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初タルコフスキー。

なんとなくこの監督には難しいイメージを持っていたし、70年代という複雑な時代の話だし、しかもソ連制作と来ている。

それに加えて2時間40分の長い尺、ということで観るハードルはかなり高かったが、好奇心が勝りようやく観ることができた。

 
いざ見てみて、わかりやすい話ではないという点は想像通りではあった。

当時のソ連で自由に作りたい映画が作れるわけがなく、制約が多いことを念頭に置かねばならない。

結果、わかりやすい言葉で、わかりやすくストーリーを進めてはくれず、抽象的、観念的な言葉が多く登場する。
展開もゆっくり。このため眠気に襲われることは避けられない。

「ストーカー」のあらすじ

ある地域に、謎に包まれた空間が出現した。「ゾーン」と呼ばれ、立入禁止になったこの場所には、人の心の中の望みを叶えてくれる「部屋」があると噂され、厳重な警備をかいくぐって希望者を「ゾーン」に案内する「ストーカー(密猟者)」と呼ばれる人々がいた。ある日、ストーカーは作家と教授を連れ、「ゾーン」の「部屋」を目指す。「部屋」は、いったい彼らにとって、いかなるものであったのか…

現在の日本で使われる”ストーカー”とは違う意味合い。

映像は、考えて考えて考えたうえで作られたであろうことが伺える。
美しく、思わせぶり。

三人が「部屋」を目指す過程は、物理的な冒険でありつつ、精神的な模索でもある。
ストーカーが言うルールに従って進まねばならない三人。ナットに包帯を巻きつけたものを進む道に投げ、それに従って進むのだが、これにどんな意味があるのかは明かされない。
ルートも、回り道をしなくてはならないが、本当に回り道が必要なのかもよくわからない。
「肉挽き機」や「乾燥室」のようにおどろおどろしい名前がつけられているエリアも、本当にそんな名前なのかがわからない。
想像力がたくましい子どものやりそうな事ともいえる。

世には数多くの”水”の使い方が上手い映画があるが、本作もその一つ。
登場人物たちは結構濡れるし、汚れる。にもかかわらず、大して気にしたそぶりを見せない。
観ているこちらのほうが気になってしまう。
この表現の仕方は見事で、観終っても強く印象に残っている。

「部屋」にたどりつき、三人に訪れる変化、そして彼らが出す結論のようなもの。
これには納得できるものがあった。

作品全体的に謎が多いが、あまり考える気を起こさせない話でもある。
淀んだ空気感に支配され、考えるスイッチを切られるといったらいいだろうか。
自分も、濡れることなど考えずに、そこかしこに寝転がってしまいそうな、そんな倦怠感に包まれる。

それでも全体としてみると、芯の部分でこの映画に共感はできなかった。
それは単に、自分が観念的なストーリーが苦手だというのもあるだろう。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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映像面で、興味深い点はいくつもあるが、その一つが、自宅や街中では映像は白黒セピアだが、ゾーンの中はカラーになるという点。
しかし、ゾーンの最中の映像でも、ストーカーの内面の映像はセピア色になる。
再び街に戻ってからも、バーや家の中はセピア色だが、子どもを背負って三人で歩くところ、ラスト子どもが本を読んでいるところはカラーなのだ。
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街にある、待ち合わせ場所でもあるバー。セピア色の映像もあいまって哀愁が漂う。

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冒頭、ジープで警備兵らを突破するシーンは冒険感があり、ワクワクする。アクション多めなのが前半だけなのは残念ではあった。

上でも書いたとおり、全編通して水分多め。彼らは普通の格好でたいした躊躇もなくずぶずぶ入って行く。疲れたら平気そうにその辺に腰を下ろす。
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ストーカーが、小川のちょっとした中瀬のようなところに横たわり、黒い犬がウロウロしている象徴的なシーン。なぜ彼らはこんなところに横たわるのか。
犬に対して、3人はまったく注意を払わない。
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水が滝のように流れ落ちる「乾燥室」という名を持つエリアの近くで、教授と離れたことを知る作家とストーカー。ストーカーの表情、額にはりついた髪の毛や草の感じが、なんともいえない雰囲気を出している。
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「肉挽き機」と呼ばれるトンネル。陰影が見事。
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砂塵が積もって(?)砂丘のようになっているエリア。美しくはある。それは認めよう。
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大雨が降る様を三人が眺める、印象的なシーン。ここもまた美しい。

水や音、陰影は映画にとって欠かせない小道具だと思うが、この映画はそれを存分に活用している。

ストーカーは「ゾーン」への案内を闇の仕事としつつ、生きがいを感じている。ゾーンでは自分が強い。存在意義がある。
しかし、最終的に教授も作家も部屋には入らない。
ストーカーは生きがいを奪われたわけだ。家に戻り、もう誰も部屋に案内できないと嘆く。

ラスト、子どもが机の上のコップを眺めると、それらは動き出し、しまいには机から落下する。
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これまた一体何を示唆しているのか。。。

 
最後に別バージョンのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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上でも触れた有名なシーンを、イラスト風に加工したもの。

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インパクトが強いデザイン。これは本当に使われたのか、誰かがデザインしただけなのかは不明。

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日本版。情報多い。

原題: СТАЛКЕР
英題: STALKER
監督: アンドレイ・タルコフスキー
脚本: アルカージー・ストルガツキー、ボリス・ストルガツキー
原作: アルカージー・ストルガツキー、ボリス・ストルガツキー
撮影: アレクサンドル・クニャジンスキー
美術: アンドレイ・タルコフスキー
音楽: エドゥアルド・アルテミエフ
出演: アレクサンドル・カイダノフスキー(ストーカー)、アリーサ・フレインドリフ(ストーカーの妻)、アナトーリ・ソロニーツィン(作家)、ニコライ・グリニコ(教授)、ナターシャ・アブラーモワ(ストーカーの娘、猿と呼ばれる)
編集: リュドミラ・フェイギノヴァ
公開: 1979年8月(ソ連)、1981年10月31日(日)
上映時間: 164分
 
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