゲイであることをカミングアウト)、パディ・コンシダイン(ダイ・ドノヴァン、ディライス炭坑リーダー)、アンドリュー・スコット(ゲシン・ロバーツ、ジョナサンのパートナー、本屋の店主)、ジョセフ・ギルガン(マイク・ジャクソン、マークの親しい友人でチームを支えている)、ジェシカ・ガニング(シアン・ジェームズ、太っちょ小柄で愛嬌のある女性)、ドミニク・ウェスト(ジョナサン・ブレーク、ダンスマスター)、モニカ・ドラン(マリオン・クーパー、ジョーの母親)、フレディ・フォックス(ジェフ・コール、美形、ディライスの子どもたちに好かれる)、メンナ・トルッスラー(グウェン、マークがかけた最初の電話を受けたおばあちゃん)、ニア・グウィン(ゲイル・プリチャード、細身の女性)、リサ・パルフリー(モーリーン、新聞社にLGSMのことを密告)、ロドリー・メイリー(マーティン、シアンの旦那)、レジ・ブレナーハセット(クリス・オーヴァートン、金髪のイケメンゲイ)、ジョシュア・ヒル(レイ・アラー、クリスといつも一緒にいるゲイ)、ジェシー・ケイヴ(ゾーイ、レズビアンカップルの一人、眼鏡)、カリーナ・フェルナンデス(ステラ、ゾーイのパートナー、黒い編んでいる髪)、リズ・ホワイト(マーガレット・ドノヴァン、ダイの妻)、カイル・リース(カール、ビールをマークにおごり、後にジョナサンにダンスを習う)、ジャック・バッグス(ゲイリー、カールと争う)、ソフィー・エバンス(デビー、カールとゲイリーが踊りたい相手)、ラッセル・トーヴィー(ティム、AIDSに感染している様子のマークの友人)
編集: メラニー・オリヴァー
製作会社: BBCフィルムズ、キャルミティ・フィルムズ
配給: パテ(英)、セテラ・インターナショナル(日)
公開: 2014年5月23日(カンヌ国際映画祭、クィア・パルム受賞)、2014年9月6日(トロント国際映画祭)、2014年9月12日(英)、2015年4月4日(日)
上映時間: 120分
興行収入: $7,523,634
 
@DVD