tamako

80分足らずの短い作品。

山下敦弘監督の作品に接するのはこれが初めて(追記:と思ったら、むかーしに『リンダリンダリンダ』を観ていた)。
彼には、TV東京の『山田孝之のカンヌ映画祭』を観ていたおかげで親近感が湧いており、彼が撮った作品を観てみたかったのだ。

監督への興味を持つ以前に、タイトルにまず惹かれたというのもある。
DVDジャケットのデザイン(フォントもいい!)もあいまって、ゆるそうだが、期待できそうだと。

 
そして、観終って。
「ほぉほぉ、山下監督、あなたはこういう作品を作るのか」。

「もらとりあむタマ子」のあらすじ

秋。東京の大学を出たものの、就職せず、父親が一人で暮らす甲府の実家へ戻ってきたタマ子。家業のスポーツ用品店を手伝うでもなく、就職活動をするわけでもなく、三度の食事や洗濯も父親まかせ。ただ食べて、マンガやゲームに没頭し、惰眠をむさぼる日々。それでいて時折世間に毒突く口だけ番長ぶりに、父も呆れて説教するが、それには逆ギレ。同級生に会うでもなく、唯一付き合いがあるのは姉御風を吹かせられる近所の中学生だけ。そんな日々がひたすら続くが、やがてわずかな一歩をタマ子が踏み出す…

前田敦子の演技を見たのは初めてだが、自堕落な感じが無理なく出ており、自然に観ることができた。

私の知人に、役者・前田敦子を高く評価していた人がいたが、確かに私自身も今までは、元AKBのセンターというイメージをもっていたものの、役者としても光るものを持っているように感じた。
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冒頭近く。この品のない食べ方で、タマ子のキャラクターが知れる大事なシーン。お見事。

父親役を演じる康すおん氏。
初見の役者さんだが、いらっとさせる感じの演技といい、うまい。
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前半は、演出によりマイナスな印象のほうが強い。
店で働いているときの恰好もダサいし、食べ方一つとっても、いかにも冴えないおっちゃんという雰囲気。
しかし、料理がうまかったり、娘への愛情が感じられたり、しかも富田靖子演じる曜子からも悪くない印象を持たれていたりと、後半ぐんぐん印象が良くなってくる。この加減がうまい。
観終わると、このキャラクターおよび、この役者さんが好きになってしまう。

どうやらこの方は山下監督作品の常連の役者さんのようだ。
他の作品でも見てみたい。

基本的にこの話は、親子の話だ。
他の登場人物も出てくるが、それはあくまで添え物。

設定で面白いと思ったのは、タマ子がどんなにダラダラしていても、許せる一線がちゃんと引いてあるところ。
ご飯を食べるときに携帯に集中していたり、テレビで政治からみのニュースを見ては日本はダメだと自分を棚に上げて偉そうに嘆いていたりするが、ご飯を食べるときはテレビを消すし、「いただきます」とちゃんと言う。

親子の関係性も面白い。

父親はタマ子へ愛情があり、タマ子は父親を嫌っているかというと、一見そう思える態度もとるが、実はそうでもない。
父親が再婚するかもとなると慌てたりと、父が特別な存在ではあるのだ。
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灯油ストーブの灯油が切れ、ジャンケンで灯油を補充してくる人を決めるシーン。
節々に仲の良さは現れている。

タマ子のキャラクター設定も絶妙。
下着を平気で父に洗わせていたり、一方で、父親の下着を干すときの汚いものに触れる感の強さは、お決まりの反応ではあったが。
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写真館のウィンドウに、ブリブリのポーズで撮られた写真が飾られているタマ子。
よくぞ、これを許したよな。
ここにも、深く物事を考えないタマ子のキャラクターが現れているのだろう。

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いけてそうな同級生が甲府に帰ってきたところに駅の近くで遭遇。次に彼女を見かけたとき、駅のホームで、その子は都会に帰っていくような様子だが、彼女はなぜかひとりで泣いている…

そんなに多くはないが、こういったちょっとした余韻をのこす破片があるのも悪くはなかった。
多すぎるとイラっとするだろうが。

あっさりとしていて、もうちょっと長くしても良かったのではないかという気もしたが、この短さでバシッとまとめた勇気は評価する。

製作: 齋見泰正、根岸洋之
監督: 山下敦弘
脚本: 向井康介
撮影: 芦沢明子、池内義浩
美術: 安宅紀史
出演: 前田敦子(坂井タマ子)、康すおん(坂井善次、父)、伊藤清矢(仁、中学生、写真屋の息子)、鈴木慶一(坂井啓介、善次の兄) 、中村久美(坂井よし子、啓介の嫁)、富田靖子(曜子、アクセサリー教室先生)、奈良木未羽(仁のガールフレンド)、萩原利映、吉田亮(仁の父親)、賀川舞亜、細江祐子、藤村聖子(タマ子の同級生)、伊藤沙莉、林和義(善次の知人、坊さん、スポーツ店でパットゴルフに興じる)、山内健司、服部竜三郎
主題歌: 星野源「季節」
編集: 佐藤崇
製作会社: 『もらとりあむタマ子』製作委員会
配給: ビターズ・エンド
公開: 2013年11月23日(日)
上映時間: 78分
キャッチコピー: 坂井タマ子 23才 大卒 ただ今、実家に帰省(寄生)中
 
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