80年代のロス界隈の、街の空気感がいやってほど感じられる。

薬やギャングが蔓延り、警察も取り締まりに追われ、自然と黒人の若者への態度も荒々しくなる。そのあおりを受ける彼ら。
そこからの反動で、禁止用語乱発の音楽で日々のうっ憤をぶちまけ、共感を呼び、全米で知られる存在となる。

「ストレイト・アウタ・コンプトン」のあらすじ

1986年、全米でも屈指の治安の悪い地域、カリフォルニア州コンプトン。ドラッグの売人として生活するエリックことイージー・Eは、警察の手入れに遭遇しいよいよこの商売に嫌気がさしていた。そんな折、クラブDJのドクター・ドレーと知り合い意気投合し、他グループにいたリリックメイカー”毒舌詩人”アイス・キューブらも引き入れ、ストリートラップ・グループ、N.W.A.を結成する。暴力的なほどにストレートな歌詞をハードコアなビートに乗せ、日常に感じるフラストレーションや怒りを吐き出す彼らのラップはギャングスタ・ラップと呼ばれるようになり、ファースト・アルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』は累計300万枚を超える大ヒットとなる。N.W.A.の存在が社会現象にまでなる一方で、その攻撃的で過激なメッセージからFBIや警察の監視対象となり、世間からの非難にも晒されるようになった。さらに、ギャラの配分問題からエリックやプロデューサーのジェリーと対立したアイスキューブがグループを脱退、各メンバーの間にも亀裂が生じるようになる。

音楽自体も素晴らしいが、その根底にある、差別をはじめとする世間に対する不満から生まれるパワーが、音楽やライブという形に結晶していることが、何よりもこの映画に勢いを与えている。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

 
警察の黒人らを見下した態度には、唖然とさせられる。
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黒人がたむろしているだけで、すぐに悪さをしていると思われ、警察官に少しでも言い返したりすると、すぐに逮捕。
こういった屈辱を何度も味わっているのだろう。

こういった日常の経験から生まれたのが、ヒット曲「FUCK THE POLICE」。
しかし、FBIからは「FUCK THE POLICE」をライブで演奏するなと言われ、
デトロイトのライブでは、ステージ前に警察に同じことを言われるが、お構いなしに観客を煽り、この歌を演奏する。
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観客のボルテージは最高潮。しかし、警察はステージに迫り、逃げるN.W.Aの面々だが、外に出たところでとっつかまる。
何にせよ、この演奏シーンにはスカッとさせられる。

スターダムにのし上がる5人。
彼らが好んだものの1つがヌレヌレパーティ(Wet and Wild Party)。わかりやすく勢いを感じるネーミング。
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お屋敷的なところでプールの周りに大勢集めてワイワイとパーティをしているところでPVを撮るというのは、彼らの時代に作り出されたものなのだろうか。
(日本では確かm-floがこういった映像でPVを作っていたが、おそらくN.W.A時代へのオマージュなのだろう)

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マネージャーのジェリーを含め、皆が笑顔。こんな穏やかな時期は長くは続かない(のが映画ではある)。

ギャラの配分が不公平で、メンバー間に不審感や、マネージャーのジェリーに騙されているのではないかという猜疑心が生まれる。
ジェリーは別にエリックを騙そうとしていたわけではないのかもしれない。ただ、いずれにしてもやり方がうまくなかった。

結果、内紛でN.W.Aはバラバラになるが、キューブとドレーは大成功をおさめる。

主要キャストの3人は、それぞれ魅力的。
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アイス・キューブがプライオリティレコードの社長(?)にキレて、バットで部屋を目茶苦茶にするシーン。比較的おとなしそうなキャラクターだっただけに驚きがあった。

ドクター・ドレーもどちらかというと寡黙な部類。
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デビューする前のドクター・ドレー。ドジャースのキャップを被っているシーンは多いが、ここではユニフォームも着用。LA愛が感じられるし、オシャレ。
また、彼からは全編を通じて、音楽が本当に好きなんだなということがよく伝わってくる。

