solomon

中学校での学校裁判。おもしろい舞台設定だ。
サスペンス色もあり、ハラハラさせられる。

登場人物たちのキャラクターも多岐にわたっており、楽しませてくれる。

まず、先生役。
校長役を演じる、安定感たっぷりの小日向文世。
声がでかく、いかにも体育教師っぽい松重豊。
対照的に声の小さい黒木華。
木下ほうかと安藤玉恵の、狭い教師ワールドの中でしか生き抜けなさそうな嫌な感じの出し方も見事。

先生以外の大人たちも粒揃い。
佐々木蔵之介と夏川結衣の夫婦。
ドランクドラゴン塚地と池谷のぶえの夫婦。
嫌味度マックス永作博美。
“クソババア”の愛称を持つ警察官の田畑智子。
証人としても登場する小さな電気屋を営む爺さんの津川雅彦。
やりたいほうだいのテレビ局の男、田中壮太郎。
黒木華の隣人にして、精神を病んでいる市川実和子。

こうして並べても、キャストの豪華さが際立っている。

一方、重要な役目を果たす生徒役は、基本的に演技経験がないフレッシュな若者たち。しかし、彼らの演技と存在感も悪くないのだ。

検事役にして主役、凜とした眼差しに特徴のある藤野涼子。
弁護人をつとめる板垣瑞生は、目が大きい上に目力もある。
被告人のチンピラ中学生らしい清水尋也。
告発文を書いたニキビ娘、石井杏奈。
おでぶちゃん松子を演じる富田望生。
難しい役柄、判事を演じる西村成忠。
そして、事件の中心にいる亡くなった柏木卓也を演じる望月歩。

登場人物が多すぎる嫌いはあるが、それでも各個性を楽しめるだけのメリハリがあり、楽しむ時間も用意されている。

「ソロモンの偽証」のあらすじ

(前篇)バブル経済に日本が湧く1990年。前日に大雪が降ったクリスマスの朝、中学2年の藤野涼子は校庭で級友の柏木(望月歩)の遺体を発見する。警察は自殺と断定するが、後日、学校関係者のもとに、柏木の死は自殺ではなく、大出俊次をリーダーとする不良グループが屋上から突き落とした殺人だと訴える匿名の告発状が届く。担当の佐々木刑事は校長と相談しカウンセリングと称し生徒と面談し告発者をさぐろうとする。一方、この出来事はマスコミにも伝わり、ワイドショーを賑わすことに。教師も生徒も親たちもパニック状態に陥るなか、また別の級友が命を落とす。大人たちには任せておけないと、涼子は自ら真実を暴くべく動き出すが…。

(後篇)1991年、中学3年になった藤野涼子は級友の柏木と松子の死の真相を探るため、教師や父兄の反対を押し切り、仲間と校内裁判を開くことを決意する。匿名の告発状により殺人の嫌疑をかけられた大出の無罪を証明する弁護人には、死んだ柏木の友人神原があたるが、大出は出廷を拒否。一方、検事を引き受けた涼子は、大出からイジメを受けていて松子の死後沈黙を続ける樹理に証人を依頼するが、樹理の母親は娘を涼子に会わせようとしない。そんななか開廷された裁判は、誰も想像していなかった展開をみせ、新たな事実が判明するのだった。

問題は後半のストーリーだ。
なるほど、前篇の事件篇は評価が高く、後篇の裁判篇は低いわけだと、多くの人が思う展開。

文字通り大作ではあったが、広げ過ぎたのがうまく巻き取れず、かつ、ラストの収束のさせ方に納得がいかず。
時間もお金もかけているだろうし、前篇が悪くないだけに勿体ない作品だ。

個人的評価としては、前篇3.25、後篇3.00、全体で3.00。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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後半の前半ぐらいまではかなりよかった。

主人公の藤野涼子が線路を眺めているシーンなど、情景が強く印象に残る。

微妙になったのは、大出が犯人じゃないことがほぼ確定し、弁護人の神原が中心になってから。
冷静さをまとっている彼が、なぜ無茶をいう柏木に動かされたのか。
柏木の得体の知れない迫力に最初は押されて観ていたが、時間が経つにつれてただの子どもの屁理屈な遠吠えにしか聞こえなくなり、現実味が感じられなくなった。

そして、この裁判で自分を裁いてほしいという神原の子どもっぽい欲望がさらけ出され、さらにトーンダウン。
途端に、いわゆる普通の学校裁判のような教育的、白々しさが漂い出した。

