strangerthanparadise

5月の『ダウン・バイ・ロー』に続き、ジム・ジャームッシュを観るのは今年二作目。

世間的には、こちらが代表作だろう。

舞台は1980年代のアメリカ。
ニューヨーク、クリーブランド、フロリダ。

白黒映像なうえ、ウィリー(ジョン・ルーリー)&エディ(リチャード・エドソン)のファッションにもっと昔のテイストが入ってるし、車も60-70年代っぽいボロいアメ車に乗っていて、時代はもっと昔のように感じられる。

 
映像はジム・ジャームッシュらしく、特徴的。
とにかくシーンがどんどん進む。1シーン1シーンがあまり長くなく、大きな意味がなさそうなシーンも多い。しかし、短いなかにも間はしっかりととる。

シーンとシーンの合間には五秒ほど真っ暗な映像が入る。
その間も音は入っている。

この独特のストーリー進行のリズム感、スピード感が悪くない。

 
『ダウン・バイ・ロー』と同じくジョン・ルーリーが主役(ウィリー)。
オシャレで短気で、ダメ男で、落ち着く。
ハンガリー出身だということを実は引け目に思っていて、アメリカでは名前も変えてるところにも性格が出ているキャラクター。

ウィリーの従姉妹エヴァ(エスター・バリント)も、我が強くて、いい味を出している。
ハンガリーから出てきたばかりで、英語もペラペラではないのに、ウィリーの電話に勝手に出て、相手に対しゆっくり話すよう主張するなど、基本的に強気。

最初はやややぼったい気もしたが、だんだんアメリカに慣れてきた設定もあるのか、ウィリーとも打ち解けてきて、可愛く見えてくる。ただ、擦ったマッチをモーテルの床に捨てたりといった、育ちの悪さは随所に滲み出ている。

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ウィリーの家に到着した翌朝。ウィリーが起きるのは待つともなしに、ベッドで煙草を吸うエヴァ。パジャマ姿がダサ可愛い。

英語がネイティヴじゃない設定で、聞き取りやすいのも好印象。
彼女が “He is my man” とまで言う Jay Hawkins の “I Put a spell on you” は、どことなくボヘミアンな、東欧っぽさがあってこの作品にハマってる。

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ウィリーの部屋で、Jay Hawkinsを流しながらご機嫌のエヴァ。

 
ウィリーは、全編通して自分勝手ではあるが、エヴァへの好感度が上がっていくさまは、彼女が部屋を去ったあとの表情を捉えるシーンで、しっかりと現されている。

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ニューヨークに帰る前に、極寒のエリー湖を観に行く三人。
そこでも厚着はしない、もしくはもっていない、格好良いウィリーの姿が印象的。

 
ラスト、麻薬の組織から間違って大金を渡され、すぐに金をもったままヨーロッパに高飛びしようとするエヴァ。それを止めようと追いかけるウィリー。車でエディは待つが。飛行機は離陸。

エヴァとウィリーは二人してブダペストに行ってしまったかと思いきや、最後のシーンで、エヴァがフロリダのモーテルに一人戻ってくる。そこでエンディング。二人は会えずにウィリーが一人でブダペストに行ってしまったのだろうか…
と考えさせられるが、この映画にとってそんなことはどうでもいい話。

ハッピーでもアンハッピーでもなく、フラフラと流浪する三人のお話。
ロードムービーっちゃロードムービーだが、旅に行きたくなる話ではない

ただ、撮影が本当に素晴らしくて、どこを切り取っても絵になる

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特に会話もなく、テレビを観るウィリーとエヴァ。

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エディとウィリーがクリーブランドに向かう車中。ウィリーがダッシュボードに足を投げ出し、手には缶ビール。

こういった、特にストーリー展開に必要ではないが、かっこ良いシーンがめじろ押し。

内容がめっちゃ面白いわけではないが、何度か観てもいいよな、と思える映画。
ただ一つ言えるのは、この映画を観るとTV Dinnerは食べてみたくなるね、きっと。

 
<<追記>>
エディとウィリーが競馬新聞を見ながらどの馬を買おうかと話している会話の中で、「Tokyo Story」という馬を買おうというシーンがある。ん?と思ったが、やはりこれは小津安二郎へのオマージュだった。
観ている時は気づかなかったが、他の馬の名前も「Late Spring(晩春)」「Passing Fancy(出来ごころ)」と小津の作品の名前だった。

製作総指揮:オットー・グロッケンバーガー
製作:サラ・ドライバー
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:トム・ディチッロ
美術:マット・バックウォールド / ガイド・シエサ / サム・エドワーズ / トム・ジャームッシュ / ウナ・マックルーア / ルイス・タンクレディ / スティーブン・トートン
音楽:ジョン・ルーリー
出演:ジョン・ルーリー / エスター・バリント / リチャード・エドソン / セシリア・スターク / ダニー・ローゼン / トム・ディチッロ