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日頃より愛用させていただいているCinemaScapeで著しく高い評価を受けている本作。自分が全く知らない時代である昭和10年公開の作品だけあって、出演陣も全く知らない方ばかり。考えてみれば戦前の邦画なんて、黒澤の『姿三四郎』ぐらいしか見たことがない。

 
映像は流石に劣化しており、細かい縦線が終始何本も入っている。時代物で、使われる言葉に馴染みが少ないこともあるが、音声も一部聞き取りずらい箇所がある。

しかしそんなハンデをありながらも、作品としての骨組みがしっかりしているため、時代を超えて観客をグッと引き込む力を持っている。

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まず驚かされたのが、丹下左膳(大河内伝次郎)の殺陣の華麗さ。
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戦後フィルムが紛失していたが、事後に発見された殺陣のシーン。左膳の動きが尋常じゃない。

 
矢場(こういう場所が存在していことをこの映画を通じて初めて知った)の女将(喜代三)が纏う雰囲気も独特で、惹き込まれる。左膳と女将の掛け合いにはコメディ要素が強いが、人情に裏打ちされた安心感、安定感があるうえ、何よりも粋なのだ。
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三味線を引く女将。演じる喜代三は歌手なんだとか。

ストーリーもシンプルなようでいて、いろいろと絡んでいて飽きさせないし、三味線あり、矢場あり、殺陣ありと好奇心も満たしてくれる。
不知火道場に婿入りした殿様の弟である柳生源三郎(沢村国太郎)も、遊び好き、女好きでめちゃくちではあるが、そんな力の抜けたキャラクターがいることでバランスもとれている。

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矢場の娘(深水藤子)と、自らを大店の店主と偽り矢場で羽を伸ばしている安吉の父(清川荘司)。彼は殺されてしまうものの、そのキャラクター設定からか悲劇感が少ない。

 
映像技術が低い時代の作品であろうと、脚本・演出が練られており、カット割等の撮影の基礎がしっかりしていれば、時代が経てど面白いものは面白いんだなということが、素直に納得できる作品だった。

監督: 山中貞雄
脚本: 三村伸太郎
原作: 林不忘
撮影: 安本淳
美術: 島康平
音楽: 西梧郎
出演: 大河内伝次郎(丹下左膳) / 喜代三(お藤) / 沢村国太郎(柳生源三郎) / 宗春太郎(安吉) / 花井蘭子(萩乃、源三郎の妻) / 深水藤子(お久、矢場の娘) / 山本礼三郎(與吉) / 高勢実乗(茂十、屑屋) / 鳥羽陽之助(当八、屑屋) / 清川荘司(七兵衛、安吉の父) / 鬼頭善一郎(高大之進) / 磯川勝彦(峰丹波) / 坂東勝太郎(柳生対馬守、源三郎の兄) / 今成平九郎(鬼の健太、七兵衛に難癖をつける男) / 高松文麿(おしゃかの文吉、七兵衛に難癖をつける男)
製作: 日活京都撮影所
配給: 日活
公開: 1935年6月15日
上映時間: 92分
 
【世間の評価】 ※2016.9.25時点
CinemaScape: 4.6/5.0 (136人)  
Yahoo! 映画: 4.50/5.00 (50人)
IMDb: 8.0/10.0 (534人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (-人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.3/5.0 (12人)
 
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