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事前にうっすらと内容を知っていただけに、レンタルしてから観るまでに、少しの勇気が必要だった。

 
1965年、インドネシアで軍部が政権をとり、共産主義者や華僑を大量に粛清(虐殺)した話がベースとなっている。

てっきり、製作側から、虐殺に手を染めた「プレマン(やくざ)」らに、「当時を振り返ってみませんか、それをドキュメンタリーとして撮りますので」という話がいったのかと思っていたら、実際は、プレマンらを主演に当時の出来事を元にアクション大作を撮るという本筋に付随した、メイキング映像的位置付けでこの作品は撮られていた。

つまり、出演しているプレマンらは、ドキュメンタリー作品の対象というよりは、アクションスター的気分で登場しているのだ。 その神経を疑う。

昭和でいうと40年。いまから50年前(半世紀前か… そう考えると結構時間が経った気もする)のインドネシアではそんなことがまかり通っていた。
何よりも驚かされるのは、虐殺に手を染めた人々が、現在たいして罪の意識に囚われていないこと。
これは人間全体に共通する逞しさ・おぞましさなのか。それとも彼ら独特のものなのか。そもそも、この映画に出演している時点で、罪の意識が低い人が選抜されていることはわかるのだが。

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劇中劇ではなく、普通に現在の様子として、華僑の店主にヘルマン・コトが金をせびりに行く様子が撮影されている。たかりが横行していること以上に、それを撮影させても何とも思っていないヘルマンらの意識から、この国が置かれている状況がよく理解できる。

知り合いが数年間インドネシアに住んでいたが、賄賂が横行しているという話はよく耳にしていた。この映像を見て、自分の想像よりも遥かに上を行っていることを思い知った。選挙も同じなのだろう。

「議員になればいろんな店主にいちゃもんをつけて、金をとれる」と嬉々として話すヘルマン。すごい国だ。

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巨大な魚の作り物の横で、ビビッドなピンクやゴールドな衣装で踊る数人のダンサー。その横にはピンクの衣装を身につけて、椅子に座る男。バックは湖と山。なかなか神秘的、幻想的な絵面。この場面がチラシやパッケージデザインにも使われているが、この印象が強いことで、ただの虐殺者を撮った殺伐としたドキュメンタリーではなく、神秘的な映像作品へと変質させられている。

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針金を使って処刑するところを無邪気に説明するアンワル。この処刑される役をしてるインドネシア人が、実は継父が華僑で、当時プレマンらに殺害されていた話をするシーンは衝撃的。祖父とまだ子どもだった自分で父の遺骸を埋めるための墓を掘ったが、誰も手伝ってもくれなかった。山羊が死んだ時のように埋めたと語る男。そしてそんな彼を、引き続き撮影にも使う彼らの神経。

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ふんぞりかえってインタビューに答えるアンワルとヘルマン。彼らがこんな態度をとれるのも(恐怖政治の結果かもしれないが)支持者がいて、彼らを天狗にしてしまったからだ。

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孫たちに自分が殺されるシーンを見せるアンワル。スター気取りだということがよくわかる。

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迫力のある農村での焼き討ちシーン。女や子どもらは撮影だとわかっていてもかなり衝撃を受けているように見えた。当時の蛮行を悪びれもせず自慢気に話すヘルマンに人間性の欠片は残っているのだろうか。

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左がアディ・ズルカドリ。彼はこの三人の中では、映画に出ることの悪影響を理解しているように見えた。それでも、自分の正当化の話にはかなり力がこもっていたが。

 
主演のアンワルは自分のしたことでトラウマにも囚われてもいるし、一部悔やんでいる素ぶりも見せる。しかし、一般的な感覚からすると、そんなことは当たり前すぎるほど当たり前で、彼を赦そうなどとは到底思えない。とはいえ、彼がめちゃくちゃ悔やんでいて精神がおかしくなっていたら許せるのかというとそういう話でもないのだろう。

そんなわかりやすいものじゃない。それをドキュメンタリー映画は見せてくれる。
だから、えも言われぬ気持ちになってしまう。

劇中劇のようなアクションシーンの撮影シーンにまどろっこしさを感じる場面も多く評価点数は下がったが、それでも観る価値は確かにあるドキュメンタリー映画だった。

最後に、日本語バージョンのチラシデザインを。
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アンワルがクール過ぎやしないかい……

 
<<追記>>
観終って数日経ってから、ふいに、アンワルが入れ歯(もしくは差し歯)をつける仕草が脳裏に浮かんだ。歯を装着した後の、口の動き、にんまりとした表情。あまり気持ちの良い記憶はではない。

製作総指揮: アンドレ・シンガー / ヨラム・テン・ブリンク / エロール・モリス / ヴェルナー・ヘルツォーク / トルスティン・グルード
製作: シーネ・ビュレ・ソーレンセン / アンネ・コーンケ / クリスティーヌ・シン / ヨラム・テン・ブリンク / ミヒャエル・ウーヴェメディーモ
監督: ジョシュア・オッペンハイマー / クリスティーヌ・シン
撮影: カルロス・アランゴ・デ・モンティス / ラース・スクリー
音楽: エーリン・オイエン・ヴィステル
出演: アンワル・コンゴ / ヘルマン・コト / アディ・ズルカドリ / イブラヒム・シニク
 
【世間の評価】 ※2016.9.20時点
CinemaScape: 3.5/5.0 (21人)  
Yahoo! 映画: 3.56/5.00 (177人)
IMDb: 8.2/10.0 (24,375人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.7/10.0 (137人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.1/5.0 (14,410人)
 
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