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エドワード・ヤンの監督作を観るのはこれが初めて。
当時、日本では上映されていなかった作品を、監督の生誕70年、没後10年となる2017年に、4Kデジタルリストア版で上映されることになったもの。嬉しいことだ。

80年代の台湾の、街の、人々の息づかいが確かに伝わってくる作品。

全体的に静かめなトーンの作品。特に前半はやや眠気を誘うほど。

「台北ストーリー」のあらすじ

80年代半ば、経済成長のなか、刻々と変貌を遂げつつある台北。そこで暮らす幼なじみのカップル。男のアリョンは、少年時代には野球選手として将来を嘱望されていたが、今は昔ながらの面影を残す通り廸化街で家業の布地問屋を継いでいる。女のアジンは、急速に開発が進む台北の不動産ディベロッパーで働くキャリアウーマン。なんとなく付き合っている二人だが、アジンはマンションに引っ越し、二人で暮らそうと夢を膨らませている。ところが、アジンが勤めていた会社が突然買収され、解雇されたことから計画が挫折してしまう。アジンは、アリョンの義理の兄を頼ってアメリカに移住し新たな生活を築こうと提案するが、アリョンはあまり乗り気ではない。すきま風が吹き始める二人の間に、過去の出来事が重なり、そしてやがて思いもよらない結末が訪れる…。

電飾の広告やネオンサインの使い方、光の使い方、構図の切り取り方(特に屋内)、映像の色合い等々、細部にまでいろいろとこだわっていることが感じられる。

主人公2人も、強すぎず、弱すぎず、リアリティを持った人間像が浮かび上がってくる。

ストーリーもバランスが良い。
感情の浮き沈みもあり、人情的なところもあり、驚きもあり。

ただし、個人的にはもうちょっとメリハリの効いたストーリーであったほうが好みだったか…
いやぁ、この風情は決して嫌いではないんだが。

もう1つ、アリョンの性格が自分好みではないという点が、ちょっとマイナスに働いてしまったのかも。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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アジン(ツァイ・チン)は可愛らしい風貌。
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少年たちの住処(違法占拠?)に泊まった翌朝、寝起きのアジン。可愛らしい。(窓外にはNECの看板が見える。ここにも日本の影が!)

なお、電気がつかないビルに不法滞在しているからか、アジンのバースデーを祝うシーンでは、テーブルの上はローソクだらけだった。酔ってそんな状態だったら火事になりそうだが、なかなかおしゃれな映像だった。
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サングラスをかけると、ちょっとしたマフィアっぽさが出て、80年代という時代がにじむアジン。
時代を感じるといえば、若者らが「フットルース」でディスコで踊る姿には、自分はリアルタイムでは体験していないために、新鮮さと懐かしさを同時に感じた。

不良少年たちとアジンがバイクで疾走する台北の街。
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印象に残る光景。

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この少年と仲良くしていたことが、後の悲劇を生む。

アリョンのキャラクターは自分の好みではなかったが、興味深いものもあった。

人情味もあって、少年野球時代からの幼馴染を助けたり、アジンの父の借金の肩代わりをしたり。
一方で、短気で自分を抑えられなかったり。
アジンに内緒で昔の恋人(?)に会っていたり。
そんなに仕事がうまく行っていそうな雰囲気はないのに、ベンツに乗っているなどプライドは高そうだったり。
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電話が頻繁に登場する。ダイヤル式というのも含めて、時代だ。

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アリョンの少年野球時代からの友人で、現在はタクシーのドライバーをしているアキンの家で。
アリョンはどことなくかっこうつけている。
おそらく少年野球時代のトロフィーであろうものが見える。
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アリョンの愛車はベンツ。こういうところにも彼の暮らしぶりや性格の一端が伺える。
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ダーツに興じるが下手くそで、仲間にからかわれてケンカへと発展する。短気なアリョン。
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これは、おそらくアジンの実家だと思うが、古い台湾の内の雰囲気が伝わってきつつ、絵の切り取り方がうまく絵になる。

 
アリョンとアジンの関係性のうつろいも見どころの一つ。
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関係性が終わりかけている二人。それが静止画からでもよくわかるウマさ。
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アジンの家にて。壁にかける絵のバランスだったり、さらっとオシャレなお家。

ラスト近くでも、部屋の中にいながら、電気を点けたり、消したりする二人
2人の心情がよく現れている面白いシーンだ。

 
面白いのが、”日本”が彼らの生活に結構かかわっているということ。

例えば、アリョンの昔の恋人(?)の阿娟は、日本人と結婚している。
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アリョンがアジンに内緒で会っている同級生の阿娟。美人さん。小林という日本人と結婚しているが、その関係は破綻しているよう。

また、アリョンが日本に滞在した際に、録画してきたTV番組も、広島対阪急のプロ野球日本シリーズの試合だったりする(これは1984年だ! MLBの試合をTVで観ていたり、アリョンはとにかく野球が好きなんだな)。
そこに一緒に録画されていたTVCMでも石原裕次郎が映っていたり、アジンの妹(?)は原宿や渋谷に行きたがっていたり、銀座というカラオケパブが登場したり、と、あまりの日本との距離の近さに驚くほど。

そして、印象深く登場するフジフィルムの電飾広告。
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不良少年や妹らがおそらく不法で住んでいるビルの屋上。フジフィルムの看板の存在力の強さ。80年代の時代の象徴だ。
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夜のフジフィルムの電飾。Mの文字の半分が切れているのがリアルで良い。

 
ラスト、短気が災いして、刺されてしまうアリョン。
救急隊員たちはたいして急いでなさそう。ということは…

原題の「青梅竹馬」は、幼なじみのカップルという意味。
このタイトルのほうが切ないね。

蛇足だが、アジンの上司が何かと「ビールを飲もう」と声を掛けてくるのが、なんかツボだった。

原題: 青梅竹馬
英題: Taipei Story
製作総指揮: リン・ロンフォン
製作: ホウ・シャオシエン、リュー・シャンディアン
監督: エドワード・ヤン
脚本: ホウ・シャオシエン、エドワード・ヤン、チュー・ティエンウェン
撮影: ヤン・ウェイハン
音楽: ヨーヨー・マ
出演: ツァイ・チン(アジン)、ホウ・シャオシエン(アリョン)、ウー・ニエンジェン(アキン、アリョンの少年野球時代からの友人、現在はタクシードライバー、妻に逃げられる)、リン・シュウレイ(Ling、アジンの妹)、クー・スーユン(阿娟、アリョンがアジンに内緒で会っている女性)、クー・イチェン(シャオ・クー、アジンの上司、建築士)、ウー・ヘイナン(アジンの父)、メイ・ファン(アジンの母)、チェン・シューファン(Mrs. Mei)、ライ・ダーナン(少年野球のコーチ)、ヤン・リーイン(アキンの妻、ギャンブル中毒)
編集: ワン・チーヤン
配給: オリオフィルムズ
上演時間: 119分
 
ギンレイホールにて観賞