エリックも二人ほどじゃないにせよ、多くのファンに愛されていたということが、HIV陽性のニュースが流れた後の世間の反応でわかる。
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主要メンバー3人での3ショット。大きなアメ車をリーダー的立場であり、小柄なエリックが運転するのが、なんか面白い。もともとヤクの売人をしていた彼ではあるが、悪になりきれないあたりに観客も見ていて嫌気がささないし、最終的にアイス・キューブもドクター・ドレーもN.W.Aの再結成に意欲を見せてくれることにつながっているのではないだろうか。

しかし、N.W.Aの再結成までもうすぐで…というところでエリックがHIVに倒れる。

 
私はあまり詳しくないが、ファッション面でも見所は多そう。
また、何度か登場する、改造しててグイングイン跳ねたりする車には懐かしさを感じる。
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彼らが乗っている大型のアメ車といい、大型で派手なアメ車がかろうじて輝いていた最後の時代なのかもしれない。

全編を通してアドレナリンが出る要素満載の作品。
日本ではヒップホップファン以外にはあまり知られていない映画だと思う。もっと多くの人に観てほしい作品だ。

原題: Straight Outta Compton
製作総指揮: ウィリアム・パッカー、アダム・メリムズ、デヴィッド・エンゲル、ビル・ストラウス、トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ
製作: アイス・キューブ、トミカ・ウッズ・ライト、マット・アルバレス、F・ゲイリー・グレイ、スコット・バーンスタイン、Dr.ダレー
監督: F・ゲイリー・グレイ
脚本: ジョナサン・ハーマン、アンドレア・バーロフ
原案: S・レイ・サヴィッジ、アラン・ウェンカス、アンドレア・バーロフ
撮影: マシュー・リバティーク
美術: シェーン・バレンティーノ
音楽: ジョセフ・トラパニーズ
編集: ビリー・フォックス、マイケル・トロニック
出演:
ジェイソン・ミッチェル/イージー・E、エリック
オシェア・ジャクソンJr./アイス・キューブ
コーリー・ホーキンズ/ドクター・ドレー
オルディス・ホッジ/MC・レン
ニール・ブラウンJr./DJ・イェラ
ポール・ジアマッティ/ジェリー・ヘラー、マネージャー
テイト・エリントン/ブライアン・ターナー、プライオリティレコード社長
R・マルコス・テイラー/シュグ・ナイト、元Bobby Brownのボディガード、デスロウレコーズをドレーとともに立ち上げる
コーリー・レイノルズ/アロンゾ・ウイリアムズ、ドクター・ドレがDJをしていたクラブのオーナー
リサ・レニー・ピッツ/ヴァーナ・グリフィン、ドクター・ドレーの母
キース・スタンフィールド/スヌープ・ドッグ
キース・パワーズ/T、ドクター・ドレーの弟
クリーボン・マックレンドン/ジンクス、冒頭近く、ドクター・ドレーとビートを刻む、アイスキューブのN.W.A以前のグループのメンバー
アレクサンドラ・シップ/キンバリー・ウッドラフ、アイス・キューブの妻
マーロン・イエーツ・ジュニア/ザ・D.O.C、事故で喉が機能しなくなる
カーラ・パターソン/トミカ・ウッズ、Eの妻、契約書をチェック
アンジェラ・エレイン・ギブス/ドリス・ジャクソン、アイス・キューブの母
ブルース・ビーティー/ホージー・ジャクソン、アイス・キューブの父
シェルドン・A・スミス/ウォーレンG、デスロウレコーズのアーティスト
エレナ・グッド/ドレーの妻
 
製作会社: レジェンダリー・ピクチャーズ、ニュー・ライン・シネマ、キューブ・ヴィジョン、クルーシャル・フィルムズ、ブロークン・チェア・フリックズ
配給: ユニバーサル映画(米)、シンカ・パルコ(日)
公開: 2015年8月14日(米)、2015年12月19日(日)
上映時間: 147分
製作費: $28,000,000
興行収入: $201,600,000
キャッチコピー: 「言葉で世界をぶっ壊す。」
 
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