slumdogmillionaire

映画の構成がまずなんといっても素晴らしい。

主人公ジャマールが警察に留置され拷問されながら、クイズシーンを振り返り、それが答えられた過去の背景を振り返る。

その、子ども時代を振り返るところで、以前観たブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』を思い出した。
あれほど悲惨ではないが、それに近い暮らし。

スラム中のスラム。まだまだ綺麗に描かれている部分はあるだろうが、それでもその苛酷な生活環境はいやでも伝わってくる。
大人ではなく、子供の視点で描かれているから、まだ救いがあるのだろう。

以下、ネタバレあり。

 
もともとスラム育ちなうえ、この家族はイスラム教徒のようで、母親は異教徒に殺される。貧困に加えて、宗教の対立もあることがサラっと描かれているが、過剰じゃないところに好感が持てる。
それからは兄弟二人で、生きるために何でもする。

スター(アミターブ・バッチャンというインド版クイズ・ミリオネアの実際の初代司会者)からサインをもらいたいのに、兄にトイレに閉じ込められ肥溜めに飛び込んで脱出したり、母の死後はゴミ捨て山で暮らしていたりと、目を離せないシーンが続く。

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その子どもたちを手なづけて組織化し、物乞いをさせて稼ぐ大人たち。
さらに稼げるように、失明させたり、赤ん坊を抱かせたり。

命からがらそいつらから逃げ出し、兄弟二人はたまたまタージマハルへ。
そこでは、世界中から訪れる観光客の靴や財布を盗んだり、ガイドや写真撮影でお金を稼いだり。

悲惨な環境のなかで逞しく生きて行く兄弟。一歩間違えばいつ死んでもおかしくない暮らし。
この生活の描写からは目が離せない。
『シティ・オブ・ゴッド』でもそうだったが、こういった生活には、自分の子ども時代とはレベルは全く違うものの、何か人間の根幹の部分で親近感が湧くのかもしれない。

クイズ自体の緊張感もあるにはあるが、彼が今まで過ごしてきた現実のほうがはるかにドラマチックで、クイズに息を飲む感じではない。

ヒロイン(ラティカ)との恋も強すぎない程度に華を添えている。
最後に軽いキスシーンぐらいしかないのは、インドのお国柄ゆえだろうか。

latika
劇中で何度も出て来るこのラティカを上から捉えた映像。
このラティカは確かに美しいが、他のシーンでは魅力を押しつけない控えめな撮り方をしている印象。
刃物による左頬の傷もがっつり残っているし。

エンターテインメントの王道らしく、見事なハッピーエンド。
そして、ハッピーエンドをだらだら長引かせず、あっという間に幕が降りる。
無駄の少ない編集にも好感が持てた。
兄貴(サリーム)も、主人公にとっては少なからず邪魔な存在ではあったが、最後の最後で大きな役割を果たす。このこともハッピーエンド感を強くさせている。

エンディングシーンで、劇中とはほぼ関係なく大人数でのインドらしいダンスが始まるのには虚をつかれた。
敢えて狙っているのか、それともお決まりなのか。

パワーが違うな、インドは。
それを痛感させられる映画でもあった。

slumdogcrorepati
なお、これがインド版のチラシデザイン。
こっちのほうが好み。
「Crorepati」とはまあ「Millionaire」のような意味だが
ヒンディ語でTen million rupeesを超すお金持つ金持ちを表わす。
わざわざ「Millionaire」から変えるぐらい身近な表現なのだろう。

製作総指揮:テッサ・ロス / ポール・スミス
製作:クリスチャン・コルソン
監督:ダニー・ボイル
脚本:サイモン・ボーフォイ
原作:ヴィカス・スワラップ
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
美術:マーク・ディグビー
音楽:A・R・ラフマーン
衣装:スティラト・アン・ラーラーブ
特撮:アダム・ガスコイン
出演:デヴ・パテル / マドゥール・ミタル / フリーダ・ピント / アニル・カプール / イルファン・カーン / サウラーブ・シュクラ / ラージ・ズツィ / マネシュ・マンジレカル / ヒマンシュ・チャギ

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