talentime

音楽が良いという噂を聞き、気になっていた映画。
ちょうど飯田橋のギンレイホールで上映していたので、迷わず観に行った。

舞台はマレーシア。そんな映画、今までお目にかかったことはない。
イスラム系や、発展途上国の映画に惹かれる自分としては、自ずと期待は高まる。

マレーシアが多民族国家ということは知識としては知っていたが、その様子、内情が本作で垣間見ることができる。
想像を超える多民族ぶりに驚かされた。
多民族国家であればどこでもあるように、民族間、宗教間の反発、対立、偏見も存在する。

登場人物たちはそのことでつらい思いをすることもあるが、マレーシア出身の女性監督ヤスミン・アフマドは厳しくも優しい視点で描いている。

「タレンタイム」のあらすじ

マレーシアのある高校で音楽コンクール“タレンタイム”の開催が決まった。イギリスとマレー系のハーフでピアノが得意なムスリムの女子生徒ムルーはオーディションに合格。彼女のレッスンの送迎をインド人でヒンドゥー教徒の同級生マヘシュが担当することになり、二人は恋に落ちる。二胡を演奏する中国系のカーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転校生ハフィズに成績トップの座を奪われ、わだかまりを感じている。マヘシュの叔父に起きる悲劇、ムルーとの交際に反対するマヘシュの母、末期の病を抱え闘病中のハフィズの母…。民族や宗教の違いによる葛藤も抱えながら、彼らはいよいよコンクール当日を迎える……。

問題も起こるし、人と人の感情がぶつかるところもある。
しかし、そこは東南アジアという土壌のやわらかさで包んでくれる。

タレンタイムに関わる子どもたちとその家族を中心に話は進むが、そこに民族・宗教が密接にかかわってくる様は、わたしにはやはり新鮮で、興味深かった。
演技面での稚拙さもゼロではないが、そんなものは些末だと思えるおおらかさを与えてくれる。

そんな映画だ。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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冒頭、学校の教室でテストが行われている。
その監督をしている先生。
彼が、別の先生に呼ばれるが、その用件はというと、”タレンタイム”が開かれることが決まったという内容だった。

タレンタイム(talentime)とは、マレーシア英語で学生の芸能コンテストのことを指すのだが、開催されるのはいいとして、それを試験中に知らせに来る先生たちの緩さ、そして彼らの仲の良さ。
ここでまず、グっとこの映画への親近感が増す。

開催を決めたのは恰幅の良い女性の校長先生。彼女のキャラクターもチャーミング。
主人公である若者たちがフィーチャーされるより前に、先生らが作品の空気感を整えてくれるというユニークさ。
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タレンタイムの開催を決め、オーディションにも余念がない校長先生。英語、マレー語をどちらも使いながら先生らに対して話す姿や、審査時の姿はコミカルかつチャーミングさも併せ持つ。

 
特にフィーチャーされているのは、イギリス系とマレー系の混血でムスリムの家庭に育つムルーと、インド人でヒンドゥー教の家庭に育ち、聴覚障害を持つマヘシュの恋愛。
そして、マレー系で成績優秀のハフィズと脳腫瘍で闘病中の母。

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終始優しいまなざしのマヘシュ。気が強く、正確がまっすぐなムルー。よくある高校生カップルのタイプの二人ではある。
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同じ部屋で寝てしまっても、このような状態のまま朝を迎える二人。初々しい。

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基本的に良い奴そのもののハフィズ。マヘシュへの接し方も自然。
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祈っている(?)ハフィズ。絵になる構図。
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脳腫瘍のお母さんとのやり取りは、自分自身の経験にも重ね合わせて見てしまい、涙腺が緩んだ。

なお、気になったのは、母の病室にあらわれる男性。あれは死神のような立ち位置の役柄なのだろうか。

 
家族内での距離の近さも印象的だった。
今の日本とは大きく異なる。昔は日本でもそうだったのかもしれないが。

ムルーの家は、親が混血、祖母が同居、中華系のお手伝いさんもいるということで、生活にいろいろな匂いが漂っている。
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画質悪いが、三姉妹でダンスを踊るシーン、可愛らしくて好きだなあ。
後ろのお父さんも茶目っ気があって良いキャラクターなんだ。
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同家族の食卓。お父さんが坊主頭だから歳がよくわからないが、実際は30代後半ぐらいなのだろうか。左がまさか彼のお母さん、つまり女の子らにとっての祖母だというのに驚いた。
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ムルーの母親と、お手伝いさん。お手伝いさんが中華系だということで、母親の友人が難色を示す別のシーンでも、民族・宗教間の融合の難しさを感じさせられる。
なお、ムルーの一家はそれなりに厳格なムスリムのようで、あるシーンではこのお母さんも白い独特の装束に身を包んでいた。

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連絡せずムルーの家に泊まってしまったことを母親から叱られるマヘシュ。宗教が異なることへの拒絶間を強く感じるシーン。
このマヘシュのお母さん、前半ではいかにもセリフっぽい喋り方をしており虚を突かれたが、だんだんそんなことは気にならなくなった。

それにしても、この2家族ともに共通するが、本当に、家族内で、メインの言語以外の言葉もあんなに使って会話するものなのだろうか。この点は不思議だった。

 
そして、タレンタイム本番。

ムルーは本番では演奏ができなくなりステージを降りてしまう。
マヘシュは母とムルーにはもう会わないと約束していたが、それを破りムルーを追いかけてなぐさめる。

母を亡くしたハフィズ。本番では、それまで彼をライバル視していた中華系のカーホウが二胡で伴奏してくれる。

なんとなくだが、ムルーはもう一度ステージに戻って、演奏しなおすのではないかと思っていたが、それはなく終了。

前半では、先生たちも代表者が演奏するという話だったが、それもいきなりなくなったり、ストーリー展開に粗は多少あった。

それでも、アジアの映画はやはり好きだということを再認識。
今後は、もっと生活に根差した部分に食い込んでいっていく作品も見てみたい。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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ベースの色が黒だとだいぶ印象が変わる。

原題: Talentime
製作総指揮: モハド・エフェンディ・ハーゾー
製作: アフマド・プード・オナ
監督: ヤスミン・アハマド
脚本: ヤスミン・アハマド
撮影: キョン・ロウ
美術: ウォン・ヴォン・レオン
音楽: ピート・テオ
出演: パメラ・チョン(ムルー、父はイギリス系とマレー系の混血、母はマレー系。ムスリムの家庭。マヘシュに恋する)、マヘシュ・ジュガル・キショール(マヘシュ、インド人ヒンドゥー教徒)、モハマド・シャフィー・ナスウィップ(ハフィズ、マレー人のムスリム、母が末期の脳腫瘍)、ハワード・ホン・カーホウ(カーホウ、中華系、ハフィズをライバル視)
キャッチコピー: 歌ってごらん 笑ってごらん すべてを越えて 心は届く
配給: ムヴィオラ
公開日: 2009年3月25日(香港国際映画祭)、2009年3月26日(マレーシア)、2009年10月17日(東京国際映画祭)、2017年3月25日(日)
 
飯田橋ギンレイホールにて観賞