ピエロの赤い鼻

以前BS日テレでやっていたのを、久しぶりに見返して。

普段は教師でありながら、休日はピエロとして舞台に上がるジャック・プゼ(ジャック・ヴィユレ)。息子のルシアンは、自身の先生でもある父親がピエロをやっている姿が嫌で嫌でたまらない。

父の友人のアンドレ・デサンジ(アンドレ・デュソリエ)が、息子になぜ彼がピエロをやっているかの話をしていく。

第二次世界大戦中、ナチスが侵攻しているフランスの街が舞台。

レジスタンスに憧れて、線路のポイント切替所を爆破する二人。二人が気持ちを寄せるウェイトレスのルイーズ(イザベル・カンデリエ)とともに成功を祝して喜んでいると、ドイツ兵が家に押し込み、犯人を名乗り出させるための人質として囚われる。

以下、ネタバレあり。

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幸運なことにドイツ兵の中に元ピエロのベルント(バーナード・コリンズ)がいて、人質となった4人は彼から食糧をもらっただけでなく、精神的にも助けられる。
その四人が遂に処刑されるとなったとき、そのベルントは上司に歯向い射殺される。

タイミングを同じくして、ポイント切替所の爆破で死にそうだったフェリクス(ヴィクトール・ガリヴィエ)が、妻(シュザンヌ・フロン)を通じて、爆破した犯人は自分だとドイツ軍に告げ、二人の罪を被って射殺される。

結果、四人は解放される。
戦後、プゼとデサンジは昔自分らが捉えられていた穴があった場所を訪れ、プゼは自分もピエロになることを決意。
(監督のジャン・ベッケルは、先日観た『穴』を監督したジャック・ベッケルの息子。ここで使われている「穴」は父の作品のオマージュなのだ。)

そして、二人は、自分らの罪を被って射殺された未亡人のもとを訪れる。真実を告げようとするが、告げれずに一度は立ち去る。その後思い返して再訪、未亡人に「もう一度来てくれると信じていた」と言われる。夫は爆破がある前に逃げ去るデサンジの顔を見ていて、未亡人も誰が犯人かはわかっていたのだ。

二人ともが恋していたルイーズだが、デサンジは身を引き、プゼと結ばれる。

その一連の話を聞いた息子は涙を流し、デサンジとともに再び会場に戻って父のピエロショーを観て笑顔になり、エンディング。

この、未亡人に真実を告げるシーンからエンディングまでの数分間は、ひねりがあるわけではないが、静かな感動を誘う

プゼとデサンジの蛮勇により二人が死に、自分たちも九死に一生を得ているのだから、事件がない映画ではない。しかし、全体的な印象としてストーリー展開は非常に静かに感じられる。

主演のプゼを演じるジャック・ヴィユレは決してハンサムとはいえない顔立ちで、デサンジのほうが断然男前。行動力・決断力等を見てもデサンジのほうが旦那としては相応しく思える。それでもルイーズはプゼを選ぶ。
このくだりも静かに、さらっと描かれている。

ただ決して、プゼに魅力がないかというとむしろ逆で、彼がピエロを演じているからというのもあるが、男前ではない顔つきや雰囲気が、作品に「優しさ」を与えている。不思議な存在感を放つ役者だ。

落ち着いた作風の中、控えめな優しさに溢れ、静かな感動を誘う秀作。

strangegardens_jp
日本版のDVDジャケットデザインはこちら。
より、ドイツ兵のピエロ・ゾゾ(ベルント)にスポットを当てている。

フランス版のジャケットデザインでもそうだが、ドイツ兵のベルントは重要な役を演じているにもかかわらず、役者としては扱いが小さい。どうやら彼の本職自体がピエロ等のパフォーマーでバリバリの役者でないからかもしれないが、この日本版の扱いは嬉しかった。

なお、原題の「Effroyables jardins」は英題にもなっている「Strange Gardens」という意味。いつもは邦題のほうが微妙だが、本作については許せる邦題だろう。

<<追記>>
アメリカではヨーロッパでの公開から4年も経ってようやく小さい映画祭で上映されているとおり、あまり注目されなかった作品。お国柄が出て面白い。

原題: Effroyables jardins
英題: Strange Gardens
製作: ルイ・ベッケル
監督: ジャン・ベッケル
脚本: ジャン・ベッケル / ジャン・コスモ / ギヨーム・ローラン
原作: ミシェル・カン
撮影: ジャン・マリー・ドルージュ
美術: ブルーノ・マルジェリ / テレーズ・リポー
音楽: ズビグニエフ・プレイスネル
衣装: シルヴィ・ドゥ・スゴンザック
出演: ジャック・ヴィユレ(Jacques Pouzay) / アンドレ・デュソリエ(André Designy) / ティエリー・レルミット(Thierry Plaisance、保険屋) / ブノワ・マジメル(Emile Bailleul、ジャックの元生徒) / シュザンヌ・フロン(Marie Gerbier、未亡人) / イザベル・カンデリエ(Louise、ジャックの妻) / ニナ・パロマ・ポーリー(Françoise、ジャックの娘) / ダミアン・ジュイユロ(Lucien、ジャックの息子) / ヴィクトール・ガリヴィエ(Félix Gerbier) / バーナード・コリンズ(Bernd、ドイツ軍、ピエロ)
初公開: 2003/3/26(仏、スイス)、2004/10/9(日)、2007/3/27(米、VCU French Film Festival)
 
【世間の評価】 ※2016.3.22時点
CinemaScape: 3.5/5.0 (26人)  
Yahoo! 映画: 4.42/5.00 (95人)
IMDb: 7.0/10 (1,218人)
 
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