 
役者それぞれは悪くなかっただけに本当に残念。
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藤野涼子の射るような視線は非常に特徴的。これは演出なのか、彼女がもともと持っているものなのか。
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目力の強い弁護人、神原和彦(板垣瑞生)。
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被告人大出役の清水尋也。悪そうな奴感がたっぷり出ていて、堂に入っていた。
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亡くなった柏木卓也(望月歩)。口調、表情が強烈。人の恐怖感や嫌悪感といった、ドロドロとした感情を引き出す名手と言えよう。
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強烈な負のオーラを放つ三宅樹理(石井杏奈)。アイドルだとは思えない。今後が楽しみ。
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母親役の永作も強烈な役だった。こういう役柄うまいなあ。
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愛すべき松子ファミリー。
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判事席の後ろからのショット。判事が入廷し、挨拶し、号令で着席するリズムの良さ。
判事役の大役をこなした井上康夫氏は、本作が演技初挑戦とのこと。見事だった。
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リップヴァンウィンクルの花嫁』に続き(実際の撮影の順序はこちらが先だろう)気弱な先生役の黒木華。そろそろ違う役が見たい。
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個人的には、検事が元校長(小日向文世)を糾弾した後に、元校長を讃えたこのシーンがピークだった。ここは涙出た。

テレビ局の男(田中壮太郎)は後半出番なし。もうちょっとかき乱してほしかった。
市川実和子演じる隣人の常軌を逸したクレイジーさはなんだったのか。手紙をやぶってテレビ局に送るって、もうちょっと彼女のキャラクター説明がないと折り合わない印象。

ところで、はたして、タイトルに”宮部みゆき”っているのだろうか?
宮部みゆき作品自体は大好きだが、その名前で人を呼ぼうという製作側の魂胆が見えて興醒め。

製作総指揮: 大角正
製作: 矢島孝、秋田周平
監督: 成島出
脚本: 真辺克彦
原作: 宮部みゆき
撮影: 藤澤順一
美術: 西村貴志
音楽: 安川午朗
主題歌: U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」
衣装: 宮本茉莉
出演: 藤野涼子(藤野涼子、検事)、板垣瑞生(神原和彦、弁護人)、石井杏奈(三宅樹理、告発者)、清水尋也(大出俊次、被告人)、望月歩(柏木卓也)、富田望生(浅井松子)、前田航基(野田健一、涼子とともに柏木の死体を発見、弁護側助手)、西村成忠(井上康夫、判事)、西畑澪花(倉田まり子、涼子友人、検察側助手)、若林時英(向坂行夫、検察側助手)、加藤幹夫(橋田祐太郎、大出のとりまき)、石川新太(井口充、大出のとりまき)、佐々木蔵之介(藤野剛、涼子の父、刑事)、夏川結衣(藤野邦子、涼子の母)、永作博美(三宅未来、樹理の母)、黒木華(森内恵美子、涼子らの担任)、田畑智子(佐々木礼子、刑事)、池谷のぶえ(浅井敏江、松子の母)、塚地武雅(浅井洋平、松子の父)、田中壮太郎(茂木悦男、TV番組「ニュースアドベンチャー」記者)、市川実和子(垣内美奈絵、偏執的な隣人)、江口のりこ(大出佐知子、大出の母)、森口瑤子(神原歩美、神原の継母)、筒井巧(神原悟、神原の継父)、安藤玉恵(高木学年主任)、木下ほうか(楠山教諭)、井上肇(岡野校長代理)、高川裕也(大出勝、大出の父)、中西美帆(尾崎養護教諭)、宮川一朗太(柏木則之、柏木の父)、嶋田久作(河野良介、垣内美奈絵の学校訪問時の付き添い)、大河内浩(放火犯の代理人の今井努弁護士)、津川雅彦(小林修造、電気店店主)、余貴美子(上野素子、現校長)、松重豊(北尾教諭、バスケ部顧問)、小日向文世(津崎正男、事件当時の校長)、尾野真千子(中原涼子、現在の涼子)
編集: 三條知生
制作会社: 松竹撮影所
製作会社: 「ソロモンの偽証」製作委員会
配給: 松竹
公開: 2015年3月7日(前篇)、2015年4月11日(後篇)
上映時間: 121分(前篇)、146分(後篇)
興行収入: 7.28億円(前篇)、5.78億円(後篇)
キャッチコピー: 嘘つきは、大人のはじまり。
 
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